☆第2部 各論
□第1章 家庭、地域、学校を通じた子どもの読書活動の推進
1 家庭における活動の推進
①現状および課題
○テレビ、ビデオ、携帯電話やパソコン等の普及や生活環境の変化、さらには、乳幼児期からの読書習慣が形成されていないこと等により、子どもの読書離れが懸念されています。
○子どもが読書習慣を身につけるためには、大人が子どもの読書活動の意義や重要性について理解して、率先して読書に親しみ、家族ぐるみで読書する環境をつくることが必要です。
②施策の方向性
●家庭における読書の習慣付けを図るため、支援活動を充実します。
●親(保護者)をはじめ、子どもに関わる大人が、子どもの読書活動を理解し、関心を深めることができるよう働きかけを推進します。
③具体的な取組み
◆家庭教育講座や子育て支援事業の活用による普及活動
・家庭における読み聞かせなど読書の重要性の理解促進
・「家族読書の時間」(テレビを見ない時間)の設定や「家庭の日」におけるファミリー読書活動等、家族ぐるみでの読書活動の働きかけ
・親子読書運動の展開
・ブックスタートの取り組み
・親を対象としたPTA・育友会における読書に関する啓発事業
2 地域における活動の推進
(1)市民図書館における活動の推進
①現状および課題
○市民図書館は、子どもの読書活動に関する情報の収集・提供や読み聞かせ等のサービスを行っています。
○市民図書館は、子どもが読みたい本を自由に選び、読書の楽しみを知ることのできる場所です。このため、求める本、資料、情報が容易に入手できるように、サービスを充実することが求められます。
②施策の方向性
●市民図書館は、子どもが本に興味を持ち、読書への関心を深めるようサービスの一層の充実を図ります。
●市民図書館は各公民館・学校図書館・幼稚園・保育園への支援の充実を図ります。
③具体的な取り組み
◆年齢に応じた子ども向けサービスの充実・強化
・おはなし012(乳幼児向け)、お話し会、オリエンテーションなどの実施
・子どもに奨めたい図書の展示
・ブックリストの作成
◆レファレンス(調査・相談)機能および情報提供機能の充実・強化
・子どもや保護者からの読書相談への対応
・保護者等を対象にした読み聞かせや本の選び方、与え方についての助言
◆児童図書部門の機能強化
・児童サービスに関する情報の収集および県立図書館・他市町村立図書館等との連携
・読書の楽しさや必要性を理解してもらうための講演会や講座の実施
・「学校図書館・児童文学研究コーナー」の運営による、司書教諭、研究者、学生等の調査・研究等の支援
・学校図書館および公民館図書室のサービス向上を図るため、市民図書館の支援研修機能を効果的活用
(2)公民館や児童センター等における活動の推進
①現状および課題
○公民館や児童センター等は、読書活動に関わる職員が少ないなど、子どもが気軽に図書に接する環境が十分でないところがみられます。
○公民館や児童センター等の活動の中で、子どもの読書活動に対する理解を深め、地域ぐるみで子どもの読書活動に取り組むことが求められます。
②施策の方向性
●子どもが読書に親しむ機会を提供し、子どもの読書への興味・関心を深めます。
③具体的な取り組み
◆読書に親しむ多様な活動の展開
・公民館広報紙の活用による読書活動の普及
・社会教育講座(親子読書活動など)の開催
・児童厚生員やボランティアによる読み聞かせ等の実施
・読書感想文・感想画・絵本等の展示会の実施
(3)民間団体等における活動の推進
①現状および課題
○子どもの読書活動に関わるボランティアは、おはなしキャラバン、てんとう虫の家、草ひばり、風21などの朝読みグループや、ブックスタートボランティア等があります。
○ボランティアは幼稚園・保育園・学校・図書館等で読み聞かせや、作品制作を行っています。
○伊万里市連合PTA(市連P)から呼びかけることで、全市域において保護者等による読書活動が緩やかな広がりをみせています。
○子どもと本に関わるボランティアで「おはなしネットワーク」を発足させましたが、まだ十分に機能していない状況です。
○人数の少ないボランティア団体もあり、これからも多くの参加を呼びかける必要があります。
