令和5年度8月号


『きみの話を聞かせてくれよ』

 村上 雅郁/著 フレーベル館
 
    何がきっかけであの子と話せなくなったのか?
様々な悩みを抱えた中学生のリアルな7つのお話です。登場人物は違いますが、少しずつつながっていて、1話読み終えると伏線を回収したくて読み進めたくなります。何事も、言葉にして気持ちを伝えなければいけない。もちろんそれも大事ですが、伝える勇気を持つための後押しやきっかけが必要です。この本では、その踏みだすきっかけになる人物「話を聞いてくれる人」にスポットが当てられています。自分の気持ちに寄り添ってくれる人や反応する人の存在は大きいと改めて感じる一冊です。


 




『だれもみえない教室で』

   工藤 純子/著  講談社

 それはある小学校の6年生の教室で起こります。清也のそっけない態度にイライラした颯斗は、仲間のいる前で彼のランドセルに金魚のえさを入れ、それをきっかけに保護者まで巻き込む大きな事件となります。いじめの被害者・加害者・傍観者・担任のそれぞれの視点で丁寧に描かれ、胸がつまりそうな場面があります。握手して仲直りをさせたり、「ごめんね」と謝罪させたりして関係を修復させる大人。でも心の中での葛藤は本人にしかわかりません。ただ、「いじめ」は憎むべきもので、絶対に「悪」です。当事者たちの気持ちを様々な角度から読み取ってみませんか?





『生きものは 不思議 ~最前線に立つ研究者15人の白熱!講義』

  河出書房新社/編  河出書房新社

 アオリイカにも性格があり、特定の個体同士が仲良しという友達関係がある!
 この本では生物研究の第一線に立つ15人の研究者たちが、その仕事に就くまでの道のりや、研究の仕方、その研究のどこがおもしろいかを徹底解説しています。わかっていないことのほうが多いと言われている生物研究。私たちが一生のうちに考えることもない生物に人生をささげている研究者もいるはずです。そんな彼らの研究をぜひのぞいてみてください。




『木霊 北海道・栗山町の泣く木のはなし』

   永井 利幸/著 みらいパブリッシング
 

  「木霊」は樹齢100年を超えて、長い年月を生きた木に宿る魂のことをいいます。木は生き物の出すものをきれいに浄化するだけでなく、悲しさ、切なさ、恨みのような情念さえも取り込み浄化してくれる、神秘的なもの。表面から見えない洞には木霊が取り込んだそういったものが封印されているので、むやみに切るといけないと先人たちは言いました。北海道の栗山町にあったハルニレの木は蝦夷地と言われていたころから、悲恋、恨み、無念…、開拓地の悲しい歴史を見てきました。






『鬼と日本人の歴史』

 小山 聡子/著  筑摩書房
 
   昔話によく出てきた鬼とは恐怖の対象でした。最近では兄が妹のために奮闘する、あのアニメで鬼が大変なブームになりましたね。この本によると鬼の起源は「死者の霊」とされていたということなので、思わず「やっぱりか!」と納得してしまいました。
鬼を見た人は恐らくほとんどいないでしょう。しかし、中国で一番古いとされる文字の甲骨文字に、鬼に近い文字が書かれているそうです。中国文明の時代から鬼は存在していたということになります。その後日本に伝わりますが、時代とともに進化して…?