新年あけましておめでとうございます。
旧年中は、伊万里市民図書館をご利用いただき、誠にありがとうございました。
昨年は、SAGA2024国スポ・全障スポが開催され、伊万里をはじめ各地でスポーツの感動を味わうことができました。そして感動といえば、本や芸術作品によるそれも、私たちの生活と切り離せません。
本の質感を指でたどり、ページをめくるたびに紙やインクの匂いを感じながら読み進める豊かな時間。館内には、お気に入りの席で、自分の世界に没入できる特別な空気が、淡いBGMとともに流れています。あらためて、本がある幸せを感じています。
昨年もたくさんの企業や団体・個人の皆様から、寄付やボランティア活動を行っていただき、心から感謝申し上げます。市民との協働のもとに成長を続ける図書館であることを、実感することの多い一年でもありました。
どうぞ本年も、伊万里市民図書館をよろしくお願い申し上げます。皆様のご利用を心からお待ち申し上げております。
(館長 鴻上哲也)
作家の柳田邦男さんが講演の中で、「絵本には、人生に3度読むといい時期がある」と話されました。1度目は幼い時、2度目は子育ての時、そして3度目は年老いて孤独や病にさいなまれた時だそうです。
絵本は、効果的な絵と短い文章で構成されているので、集中力が低下しがちな高齢者でも無理なく楽しむことができます。しかも、その内容は柳田さんが「絵本は、作家が人生で一番大事なことを書いている」と言うように、心に響くものがあります。
市内でも最近は、高齢者福祉施設やサロンなどで絵本や紙芝居の読み聞かせを行う所が増えました。私も時々読みに伺いますが、子ども以上に積極的に反応しながら聴いてくださる印象があります。多幸感を味わい、他者と交流する機会を提供できる絵本や紙芝居は、高齢者にとって人生をより豊かに生きるためのツールと言えるでしょう。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年12月13日付「いすの木のもとで」より>
「うちどく」という言葉を聞いたことはありますか?家族で1冊の本を読み合い、感想を交流することで親子の絆を強めようとする取り組みです。伊万里市では2007年から、各学校で家庭と連携しながら行われています。
地域によっては、読み聞かせグループなどのボランティアが加わって、活動の場が広がってきている所もあります。そこで、本年度からは、地域ぐるみで子どもの読書を推進する「まちどく」という視点も加えることにしました。
12月7日には、市内の黒川コミュニティセンターで「第1回 佐賀うちどくまちどく講演会」が開催されます。読書離れが叫ばれる中、身近な所で、いつでもだれでも本に触れることができ、子どもの読書を家庭・学校・地域ぐるみで応援する「まちどく」に期待が高まります。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年11月15日付「いすの木のもとで」より>
公共図書館は、自治体の予算で運営されるので、貸し出しはその地域に在住・在勤の方に限るなど、納税者である住民へのサービスが優先されます。ということは、その地域に住んでいなくても相応の税負担や寄付をすれば、住民並みの図書館サービスを受けられるという理屈にもなります。
実際、伊万里市では「ふるさと納税」で7000円以上寄付をした方は、返礼品とは別に図書館の利用者登録ができ、市外の方であっても1年間は市民と同様に本を借りることができます(金額によって有効期間は異なります)。
地域に関わってくれる交流人口と読書人口が増えることは、人口減少に悩む地方自治体にとって極めてありがたいことです。自分の読書環境を充実しながら、地域貢献もできる「ふるさと納税」による利用者登録制度。ご登録、お待ちしております。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年10月18日付「いすの木のもとで」より>
「人間は考える葦(あし)である」とは、パスカルの有名な言葉ですが、インターネットの普及以来私たちは、ちょっとわからないことがあってもすぐに答えを見つけられるようになりました。
しかし、検索で得た正解は、自分で考えて出したものではありません。考えるために欠かせない条件は、だれかが書いたものを読んだり、だれかと議論したり、まとめて書いたりすることです。
実際、図書館では、読書会やワークショップ・懇談会・グループ学習会など、さまざまな人々が話し合いながら、思索を深める活動が多く行われています。先日も、環境問題と図書館の関係について市民と行政が議論する機会がありました。
図書館の存在意義は本を読むだけでなく、このような場を通じて、自由と民主主義が担保されることにあるのではないでしょうか。「考える市民になるためにこそ、公共図書館は存在する」(前川恒夫著『図書館の発見』より) (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年9月20日付「いすの木のもとで」より>
司書なら知らないと「モグリ」と言われる、インドの図書館学者S・R・ランガナータンの「図書館学の五法則」の中に、第五法則「図書館は成長する有機体である」があります。図書館を単なる建物でなく生き物として捉え、常に変化や内的な成長がなければ死んでしまうと警告したものです。また、有田焼の人間国宝十四代今泉今右衛門氏は、当館での講演の際に「伝統は革新の連続だ」と話されました。どちらも、松尾芭蕉の「不易流行」に通じる考えです。
