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おすすめの本
 

No.636 平成30年9月

『ハレルヤ』『愛すること、理解すること、愛されること』

保坂 和志/著  新潮社

 著者は、妻の母親にお墓参りに行った際、片目を失くした小さな猫に出会います。それまでにも猫を飼った経験がある夫婦は猫を連れて帰り、“花ちゃん”と名付け、育てていくことを決めるのです。片方の目がなくても、そのことを感じさせないくらい元気に過ごす花ちゃん。しかし、17歳1ヶ月の時にリンパ腫が見つかり、治療の途中で目はほとんど見えなくなってしまいます。その後も花ちゃんの病と闘う生活は続きますが・・・。
 愛猫達との出会いと別れを繰り返して、夫婦は目の前の“命”とどう向き合っていくのでしょうか。 
 猫好きで知られる著者の、実話に基づき書かれた『ハレルヤ』を含む、全4話の短編集です。

(Y.U)



李 龍徳/著  河出書房新社

 謎の死を遂げた大学の後輩の妹に招待された、男女四人。姉の日記に記された四人に会ってみたかったという妹の真の目的とは・・・。
 愛と憎しみの感情が入り乱れ、不安定なバランスを保ちながら、お互いの人生が交差していく姿や、多くを説明せず淡々と進む会話は、いつしか読者自身を取り込んでいきます。時に空白や暗転を繰り返しながら、過去・現在、そして未来へと進んでいく五人の会話劇のような物語です。
 愛や理解を求め続け、得ては失い続ける。愛すること、愛されることとは何か。それは人それぞれ違います。そんな不確かさの中で生きていく彼らの結末は・・・。

(M.T)




『ストロング・スタイル』
『世界から消えた50の国 1840-1975年』

行成 薫/著  文藝春秋

 小学生の時、いじめを受けていた親友に大けがをさせてしまった大河。どんなことにも流されない強い男を目指して、プロレスラーになることを決意し、恵まれた才能とルックスで一躍人気レスラーに。チャンピオンをめざしてひた走ります。
 一方、けがをした親友は先生ヲめざし、いじめ撲滅を訴えるインディーズ団体へ入門。しかし、ある事先生になる夢を断念、入門していた団体も消滅することに。
 日の当たる道を歩く大河と、居場所を無くし続ける親友。交わることは無いと思われた二人の道が、大河を憎む男の手により再び交錯する。

(Y.E)



ビョルン・ベルゲ/著 角 敦子/訳  原書房

 日本は古くから続く歴史ある国です。しかし、その一方で数年から十数年といった短い期間しか存在しなかった国があることを皆さんはご存知ですか?これからの輝かしい未来を期待して建国されたものの、様々な事情で消えてしまった50の国を、地図とともに紹介します。
 植民地支配や各国で戦争の足音が近づいていた1840年頃~。その他にも移住で多様な時代背景がありました。時代に翻弄されながらも、歴史の片隅に実在した国の知られざる運命を記します。

(A.K)



『行ったり来たり寝ころんだり』『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる』
 あおき ひろえ/絵と文  新日本出版社
 

 絵本作家でありながら、引っ越す前の自宅「ツギハギ荘」の席亭として寄席を経営、主催している著者。絵本作家の夫と三人の息子に恵まれた日々の生活の中で見たものや感じたことが正直に綴られています。
 追っかけをしているミュージシャンのライブチケット発売日に必死に電話したこと、19年間続く息子のお弁当づくりのこと、そして絵本にもなった「夏平くん」と小学生の頃のエピソードなど。
 クスッと笑ったり、うなずける部分も多く、楽しく読み進められる一冊です。旦那さんのコラムも必見です。
(R.K)
  


幡野 広志/著  PHP研究所

 35歳の写真家、幡野広志さん。34歳の時に多発性骨髄腫というガンになり、余命3年の診断を受けます。末期ガンと向き合いながら、残される2歳の息子のために考えたのは「残したいのはお金じゃない。残したいのは言葉だ」ということ。
 35年生きてきた中で伝えたいこと、ガンになってから気付いたこと。そして、孤独と友達、夢や仕事、お金のことなど、様々な物事に真摯に向き合い言葉を綴っています。 
 子どもの頃、周囲にいて欲しかった大人になりたい。そう願い生きる幡野さんの言葉は、どんな人の胸にもしっかりと根を張るはずです。
            

(Y.M)