○本の選書が不十分であるし、また選んだ本は市民図書館で借りようとしても、すでに借りられていることもあります。
○より一層の充実を図るため、これらのボランティアに対し、活動内容や運営について協力・支援することが求められます。
②施策の方向性
●読書に親しむ機会を身近なところで提供するボランティア活動を推進します。
③具体的な取り組み
◆活動の充実を図るための支援
・研修会や定期的な講習等の開催
・公民館・留守家庭児童クラブ等で、ボランティアと共に行う活動の取り組み
・読み聞かせボランティア養成講座等にて、新たなボランティアの養成
・幼稚園・保育園・学校・公民館・留守家庭児童クラブ・図書館等における活動の場の提供
・子どもゆめ基金助成金等の活用
◆ボランティアグループ間のネットワークの活用
・情報交流の機会の提供
・相互協力への支援・協力
・研修会、講座等の開催
(4)障害のある子どもの活動の支援
①現状および課題
○視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由等の障害に応じた読書活動支援が求められています。
○市民図書館、公共施設の図書館等における、障害のある子どもに対するサービスの向上が求められています。
②施策の方向性
●子どもの障害の内容や程度に合った読書活動の支援を図ります。
③具体的な取り組み
◆図書館やボランティアによる障害のある子どもに対する読書活動の支援
・図書館職員、朗読ボランティアによる対面朗読と録音図書やリストの作成
・図書館職員、点訳ボランティアによる点訳図書やリストの作成
・視聴覚機器の活用
・読み聞かせボランティアによる学校への出前お話し会
・布の絵本制作ボランティアによるさわる絵本の作成
3 学校における活動の推進
(1)小学校・中学校・高等学校における活動の推進
①現状および課題
○各学校においては、これまで国語科を中心にして、学校図書館を利用した読書活動に取り組んでいました。また、社会科、総合的な学習の時間等の調べ学習の際にも学校図書館を利用した学習活動が展開されています。
○伊万里市では、すべての小・中学校において全校一斉の読書活動が実施されています。また、高等学校においても、学校図書館を利用した読書活動の実施に取り組んでいる学校があります。しかし、一斉読書の実施の在り方については、各学校の実情等により違いがみられます。したがって、一斉読書の時間を各学校の教育計画の中に明確に位置付け、その意義について全職員が、共通理解を図り、計画的に取り組むべき課題であると認識する必要があります。
○小学校・中学校・高等学校の各段階において、児童・生徒の読書に親しむ態度を育成し、読書習慣を確立する必要があります。
②施策の方向性
●児童・生徒が、読書の楽しさを感得できるように、本との出会いや体験が読書が結びつくきっかけづくりをする等の計画的な読書指導を通して、読書習慣の定着を図ります。
●児童・生徒の読書活動への取り組みを充実するため、学校関係者の意識の高揚および指導技術の向上を図ります。
③具体的な取り組み
◆学校図書館の施設と資料の充実
・豊富で多様な図書資料の整備
平成14年度各学校蔵書数対学校図書館図書標準冊数
小学校-78.7% 中学校-59.6%
・児童・生徒が進んで読書を楽しむために、自然に足を運びたくなるような明るく落ち着いた学校図書館環境の構築(心のオアシス)
・市民図書館および、各学校図書館の連携の推進
◆児童・生徒の読書習慣の確立と読書指導の充実
・全校一斉読書活動や読み聞かせ等の読書活動の充実
・読書指導の年間指導計画の作成および教科、領域、総合的な学習の時間等での計画的な取り組みの推進
・NIE(Newspaper In Education)の活用や、図書資料を活用した授業の推進
・新刊情報や授業内容に合わせたブックリストの作成、児童・生徒への紹介
・児童・生徒の自治的な活動(図書委員会や児童会・生徒会活動等)の活性化
◆研修等を通じた学校関係者の意識の高揚および指導技術の向上
・読書指導に関する指導計画、学習材料や指導技術などに関する情報交換・研究協議の場の設定
・教育センター研修やその他の教職員研修の受講の奨励