本来、芭蕉の俳諧理念としての不易と流行は、新しいことを求めて変化することが俳諧の本質であるとしたもので、どちらか一方を重視するものではありませんでした。しかし現代では「理念は不易で、技術は流行」のように、変えるべきものと変えてはならないものを区別する時に誤用されることが多いようです。両者を対極的に捉えるのではなく、その根本は一つだと理解して使いたい言葉です。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年8月23日付「いすの木のもとで」より>
図書館フレンズいまりが主催した「俳句まつり」で、ある高齢の女性が入賞されました。
伊万里市民図書館の誕生日を祝う7月7日の「図書館☆まつり」で行われた表彰式に、その方が和服姿で出席しているのに感激した主催団体のスタッフの一人が、次のような歌を作ってその場でお渡ししたそうです。「着物きて表彰式におでましの九十二歳の俳句のまつり」
後日、女性の知り合いの方から、受賞したこともさることながら、「おでまし」と表現してもらえたことをとても喜んでいたと、うれしいご報告を頂きました。
イベントを開催すると、集客の結果にばかり目が向きがちですが、参加者数の多寡に一喜一憂するばかりでなく、このような心の触れ合いが生まれることにこそ、大きな魅力や意味があることを忘れてはならないと思います。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年7月26日付「いすの木のもとで」より>
最近、全国的に新しい図書館が増えていますが、「にぎわい創出」や「地域振興」への意識の高い所は、おしゃれなデザインやサービスで人気を博しています。去る3月31日、当館を視察された盛山正仁文部科学大臣が、利用者数の減少について質問されました。その際、深浦弘信市長は「図書館は利用者数だけが尺度ではありません」と答え、資料の魅力や市民の学習活動の様子を紹介しました。
伊万里市民図書館は、条例の中でその設置目的を「生涯学習の拠点」と定めています。つまり、図書館を通じて利用者の満足度を高める要素はさまざまにありますが、伊万里市では図書館を教育や学習のための施設と明確に位置付け、その充実を図っていることを説明したのです。
百花繚乱の図書館界の中で、当館はデジタル化や脱炭素化などといった新しい世の中の動きにも対応しながら、公設直営のブレない姿勢を貫いています。来月6、7日には開館29年目を市民とともに祝います。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年6月28日付「いすの木のもとで」より>
ある小学校の先生が、受け持ちの6年生の子どもから「図書館に行く時間がありません!」と「怒られた」そうです。教師の忙しさはよく話題になりますが、同じくらいに子どもたちも多忙な時間を学校で過ごしています。
休み時間はトイレや給水、次の準備をしているとあっという間に過ぎますし、楽しいはずの昼休みは、運動会や修学旅行などの学校行事の準備や練習が入ることが多く、特に高学年は自由な時間が取れません。教科の授業時間を確保するため、昔は週に1回あった図書の時間が多くの学校で消えました。
この子どもは図書館に行きたいのに、その時間が取れないことへの正当な抗議を行ったのです。これに対して担任の先生は、週に1回、朝のホームルームの時間に、クラス全員で学校図書館に行くことを決めてくれました。おかげで、そのクラスの子どもは、本を借りに行く時間が確保され、読書量も増えているそうです。
ステキな判断をされた先生と、本を読みたい子どものピュアな行動に拍手を送ります。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年5月31日付「いすの木のもとで」より>
「目が滑る」という言葉をご存じですか?集中力を欠いた状態で本を読んでいると、同じ行を何度も読んでみたり、逆に飛ばしたりすることがあります。そのように、内容が頭に入ってこない状態を表す新しい言葉で、時折ネットなどで目にしますが、まだ当館の国語辞典には採集されていませんでした。
ところで図書館の業界では、書架に置かれた本の並びを見て、読みたい本が目に入ってこないことを「目が滑る」ということがあります。つまり、読みたくなるような本が書架にない、または読みたいと思わせる並べ方をしていない時に使われます。
図書館は、通りすがりの方が思わず読みたくなるような本を選んで購入します。さらには、来館者が食指を伸ばすような本を効果的に並べる技術も駆使しています。ですから、「目が滑らない」ような書架の収集と展示ができているか、ぜひ近くの図書館に確かめに来てください。
万が一、読みたい本が見つからなかった場合は「目が滑って選べなかったよ」と一言残していかれると、司書のプロ根性に火が付くはずです。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年5月3日付「いすの木のもとで」より>
図書館には、多くの個人や企業・団体から寄付が寄せられます。毎年、新しい絵本をセットで寄贈してくださる団体もあれば、企業の社会貢献や故人の香典返しなど、その形態や規模はさまざまです。図書館には貴重な資料が豊富にあるので、そこに寄付することは文化の普及と地域の振興に直接貢献できると考えられるからでしょう。
