令和5年度9月号


『金曜日のあたしたち』

 濱野京子/著 静山社
 
    臥薪嘗胆(がしんしょうたん)、捲土重来(けんどちょうらい)。三年間、自分はどんなふうにすごしたらいいのだろう。
第一志望だった櫻木学園を不合格になり、第二志望の学校に通うことになった陽葵。ある日駅で環境問題をうったえるメッセージを掲げた高校生達に出会います。それは櫻木学園の制服を着た環境問題研究会の生徒たちでした。世界の環境への取り組み、格差問題、あまりにも無知だった陽葵は彼らと話すたびにくやしさがこみ上げます。優しくない、えらそうだけど、はっきりと発言できる彼らの考え方に胸を打ち、その活動に興味を持ち始めます。



 




『虹色のパズル』

   天川栄人/著 文研出版

 私のおじさんは「ふつう」じゃない。だけどその姿は、ステージの上で確かに輝いていた。
自分を押し殺し、偽りながら「ふつう」を演じる中学二年生の琴子。人づきあいが苦手で、「みんなと一緒」が上手くできず苦痛に感じていました。「おかしな子」「困った子」にならないよう取り繕う彼女は、夏休みの間だけ叔父の圭一郎と同居することになります。そしてある日、叔父の仕事場であるバーへ連れて行かれ、「ドラァグクイーン」としてパフォーマンスする彼に衝撃を受けます。性的マイノリティーを明かす叔父を見て、自分らしさを押し込めることに疑問を感じた琴子は…






『きょうは そういう感じじゃない』

  宮沢章夫/編  河出書房新社

 「きょうはそういう感じじゃない。」その「感じ」とは?ならば「きのう」だったらそういう感じだったのでしょうか?ストレートに言えば「やりたくない」です。そんな遠回しの言い訳は、日本人独特の回りくどさがからんでいるのかもしれません。他にも、「デアゴスティーニ的なものを完成させた人はいるのか?」などなど。2022年にこの世を去った劇作家・演出家・小説家として活躍された宮沢章夫さんの、ふと気になったものに対して考察したゆるーく笑えるエッセイが詰まっています。





『木が泣いている』

   長濱和代/著 岩波書店

 日本は世界有数の森林国です。しかしその豊かな森は林業の衰えとともに放置され、森は荒廃し、利用されない林地が増えてきました。あなたは花粉症ですか?スギ・ヒノキは日本の中でも多く人工林としてたくさん植えられました。しかしプラスチックなどの需要が増え、必要とされていた木は利用者の減少により放置。そしてたくさんの花粉を飛散します。では森と人との、より良い関係をつくるために私たちがすべきことは?伊万里実業高校は佐賀県で唯一、林業科があります。今後の進路で興味がある人はぜひ読んでほしい一冊です。





『死にたい と言われたら』

 末木新/著  筑摩書房

   日本では年間2万人の方が自殺で亡くなっています。そして「死にたい」と思ったことがある人は人口の2~3割だそうです。長く生きれば生きるほど、思う回数は増えていくかもしれません。でも、決して不安な気持ちは持ってはいけないのではなく、それも大事な機能を持っています。
 ではあなたが誰かに「死にたい」と相談されたら?一人で対応するにはリスクがあること。そういった場面でやってはいけないこと。自殺を予防する未来の作り方など、心理学をもとにわかりやすく解説されています。