令和6年度5月号


『キオクがない!』

 いとう みく/著   文研出版

   ―僕は事故にあったらしい―
自転車事故により記憶を失った孝太郎は、自分のことも、家族も友達も思い出すことができません。以前の自分はどんな性格だったのか、接する人たちの反応が気になります。隣に住んでいるカンナは「人間に初期化なんて都合のいい機能はついていない」と言います。それは孝太郎の「消したい」何かを知っているということです。事故の時にブレーキの跡がなかった事実を知った孝太郎。バスケ部のメンバーの動き。「死のうと思っていた?」ますます謎は深まります。最後まで目が離せない一冊です。



 




『その門はひらかれた 法然上人ものがたり』

  中川 学/絵 アリス館

 「南無(なむ)阿弥陀仏(あみだぶつ)ととなえれば、だれでも極楽浄土へいける」という文言を歴史の授業で聞いたことがありませんか?そうです、浄土宗を開宗した法然上人の言葉です。武士の家に長男として生まれ、とても賢かったそうです。しかし両親は性格のやさしい息子の将来を思い、僧侶として勉学の道に進むべきだと、お寺へあずけます。彼の賢さに「智慧第一の法然」と呼ばれますが、自分の学ぶ教えに対して疑問を待ちはじめます。生きる者すべてを苦しみから救い出す、心に光をさす教えを知りたい。長い歳月をかけて悩み考え、導き出した答えとは…?





『死ぬのは、こわい?』

 徳永進/著   谷川俊太郎/詩   新曜社 

 人生最期の時をおだやかに過ごすためのケアをする医療施設を、ホスピスと言います。鳥取県にあるホスピス「野の花診療所」を開設した医師、徳永進さんによる「人間の死」について語るお話です。医師の「ぼく」が中学二年生の夢二をつれて患者さん達をめぐり、それぞれの死に立ち止まって老い・病気・人間・いのちについて考えます。
今は実感がなくても年齢を重ねていくと、思わぬ「死」に直面することや、自分の身内の「死」を現実的に受け止めていくことが増えてきます。ホスピスで過ごす人たちの最期を読み、死について考えてみませんか?






『特殊効果技術者になるには』

  小杉眞紀・山田 幸彦/著 ぺりかん社

   映画やドラマなどで、現実ではありえない世界や生き物などを見ると、ドキドキ、ワクワクします。その世界や物はプロたちの手にかかった高度な技術が作りだしたものです。ウルトラマンの戦闘シーンで爆破される足元の街、ゾンビ映画のメイクやパニック映画のCG等々。観客がその世界をリアルに感じれば、技術者にとっての成功になります。本書では特殊効果の世界や、かかわる人たちの生活、適性などが取り上げられています。
職業紹介ガイドブック「なるにはBooks」では、他にもたくさんの職種が図書館にそろっています。今ある職業から将来活躍しそうな職業まで、ぜひ一度見に来てください。






『原発事故、ひとりひとりの記憶』

 吉田 千亜/著  岩波ジュニア新書

  2011年3月11日、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故で、未だに避難指示が継続している地域があります。原発の20㎞圏内で畜産業を営んでいた人が、大切に育てた動物たちの殺処分を迫られたり、避難先で差別され、いじめに苦しんだ子供が七夕に「天国へ行きたい」と願いを書いたりと、原発事故は福島県に住む人たちの日常を奪いました。決して風化させてはいけません。原発事故による避難訓練をしている私たちも、決して他人ごとではすませず、実際に被災し、被害にあった人たちの声を、ぜひ聞いてください。