また最近では、特定のプロジェクトに参画する意義を強調したクラウドファンディングも盛んに行われています。災害支援や人道支援の寄付が広がり、かつてのように寄付は意識の高い人が行うものという偏見はなくなりました。自分にできる範囲での寄付行為や社会貢献が、地域社会に広まりつつあります。
このような「寄付文化」は、地域全体で社会的課題の解決を支える重要な要素となります。ひるがえって図書館側としては、「寄付をしたい」「協力したい」と思ってもらえるよう成長することが大切なのは言うまでもありません。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年4月5日付「いすの木のもとで」より>
読書をしていると、美しい言葉や感動的なセリフ、言葉のリズムなどに引かれて、思わず声に出して読みたくなることはありませんか?だれにも邪魔されず一人、本の世界に入り込める至福のひとときです。
伊万里市民図書館で行われている人気の事業に「いきいき音読教室」があります。毎月20人ほどの参加者が、文学作品の名文や有名な詩歌などを、朗々と読み上げておられます。また、職員が講師となって市内の団体や施設を訪問して行う出張音読教室も好評です。マスク生活が長引き、大きな声を出す機会が少なくなったことへの反動かもしれません。
音読には(1)脳の活性化と認知機能の改善(2)ストレスや不安の軽減(3)コミュニケーション能力の向上-などの効果が期待されると言われます。個人の成長だけでなく、社会参加にもつながる学びのスタイルです。音読を日常生活に取り入れることで、健康で充実した人生を送りませんか。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年3月8日付「いすの木のもとで」より>
どの図書館にも歴史があります。伊万里では、昭和天皇の即位御大典の記念事業として、昭和3(1928)年に「町立伊万里図書館」が開館しました。
蔵書数はわずか159冊で、借りるには1冊5銭の料金がかかりました。館内には次のような標語が掲示されて読書意欲を鼓舞していたそうです。「真の文化は図書館を背景とす」「一日読まざれば一日遅る」「無知は読まざる報いなり」など、高圧的ですが説得力のある言葉ですね。
また「登館者の心得」には、入退出時は脱帽・敬礼。室内では静粛に。不規律・喧噪(けんそう)は互いに戒め合う。などのルールが10項目挙げられていました。図書館で本を読むということが、余暇の善用だけでなく徳育の面を重視していた時代性が伺えて興味深いです。資料については、年々充実に努め10年後には3000冊に達し、現在は42万点を超えています。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年2月9日付「いすの木のもとで」より>
本が返却されると図書館員は、まずページをパラパラとめくってチェックします。個人のしおりやカードが挟まっていたり、時にはピーナツの皮がペチャンコになっていたりするからです。下線や落書きもあるので、消しゴムは必需品です。
そんな図書館員からお願いです。誤ってページが破れたり、外れたりした場合は、決してセロハンテープで補修はせずに、そのままカウンターまでお持ちください。傷んだ本を直したいという温かい気持ちは図書館員が受け継いで、専用の道具を使ってしっかり直します。
ただし、コーヒーなどをこぼして修復不可能の場合は、弁償していただくこともあります。つまり、図書館の本は公共物ですので、丁寧に扱っていただきたいのです。机の上で読む。唾をつけた手でめくらない。飲食しながら読まない。ページの角を折らない。クリップを使わない。マナーを守って今年も読書を楽しみましょう。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年1月12日付「いすの木のもとで」より>
新年が明け、元日に発生しました令和6年能登半島地震により、亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。また、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げ、一日も早く平穏な日々に戻る事をご祈念申し上げます。
旧年中は、伊万里市民図書館をご利用いただき、誠にありがとうございました。
おかげさまで昨年は、図書館☆(ほし)まつりが、通常どおりの規模と方法で開催されたり、さまざまな市民活動に図書館をご利用いただいたりして、コロナ禍で停滞していたコミュニティづくりを大きく進めることができました。また、長年の懸案だった空調機器の更新工事も完了までの目処が付き、快適な読書環境を提供できるようになりました。
たとえ、世の中がどんな状況下にあっても、図書館は皆さんの知的自由を確保する生涯学習の拠点であり続けたいと願っています。本を読むことや、学んで行動を起こすことによって、一つひとつの問題を、夢や希望に転換することができると信じて、今年も職員一同、図書館サービスの充実に努めてまいります。
なお、昨年もたくさんの企業や団体・個人の皆様から、寄附やボランティア活動を行っていただき、心から感謝申し上げます。まさに、市民との協働のもとに成長を続ける図書館であることを、実感する機会が多い一年でもありました。
どうぞ本年も、伊万里市民図書館をよろしくお願い申し上げます。皆様のご利用を心からお待ち申し上げております。
(館長 鴻上哲也)
「インターネットがあれば図書館はいらない」という人がいますが、本当にそうでしょうか?