・図書館教諭、図書館事務補助等関係職員間の研修および情報交換の場の設定
・各学校全職員を対象とした読書活動に係る研修の実施
◆地域および関係機関、読書活動ボランティアとの連携
・学校、市民図書館、読書活動ボランティアとのネットワークの構築
・ボランティアを募り、読み聞かせや図書事務を支援する等、地域人材活用の推進
・家庭や地域から寄贈された本のリサイクル運動の推進
・図書館便りの発行、「親が子に薦めたい本」のコーナーの設置等、読書活動に関する啓発活動の充実
(2)特殊学級・養護学校における活動の推進
①現状および課題
○推薦図書の展示や児童・生徒の興味関心に応じた蔵書の選定等に取り組んでいます。
○市民図書館を利用する等、児童・生徒の実態に応じた読書活動の推進が求められています。
②施策の方向性
●障害の程度や内容に合った読書指導を推進し、読書習慣の確立を図ります。
③具体的な取り組み
◆児童・生徒一人一人の個性に応じた読書指導の実施
・視聴覚機器の活用
・お話しボランティア等地域人材との協力体制の活用
・全校一斉読書活動の実施
・小学部から高等部まで系統性を考慮した読書指導計画の策定と実施
(3)幼稚園や保育園における活動の推進
①現状および課題
<幼稚園>
○平成15年度から「絵本や物語に親しみ、先生や友達と心通わせるようになるためには、どのような教師のかかわりが必要か」というテーマで、本好きの子どもを育てる素地づくりに取り組んでいます。
○1日1回は教員が読み聞かせを行っています。午前の後半は、保育室に入って教員の読み聞かせを楽しみます。また、降園前には、紙芝居や絵本を読み聞かせ、心を落ち着かせ楽しみをもたせて帰すようにしています。
○月2回の自動車図書館「ぶっくん」を子どもたちはとても楽しみにしています。「ぶっくん」から借りた本はすぐ保育室で読んでいます。「おはなしキャラバン」ももちろん楽しみにしています。
○読書の楽しさと出会うためには、幼い頃から本とふれあう習慣づくりが重要であることを踏まえ、読書の大切さや意義を広く保護者に伝えていくことが求められます。
<保育園>
○昨年度より「絵本の読み聞かせ」という研究テーマを設定し、研究実践に取り組んでいます。日々の保育や誕生会等の行事において、楽しく親しみながら身につくように努めています。
○自動車図書館「ぶっくん」は子どもたちにとても人気があって、月2回の来園を楽しみにしており、借りた本はすぐに保育園で読んでいます。また家庭に持ち帰り、家族とのコミュニケーションの発展を図っています。
○「おはなしキャラバン」の活動も大変有難く、楽しみにしております。
○生涯を通じた読書習慣を身につけるためには、0歳児から5歳児までの発達段階に応じての取り組みが特に重要であることから、家庭との連携を深めながら絵本や物語等に親しむための尚一層の工夫が求められます。
②施策の方向性
●幼稚園および保育園において、幼児が絵本等に親しむ活動を積極的に行うよう、教員・保育士一人一人の理解を深めます。
●幼児が絵本や物語等に触れる機会の多様化を図るため、地域での社会人・学生ボランティアの活動を促進します。
③具体的な取り組み
◆絵本や物語の楽しさと出会う多様な機会の提供
・教員・保育士による絵本の読み聞かせや紙芝居等の積極的な実施
・ボランティアの協力
・異年齢交流(児童の保育体験等)の実施
◆教員・保育士の意識の高揚
・幼稚園・保育園の読書活動推進のための合同研修会の実施
(4)障害のある子どもの活動の支援
①現状および課題
○視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由等の障害の状態に対応した、様々な読書活動支援が求められています
○市民図書館における、障害のある子どもに対するサービスの向上が求められています。
②施策の方向性
●子どもの障害に対応したサービスの向上に努めます。
③具体的な取り組み
◆市民図書館やボランティアによる、障害のある子どもに対する読書活動の支援
・図書館職員、読書ボランティアによる対面朗読
・ブックリストの作成
・視聴覚機器の活用
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