令和6年度6月号


『星に願いを』

 鈴木 るりか/著   小学館

  母と2人暮らしの花実。母がひったくりの被害に遭い、なくなった財布や入院の費用など、生活はますます苦しくなります。ある日2人のもとに見知らぬ女性が訪ねて来ます。花実の祖母であるタツヨが亡くなったことを告げられ、日記帳を渡されました。ためらいながらもそれに目を通すと、祖母の壮絶で過酷な人生や、その中の愛情と憎悪が見え、彼女が後悔と自責の念で最期を迎えたことを知ります。人がわかり合える難しさを感じる一冊です。「さよなら田中さん」のシリーズですが、前回の作品を読んでいなくても読めます。



 




『真夜中の4分後』

  コニー・パルムクイスト/作  堀川 志野舞/訳  静山社

 いつか誰にでも起こりうる、
人生最悪の日のために―
主人公のニコラスは12歳。今まさに母親の命がなくなろうとしている時、思わず病室を飛び出してしまいます。エレベーターを降りると、なぜか駅にたどり着き、急かされるように列車に飛び乗れば3年前の自分の誕生日にタイムスリップしていました。思い出すのは、その日に母とケンカをしたこと。ニコラスは何度も列車に乗り、母親の死を止めようと試みますが、現在に戻っても、たどり着くのは病院でした。最愛の人の死にあらがった彼が最後に導き出した答えとは・・・。




『生きのびるための犯罪(みち)』

 上岡 陽江・ダルク女性ハウス/著  新曜社 

 薬物依存症やアルコール依存症などの女性たちの回復や、社会的な自立を支援する「ダルク女性ハウス」の施設長である上岡陽江さんが語る、ハウスの仲間たちの話です。彼女たちは自分の素顔を出しません。出し方がわからないのです。その裏には男性からの暴力から逃れてきた人が多いそうです。努力することに絶望した先に、手を出してしまった犯罪。「生きのびるためには薬物やアルコールが必要だった。そうやって生きるしかなかった」と語る人もいます。私たちが知らない世界かもしれません。しかしそれも現実の中の一つです。







『「好き!」の先にある未来 わたしたちの理系進路選択』

 加藤美砂子/編著  岩波書店

  理系と聞くと、昔は男子のイメージがありましたが、高校受験や大学受験で「理系進路選択」をする女子の数が年々増えているようです。この本によると、実は様々な角度から見ればたくさんの職業が理系とつながっていることがわかります。化学や生物学はもちろん、栄養学から生活工学まで「好き!」から模索して職業にした、理系女子の方々の経験や考え方のヒントが満載の一冊です。進路に悩んだ人、理系が苦手と思ってしまっている人、まずこの本を読んでから将来を考えてみませんか?






『人間関係ってどういう関係?』

平尾 昌宏/著  ちくまプリマー新書

  身近な関係とは?考える人によってとらえ方は様々です。親、恋人、友達など、「身近」である人と問われてどこまでを想像するのか。ではクラスメイトは?会話をしただけでも「友達」と感じている人もいれば、相手はそうでないかもしれません。あなたの「こうあるべき」は違うととらえる人もいるはずです。この本に沿って、上下関係と同等の関係、結びつきの共同性と補い合う相補性という4つのパターンに自分の身近な人を置いて考えてみると、改めてその人について分析することができ、何かが見えてくるかもしれません。