確かにネットだと、自分が必要とする最新の情報を瞬時に手に入れることができますし、その後もお気に入りの情報が優先的に表示されるので便利です。このスピード感と双方向性はネットの長所ですが、一方で情報の不正確さや、検索履歴から利用者の好みが流出するという短所もあります。
そして、これらを裏返したものが図書館の特性ともいえます。つまり、本は出版までに時間がかかりますし、読み手に合わせて表現を変えることもできませんが、責任の所在が明らかで信頼性も高く、未知の分野に触れる機会にも富んでいます。
このように、図書館とネットにはそれぞれ得意・不得意があります。私たちは、互いにその足りない部分を補う形で使いこなしていくことが大切だと思います。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年12月8日付「いすの木のもとで」より>
人工知能(AI)やチャットGPTなど最新のデジタル技術と、紙媒体の本を扱う図書館は対極にあると思われがちです。しかし、どちらも自分に必要な情報を取り入れて、よりよい生活に役立てるという点では同じです。
実際、公共図書館でも最近は、スマホで読むことができる電子書籍、農業やビジネスなどに必要な専門情報を検索できるデータベースを備えた館が増えています。また、生成AIについては、私たちが道具として適正に使いこなす能力(リテラシー)を身に付けることが大事です。
当館では先日、市民団体の主催で、AIを使って親子で絵本を作るワークショップが行われました。参加者は、テーマや登場人物、読者ターゲットを考えて、どのように指示すればAIに意図が伝わるか苦心しながら、人工知能との共同作業を楽しんでいました。終了後、主催団体代表の「これからは答える力より、問う力が大事」との言葉が印象に残ります。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年11月10日付「いすの木のもとで」より>
読み聞かせ・実演や図書館友の会、図書の音訳、布絵本制作など、読書や読書の普及に関する活動を行う団体(読書グループ)は全国に約1万2300あるそうです。伊万里市でも、当館や学校・園・施設などで、さまざまな読書に係るボランティア活動が行われています。
読書環境が大きく変わってきている現代ですが、対面での読み聞かせや読書会の魅力、図書館や書店で手に取って本を選ぶ楽しさが見直されているのは、読書グループの皆さんのおかげとも言えるでしょう。
なお、27日から11月9日までの2週間、「第77回読書週間」が行われます。その中のテーマの一つが「読書グループの結成促進」です。新規に結成していただくのも大歓迎ですが、多くの読書グループが新しい仲間を募集しておられます。少しでも関心のある方は、最寄りの図書館までお問合せください。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年10月13日付「いすの木のもとで」より>
ブックトークをご存じですか?読み聞かせとは違って、本の一部を見せたり読み上げたりして、その魅力を紹介するものです。
学校などでも行われますが、伊万里市民図書館では大人対象の講演会などの後に、司書がテーマに関連した4~5冊の本を選び、自分の体験も交えながら10分程度でテンポよく紹介します。
「今まで読まなかったジャンルの本に出合える」と好評で、受講者の中にはこれが楽しみで参加しているという方もいらっしゃるほどです。司書にとっては、うまくいけば紹介した本全てを借りてもらえる達成感を味わえますが、その逆もありうる「勝負」の場でもあります。
聞き手の読書意欲を喚起することができるブックトークは、本に精通している司書の腕の見せどころです。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年9月15日付「いすの木のもとで」より>
図書館は本を貸し借りする以外にも、たくさんの機能があるのですが、あまり知られていません。そこで、伊万里市民図書館の「使わないともったいないサービスベスト5」をご紹介します。
第5位バリアフリー…さまざまな障がいに応じて読みやすく工夫された資料があります。第4位読書相談…読みたい本を探したり、ご希望に沿った本を紹介したりします。第3位おすすメール…好きな作家やキーワードを登録しておくと、ぴったりの新着図書をいち早くメールでお知らせします。第2位部屋貸し…生涯学習のために和洋大小さまざまな集会室を無料で利用できます。
そして堂々の第1位は、レファレンスサービス。専門の職員が、いろんな質問に本を使って答えたり、調査研究の参考になる資料を提供したりします。
サービス内容は各館によって異なりますので、ぜひ最寄りの図書館を使いこなしてください。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年8月18日付「いすの木のもとで」より>
一般に「読書」といえば、子育てや文化絡みで捉えがちですが、最近は「まちづくり」に読書を生かそうとする自治体が増えてきました。私たちが健康で幸福な生活を送るには、読書活動が有効であると考えられたからです。
以前から、読書のまちづくりに係る推進計画や宣言文を採択する所は多かったのですが、さらに一歩踏み込んで条例を制定した自治体では、学校や家庭だけでなく事業所を含めた地域ぐるみの取り組みを展開しています。
さまざまな施設や病院・飲食店などに図書館の本を置いたり、住民が寄贈した絵本を自由に利用できるボックスを設置したりして、本が身近にあるまちづくりが進められています。このような生活スタイルが定着して、自分の住む「まちの誇り」になっていくのでしょう。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年7月21日付「いすの木のもとで」より>
伊万里市民図書館は、今年で開館28周年を迎えます。その「誕生日」を祝い、本を通じて人と人を結ぶ「図書館☆(ほし)まつり」が、市民有志による実行委員会方式で毎年開催されています。
