令和5年度10月号


『スクランブル交差点』

 佐藤まどか/著  小学館
 
  主人公の強は中学時代のあるトラウマから、何事にも熱くならず、ほどほどに生きてきました。そんな時、イタリアからの留学生マルコがやってきます。強は明るく前向きな彼とは関わりたくないと思っていました。担任に彼のお世話をするようにと頼まれますが、クラスメイトがマルコに嫌がらせをしても、見て見ぬふり。でも心の中はモヤモヤで。
この本のお話は2部構成になっており、後半は家庭の事情で進路を決められない葛藤も交え、強の心が少しずつ変化していきます。読んだ後に、ちょっとさわやかな気持ちになります。



 




『雨にシュクラン』

   こまつあやこ/著  講談社

 影山高校の書道部に入部するために、たくさん努力をして、念願かなって入学できた真歩。
しかし、父の心の病によって家の引っ越しが決まります。往復5時間の通学に限界を感じ、彼女の学校生活は1学期で終了しました。新しい環境で、高卒認定試験を目指しながら図書館の宅配ボランティアを始めます。高校に行かない自分の立場に、周りの反応が気になり、不安な彼女ですが。ある日ふと目についたアラビア書道に興味をもち、そのことがきっかけで様々な人との交流が生まれます。新しい仲間の存在に彼女はどう変わっていけるのか?




『教室を生きのびる政治学』

  岡田憲治/著  晶文社

 教室にいる自分に大事なことは、半径5メートルにおける安全保障、それは日常の生活空間の話です。少しでも心穏やかに、安心して過ごしたいあなた。なんとか教室を生きのび、学校生活をサバイブするために役立つ政治学を学んでみませんか?「友達100人」が必要なわけではなく、仲間を作ることが大事。話し合いが失敗するのはなぜか。そして不平等がいかに自尊心を奪うか、を著者の岡田さんは伝えます。ではそういった空間では何が必要なのでしょうか?それを知るためにぜひ読んでほしい一冊です。






『自分疲れ  ココロとからだのあいだ』

  頭木弘樹/著  創元社

 自分でいることに疲れたことはありますか?ちょっと質問が難しいでしょうか。では「こんな自分は嫌だ」「自分の体が嫌い」と思ったことはありますか?人は心と体を別々に考えてしまいます。でも心がつらい時はご飯を受け付けないし、体がだるい時は気分も落ち込みます。どちらが「自分」なのか?この本は「心」と「体」の関係性についてのヒントを文学・マンガ・映画の一文やワンシーンを踏まえて分かりやすく解説しています。ここで紹介された本も読むと、さらに発見があるかもしれません。





『都市のくらしと 野生動物の未来』

 高槻成紀/著   岩波ジュニア新書 

   昔話と聞いて、思い出す動物の悪者はなんでしょうか?日本ではタヌキ?ウサギ?外国ではオオカミ?お話に出てくる悪者の動物は田畑を荒らしたり、人間に害を与えたりすることからその対象になっているようです。カラスは害獣として認定され、その駆除に莫大なお金をかけています。でもカラスについてみなさんはどこまで知っていますか?知ると興味深く、とても賢いことがわかります。イメージで判断すると、ますますその動物たちを知る機会はなくなります。同じ地球上にいる者同士が生きていくためには、正しく理解することが必要です。