先日、ある会社員の方から「図書館は利益って出るんですか?」と尋ねられました。ちょっと考えて、こう答えました。例えば、図書館が本を100冊購入したとします。それを10人の市民が借りて読んだとしたら、100冊分の予算で千冊分の読書を提供したことになります。ですから、図書館は、本を借りれば借りるほど読書のパフォーマンスが上がるのです。
企業のように金銭的な利益は生みません。しかし、限られた予算で市民の学びや楽しみを何倍にも広げることができます。子どもが初めて読む物語、大人が再び手にする古典、人生を変える一冊との出合い…そうした価値は、数字には表せません。
図書館は「利益」ではなく、「豊かさ」を生み出す場所です。本を開くたびに広がる知識や感動こそ、私たち図書館員が市民に還元し続けたい、本当の意味での「利益」なのだと思います。
(統括管理者 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和7年8月29日付「いすの木のもとで」より>