久しぶりの通常開催となる今年は、23の参加・協力団体が、広い館内のあちこちで音楽演奏、人形劇、読み語り、古本市、手作り品の展示・販売などを行います。今年のテーマは「心つないで☆まつり」です。
参加団体は趣向を凝らした出し物を提供するだけでなく、広報や進行・会計などの運営業務も分担して行います。まさに市民と行政との協働を象徴するような図書館イベントです。7月8、9日に開催予定です。どなたも、お気軽にお出かけください。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年6月23日付「いすの木のもとで」より>
2歳以下の赤ちゃんを対象にしたおはなし会「おはなし012」を3年ぶりに再開しました。前半は、天井に星空が投影されるのぼりがまの部屋で、司書とボランティアによる、手遊びと仕掛け絵本に「桃太郎」の素話。後半は、図書館専属の合唱団による童謡のミニコンサートでした。
赤ちゃんたちは、語り手の声や表情、合唱団の歌や動作を、じっと見つめたり、手足をばたつかせたりして反応していました。抱っこのぬくもりの中で安心して、言葉の響きやリズムを感じていたのでしょう。
実際、乳幼児と読書には、子どもの将来の読書やコミュニケーションの面と、保護者の育児ストレスの面でもよい影響があるという研究結果があります。乳幼児期ならではの本との出合いを大切に過ごしてください。今後も毎月第3木曜日の11時から行う予定です。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年5月26日付「いすの木のもとで」より>
先月、文部科学省が出した「第5次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の中で、本を月に1冊も読まない子どもの割合「不読率」を減らすことが基本方針の一番に挙げられていました。
この計画には、読書への関心を高める具体的な取り組みが多く紹介されていますが、最も効果が期待されるのは、「全校一斉の読書活動」ではないでしょうか。始業前に各自が好きな本を読む。たとえ10分でも1週間なら約1時間。ちょっとした本が読める時間です。
各教室には、市民図書館からセットで貸し出された本が、ほぼ月替わりで配本されています。大切な一冊との出合いがあるかもしれません。ところが最近、学習時間を確保するために朝の読書をやめる学校もあると聞きます。読書離れが進む中、学校での貴重な時間をどう使うかは、きわめて重要な問題です。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年4月28日付「いすの木のもとで」より>
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本が優勝した時のニュースの中で、多くのファンや選手、評論家が「漫画みたいで感動した」と話していました。ひと昔前まで「漫画みたい」という比喩表現は、「くだらない」「低俗な」という否定的なイメージで使われていました。しかし今回は、「想定をはるかにしのぐドラマチックな展開」のようなニュアンスでした。
近年、漫画は世界に誇る日本文化としての評価が高まっていますが、公共図書館における漫画自体の取り扱いはさまざまです。図書館の全国組織である日本図書館協会は、利用者の関心や心情に合うとともに一定の評価を得た作品を適正に選んで、自館の蔵書構成や予算を考慮して購入するよう求めています。当館では約2000冊のコミックを収蔵して貸し出しを行っています。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年3月31日付「いすの木のもとで」より>
2月26日は図書館建設の起工式を記念した「図書館めばえの日」です。毎年この日には図書館フレンズいまりの主催で「ぜんざい」を食べて、図書館の意義を考えてきましたが、今年は「夢語りの集い」が行われました。
子育て・福祉・まちづくりなどさまざまなジャンルの市民が、「こんな図書館だったらイイなあ」というイメージをオノマトペ(擬音・擬態語)で発表した後、具体的なアイデアまで示してもらいました。発言内容が一過性のもとに消えてしまわないよう、プロのファシリテーターが分かりやすくその場で視覚化しました。会場からもたくさんの意見が交わされ、市民運動から始まった伊万里の図書館づくりの熱気がよみがえったような時間でした。
「図書館は成長する有機体である」と言われますが、そのためには市民の声と行動が不可欠であることを再認識できた「めばえの日」でした。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年3月3日付「いすの木のもとで」より>
専修大学の野口武悟教授を招いて、「読書から誰一人取り残さないために」のテーマで講演会を行いました。
「今、図書館は本当に人々に必要な読書環境を提供できているのか?貧困、外国籍、障がいなどによって『本の飢餓』を生んでいないか?」という問題提起は関係者の胸に深く刺さりました。この問題を解決するには、誰もが自分事としてできることに取り組まねばなりません。
図書館では、大活字本や点字付きさわる絵本、朗読CD、LLブック、布の絵本など、さまざまなバリアフリー資料を充実させつつあります。また、自動車図書館の運行を始め、拡大読書器などの読書補助具、対面朗読、音声ガイド付き映画の上映会などのサービスも行っていますが、これらは必要とする方に充分届いているのでしょうか?
善意の押し付けでなく当事者の方と一緒に考え、読書のバリアフリーの実現をめざしたいと思います。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年2月3日付「いすの木のもとで」より>
新年1月号の「広報伊万里」の特集を伊万里市民図書館が飾っています。関係職員で打ち合わせて、テーマは格調高く「人生に寄り添う図書館」に決定。人の成長ごとに図書館が関わりを持っていることを知っていただこうという企画です。
