コラム

令和6(2024)年 新年のごあいさつ

 新年が明け、元日に発生しました令和6年能登半島地震により、亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。また、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げ、一日も早く平穏な日々に戻る事をご祈念申し上げます。

 旧年中は、伊万里市民図書館をご利用いただき、誠にありがとうございました。
 おかげさまで昨年は、図書館☆(ほし)まつりが、通常どおりの規模と方法で開催されたり、さまざまな市民活動に図書館をご利用いただいたりして、コロナ禍で停滞していたコミュニティづくりを大きく進めることができました。また、長年の懸案だった空調機器の更新工事も完了までの目処が付き、快適な読書環境を提供できるようになりました。
 たとえ、世の中がどんな状況下にあっても、図書館は皆さんの知的自由を確保する生涯学習の拠点であり続けたいと願っています。本を読むことや、学んで行動を起こすことによって、一つひとつの問題を、夢や希望に転換することができると信じて、今年も職員一同、図書館サービスの充実に努めてまいります。

 なお、昨年もたくさんの企業や団体・個人の皆様から、寄附やボランティア活動を行っていただき、心から感謝申し上げます。まさに、市民との協働のもとに成長を続ける図書館であることを、実感する機会が多い一年でもありました。

 どうぞ本年も、伊万里市民図書館をよろしくお願い申し上げます。皆様のご利用を心からお待ち申し上げております。

(館長 鴻上哲也)

ネットと図書館

 「インターネットがあれば図書館はいらない」という人がいますが、本当にそうでしょうか?
 確かにネットだと、自分が必要とする最新の情報を瞬時に手に入れることができますし、その後もお気に入りの情報が優先的に表示されるので便利です。このスピード感と双方向性はネットの長所ですが、一方で情報の不正確さや、検索履歴から利用者の好みが流出するという短所もあります。
 そして、これらを裏返したものが図書館の特性ともいえます。つまり、本は出版までに時間がかかりますし、読み手に合わせて表現を変えることもできませんが、責任の所在が明らかで信頼性も高く、未知の分野に触れる機会にも富んでいます。
 このように、図書館とネットにはそれぞれ得意・不得意があります。私たちは、互いにその足りない部分を補う形で使いこなしていくことが大切だと思います。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和5年12月8日付「いすの木のもとで」より>

AIの活用

 人工知能(AI)やチャットGPTなど最新のデジタル技術と、紙媒体の本を扱う図書館は対極にあると思われがちです。しかし、どちらも自分に必要な情報を取り入れて、よりよい生活に役立てるという点では同じです。
 実際、公共図書館でも最近は、スマホで読むことができる電子書籍、農業やビジネスなどに必要な専門情報を検索できるデータベースを備えた館が増えています。また、生成AIについては、私たちが道具として適正に使いこなす能力(リテラシー)を身に付けることが大事です。
 当館では先日、市民団体の主催で、AIを使って親子で絵本を作るワークショップが行われました。参加者は、テーマや登場人物、読者ターゲットを考えて、どのように指示すればAIに意図が伝わるか苦心しながら、人工知能との共同作業を楽しんでいました。終了後、主催団体代表の「これからは答える力より、問う力が大事」との言葉が印象に残ります。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和5年11月10日付「いすの木のもとで」より>

読書週間

 読み聞かせ・実演や図書館友の会、図書の音訳、布絵本制作など、読書や読書の普及に関する活動を行う団体(読書グループ)は全国に約1万2300あるそうです。伊万里市でも、当館や学校・園・施設などで、さまざまな読書に係るボランティア活動が行われています。
 読書環境が大きく変わってきている現代ですが、対面での読み聞かせや読書会の魅力、図書館や書店で手に取って本を選ぶ楽しさが見直されているのは、読書グループの皆さんのおかげとも言えるでしょう。
 なお、27日から11月9日までの2週間、「第77回読書週間」が行われます。その中のテーマの一つが「読書グループの結成促進」です。新規に結成していただくのも大歓迎ですが、多くの読書グループが新しい仲間を募集しておられます。少しでも関心のある方は、最寄りの図書館までお問合せください。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和5年10月13日付「いすの木のもとで」より>

ブックトーク

 ブックトークをご存じですか?読み聞かせとは違って、本の一部を見せたり読み上げたりして、その魅力を紹介するものです。
 学校などでも行われますが、伊万里市民図書館では大人対象の講演会などの後に、司書がテーマに関連した4~5冊の本を選び、自分の体験も交えながら10分程度でテンポよく紹介します。
 「今まで読まなかったジャンルの本に出合える」と好評で、受講者の中にはこれが楽しみで参加しているという方もいらっしゃるほどです。司書にとっては、うまくいけば紹介した本全てを借りてもらえる達成感を味わえますが、その逆もありうる「勝負」の場でもあります。
 聞き手の読書意欲を喚起することができるブックトークは、本に精通している司書の腕の見せどころです。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和5年9月15日付「いすの木のもとで」より>