そこで、新春にふさわしく、見開き一面に「人生すごろく」を掲載することにしました。当館では、赤ちゃんに絵本と読み聞かせをプレゼントするブックスタート事業に始まり、学校図書館の支援や、福祉施設などへの巡回、さまざまな調査相談、生涯学習の支援など、人生の各時期に寄り添うサービスを提供しています。
市民の皆さんへのお知らせのために作った「すごろく」ですが、あらためて図書館の使命の大切さを図書館員自身が再認識する機会ともなりました。今年もよろしくお願いします。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年1月6日付「いすの木のもとで」より>
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は、伊万里市民図書館をご利用いただき、誠にありがとうございました。
おかげさまで昨年は、3年ぶりに図書館☆(ほし)まつりを開催したり、さまざまなイベントに図書館をご利用いただいたりして、久しぶりに人が集うことの喜びや元気を共有することができました。また、たくさんの企業や団体・個人の皆様から、寄付やボランティア活動を行っていただき、心から感謝申し上げます。まさに、市民との協働のもとに成長を続ける図書館であることを、実感する機会の多い一年でした。
一方、社会全体を見渡せば、危機や不安・混乱に胸がふさがるご時世ですが、たとえ、どんな状況下にあっても、図書館は皆さんの知的自由を確保する生涯学習の拠点(人生に寄り添う図書館)であり続けたいと願っています。本を読むことや、学んで行動を起こすことによって、一つひとつの問題を夢や希望に転換できると信じて、職員一同、図書館サービスの充実に努めてまいります。
どうぞ本年も、伊万里市民図書館をよろしくお願い申し上げます。皆様のご利用を心からお待ち申し上げております。
(館長 鴻上哲也)
伊万里市は、読書を通して家族のコミュニケーションを図る「うちどく」に早くから取り組んでいます。
先日、松浦町で開かれた第15回家読フェスティバル(松浦コミセンまつりと合同開催)では、地元の小・中学校の先生方から実践発表がありました。小学校と家庭が連携したリレーうちどく。中学校と市民図書館が連携した図書館まつり。なんと、校長先生自ら発表していました。
また、保育園や読み語りグループからは絵本を題材にしたかわいい劇や、見応えのあるパフォーマンスが披露されました。会場の駐車場には、自動車図書館“ぶっくん”も出動して貸し出しを行いました。
家庭と地域と学校と行政が、それぞれの役割を自覚して、堅実に取り組まれている松浦町の「うちどく」。挨拶の中で実行委員長は「『うち』は家を示すだけでなく、『仲間うち』も含むのです」と話されていました。家庭から地域住民へ、読書だけでなく優しさや連帯感も広がっています。
(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年12月2日付「いすの木のもとで」より>
全国学校図書館協議会の調査で、小中学生の1ヵ月の平均読書冊数が30年前に比べて倍増(小学生6.5冊から13.2冊に、中学生2.1冊から4.7冊に)していることが分かりました。
学校や家庭での地道な取り組みの成果だと思われますが、その一方で1ヵ月に1冊も読まない割合は小6で10%、中3で31%、高3で69%と、学年が上がるにつれて増加しています。
その理由はさまざまですが、高学年になって図鑑や絵本を読んでいると、物語や長編小説を読むように促す大人がいることも背景にないでしょうか。本を選ぶこと、読むことは当人の自由です。だから図書館は面白さや魅力を紹介して勧めることはあっても、一定の価値を押し付けて強制することはしません。
今年から「本との新しい出会い、はじまる。」をテーマに「秋の読書推進月間」も始まりました。読書の喜びを再確認したいものです。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年11月4日付「いすの木のもとで」より>
「うちどく(家読)」は、読書によって親子のコミュニケーションを深める実践で、県内各地でさまざまに取り組まれています。
先日、佐賀うちどくネットワークの主催で「うちどくタウンミーティングin伊万里」が開催されました。この中で、和歌山県有田川町の「絵本コンクール」、伊万里市黒川町おはなしどんぐりの「まちかど絵本箱」、唐津市北波多小学校の「うちどくリレー」、の3事例が報告されました。
「うちどく」といえば、家庭教育や子育ての取り組みとばかり思われがちですが、今回はいずれも、家庭から学校や地域へとその活動範囲を広げる実践でした。
読書や絵本を通してこのまちに住んでよかったという思いが多くの住民の間に広がるとき、「絵本によるまちづくり」が実現するのではないか。そんな予感を参加者の皆さんと共有できたイベントでした。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年10月7日付「いすの木のもとで」より>
図書館では、たくさんのボランティアがさまざまな活動を行っておられます。
例えば伊万里では、おはなし会の開催、布絵本の制作と活用、講演会やコンサートなど各種イベントの開催、毎月の草刈・剪定作業、さまざまな寄付や寄贈、各種審議会での協議提案など、その内容は多岐にわたります。
中でも特筆すべきは、「図書館フレンズいまり」という友の会の存在です。会員数359人、会員資格は「図書館を愛する人」。約30人の役員は、イベント・美化・広報・インフォメーション・フレンズコーナーの各委員会に分かれて、多彩な活動を展開されています。
キャッチフレーズは「協力と提言」。単なる援助団体でなく、市民と行政の協働の立場で考えて行動する、図書館にとってかけがえのないパートナーです。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年9月5日付「いすの木のもとで」より>
子どもたちにとって一番身近で豊かな読書環境は、学校図書館ではないでしょうか?
公共図書館ほどではないにしろ発達段階に応じたさまざまな本があり、子どもの頃にお気に入りの本に出会われた方も多いことでしょう。
伊万里市民図書館では2台の自動車図書館が市内の学校を巡回して、学校図書館への団体貸出はもちろん、学級文庫用の本や調べ学習をする時の資料を月に1~2回届けています。そうやって、子どもたちの好奇心や読書意欲をかきたてる新しく魅力的な本を学校に補充しているのです。
また、昨年度からは当館の司書が学校図書館を訪問して関係職員の相談に応じたり、アドバイスや作業の協力を行ったりもしています。学校図書館との連携・支援も公共図書館の大事な仕事なのです。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年8月9日付「いすの木のもとで」より>
先日、ある大学の先生が民間企業の指定管理で運営されている図書館と、公設公営の当館の両方を視察された後、「どちらが善でどちらが悪という見方ではなく、別の軸で見るべきだと思っている」との感想をいただきました。
今の時代はあらゆる面で「多様性」が尊重されます。公共図書館についても、画一的な捉え方でなく、どんな目的で設置されているのかを知ることが大切です。
伊万里市民図書館は条例で「すべての市民の知的自由を確保し、文化的かつ民主的な地方自治の発展を促すため」とうたっており、現在いうところの多様性も担保されています。
この目的を達成するために、運営形態・蔵書構成・職員体制・事業内容などが適切かどうか検証することが大切だと考えています。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年7月11日付「いすの木のもとで」より>
「インクルーシブ教育」という言葉が学校でよく使われます。障がいのある人もない人も、自分の能力を最大限に伸ばし効果的に社会参加できるよう、ともに学ぶ仕組みのことです。
図書館でも通称、読書バリアフリー法の施行(2019年)を受けて、さまざまな障がいがあっても読書を楽しめるように環境を整え、資料を整備することが求められています。
目が見えない、文字や絵を認識することが難しい、本を持ったりページをめくったりすることが難しい、小さな文字が読みづらいなど、さまざまな理由で読書が困難な人々に向けて、最近ではその特性に応じた読みやすい形式の本や新しい道具が出版・開発され、手軽に利用できるようになりました。
詳しくは、お近くの図書館にお尋ねください。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年6月14日付「いすの木のもとで」より>
ある日、職員が「本を1冊探してお渡ししただけなのに、『忙しい中すみません』と言われました。当然のサービスなんですが…」と戸惑い気味に話しました。
図書館員は、利用者が困ったときに手伝えるよう、日頃からさまざまな研修を重ねています。お探しの本を見つけたり、参考になりそうな本を紹介したりすることは図書館の大切な仕事です。どうぞ恐縮なさらず、気軽に図書館員にお尋ねください。
最近は、パソコンやスマートフォンの普及によって、分からないことを人に尋ねたり、本で調べたりすることが少なくなりました。ネット検索は便利ですが、書名や人名がうろ覚えだと一苦労します。
そんな時でも、ベテランの図書館員は漠然としたキーワードから複数の資料候補を紹介できます。何より、人を介することの温かさと安心感が魅力です。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年5月16日付「いすの木のもとで」より>
昨年度、市民との協働で開催した伊万里ミントカレッジでは、毎回の講演の後に司書がテーマに関連した本を5冊程度紹介する「ブックトーク」をセットにしました。
参加者からは「講演も素晴らしかったけど、ブックトークも良かった!」との声を多くいただきました。現に、紹介された本は競うように借りられていきました。
司書は事前の準備として、聞き手の関心は何か?何をどこまで語るか?などについて入念に計画します。聞き手の読書意欲を起こすのに大切なことは、知識を与えるのではなく、読書の喜びを分かち合うという姿勢で臨むことです。
当館の司書は、この分野でも百戦錬磨です。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年4月18日付「いすの木のもとで」より>
3月11日、ウクライナ北部の都市チェルニヒウの図書館が、空爆により破壊されたとCNNが報道しました。さらにアメリカ国営放送は、フェイスブックで「壊れた窓から破損した本や本棚が見える」と動画を投稿しています。戦火は、生活に身近な図書館にも迫っていました。
日本図書館協会は、ウクライナに関する声明の中で「人びとの生命を尊重し、表現の自由と知る自由を守り、もって平和と民主主義に資し、豊かな文化遺産を保護することは、私たちの社会にとって極めて重要な図書館の役割です」と、果たすべき使命を述べています。
利用者の幸福と平和を愛し、民主主義の砦と言われる図書館で、いま、何ができるのでしょう。すべての人に自由で公平な資料と情報を提供するために、そして一日も早く、安心して幸せに暮らせる春が訪れることを願い、私たち図書館員は、本を並べています。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年3月21日付「いすの木のもとで」より>
2月26日は伊万里市民図書館の起工式を記念した「めばえの日」です。
当館は構想の段階から、市民と行政が何度も学習と議論を重ねてつくり上げた「協働」のお手本と言われます。このやり方は、全ての公共施設について参考になると思いますが、図書館建設以外で視察を受けたことはほぼありません。
公共施設は貴重な税金を使って身近な土地に建つのですから、利用者の考えを反映したいものです。特にまちづくりや教育・福祉・文化に係る施設でしたら、施設が完成した後に、市民がどのように使いたいのか、どのように運営に参画できるのかを軸に考えるべきです。だから、行政主催の説明会で要望を発言するだけでなく、市民自身による「学習」が大事なのです。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年2月21日付「いすの木のもとで」より>
図書館は来館者に本を貸すだけでなく、お近くに本を届けるサービスも行っています。その代表格が自動車図書館。県内では四つの市で実施されていますが、図書館から離れた所にお住まいの方や交通手段が不便な方、体が不自由な方に喜ばれています。
また、学校や保育園、福祉施設などにも定期的に巡回して団体貸出を行うなど、身近に読書が楽しめるまちづくりにも一役買っています。
さらに伊万里市では、スマホで予約すれば近くのコミュニティセンターで受け取れるサービスも始めました。手の届く所に本がある暮らしってすてきですね。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年1月24日付「いすの木のもとで」より>
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は、伊万里市民図書館をご利用いただき、誠にありがとうございました。
私たちは、今まさに「Withコロナ」の時代を生きています。見えない敵との闘いも2年目ともなれば、正しく恐れて適切に行動していくことが少しずつ身についてきているように思います。実際、図書館でも昨年は、感染対策を配慮して新たに開発した事業や、やり方を工夫して実施した事業が多くありました。また、館内の集会室等を利用される団体の皆様も、細やかな配慮のもとにイベントを開催されるなど、それぞれ知恵と努力を重ねておられます。
さらに、昨年はたくさんの企業や団体・個人から、寄付や奉仕活動等のボランティアを行っていただき、誠にありがとうございました。伊万里市民図書館が、市民との協働のもとに成長を続けていることに、改めて感謝申し上げます。どんな状況下にあっても、図書館は利用される皆さんの知的自由を確保する生涯学習の拠点であり続けたいと願っています。現代のように人が集う事すら困難な時代だからこそ、市民と行政との協働によって、その使命を果たしてまいりたいと存じます。
どうぞ本年も、伊万里市民図書館をよろしくお願い申し上げます。職員一同、皆様のご利用を心からお待ち申し上げております。
(館長 鴻上哲也)
インターネットの百科事典ウィキペディアを利用している方は多いと思います。世界中のボランティアによって5500万項目以上の記事が作られています。
伊万里では、市内の文化財や人物・観光などについての記事を作成するボランティアを「イマリペディアン」と名付け、その養成セミナーを開催しました。高校生から高齢者までのメンバーがともに学び、その成果として「山ン寺遺跡」の記事を作成・投稿していますのでぜひご覧ください。
「調べてわかったことを、整理して発信する」。とてもシンプルですが、人が学ぶことの大切さが凝縮されていると思います。図書館を使った新しい学びの形といえるでしょう。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年12月27日付「いすの木のもとで」より>
図書館を使ってもっとワクワクしたい市民が集まって「伊万里ミントの会」が、今年発足しました。市民の「ミン」と図書館の「ト」で「ミント」です。
コロナに対抗して暮らしの中に学びと出会いを取り戻すため、リレー講演会「森羅万象物語」と、ウィキペディアに投稿する技術を学ぶ「イマリペディアンセミナー」を企画して参加者を募集されています。講演後のブックトークや文献調査を組み込んでいる点が図書館を活用した特色です。
図書館は、市民との協働で絶えず進化を続ける有機体であると言われますが、まさにそれを実体化した取り組みでしょう。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年11月29日付「いすの木のもとで」より>
「うちどく」ってご存知ですか?家庭での読書により親子のコミュニケーションを深める実践で、県内各地でさまざまな広がりを見せています。
伊万里市では黒川町が先進地ですが、先月「まちかど絵本館 えほんのたね」が始まりました。使われなくなった公衆電話ボックスに本棚を作り付け、町民から提供された絵本を配置し、いつでもだれでも自由に借りて読めるようにしたものです。町内8か所に設置されました。
子どもも大人も絵本に触れ合う機会を増やそうとボランティアの皆さんが企画され、行政との協働で実現しました。市民の皆さんの善意に支えられた「えほんのたね」が大きく育ちますように。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年11月2日付「いすの木のもとで」より>
多くの図書館で、年に1回程度、館内すべての本や雑誌等の所在や不備を確認する「蔵書点検」が行われています。今年度、当館では10月4日から11日まで休館して、全職員総出で40万冊を超える本との「格闘」の日々が始まりました。
現在1階の公開書架にとりかかっています。一人一台「メットセン」とか「ハンディ」とか呼ばれるバーコードの読み取り機械を使って、一冊ずつ本をなぞっていきます。早い人だと1時間で1,000冊という猛者もいますが、書架の高い所や低い所、絵本や図鑑などの大きい本などが集まっている所では、ベテランでも難儀します。
期間中、ご利用いただけないのはとても心苦しいのですが、この作業を通して、「あるべき所にお探しの本がある」使いやすい図書館が維持できるのです。しばらくの間、ご辛抱ください。
秋祭りのシーズンを迎えますが、残念なことに今年も中止や縮小を余儀なくされている所が多いようです。非日常の演出で、連帯感や自己存在感を味わえる祭りは、地域にとっても個人にとっても欠かせない行事です。
参加できない時には、祭りの由来を辿りながら、郷土の歴史に触れてみてはいかがですか。どの図書館にも郷土資料のコーナーがあり、地域のシンクタンクとして必要な情報が収集されています。
伊万里市民図書館では、「歴史と風土」「文化をつくる」「自然と産業」「社会をつくる」といった4つのテーマで分類しています。貴重な資料もご利用できますので、図書館員にお尋ねください。図書館の郷土資料は、地域文化のバロメーターなのです。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年10月4日付「いすの木のもとで」より>
今日20日は敬老の日。伊万里市民図書館が誇る最強のヘビーユーザーをご紹介します。
白い三輪スクーターでさっそうと来館されるKさん(男性)は大正生まれの95歳。累計の貸出冊数は、なんと3万3263冊!
腰は曲がっても、本を選ぶときの目は真剣そのもの。メガネをかけ直して主に小説の書架を巡りながら、毎回20冊ほどを借りて行かれます。
ベテランの図書館員とは、下の名前で呼び合うほどの仲の良さです。少し耳や足がご不自由ですが、優しい瞳の輝きと、穏やかでしっかりとした話しぶりは、「生涯読書」が心の健康と豊かさをもたらすことを証明しているかのようです。いつまでもお元気で!(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年9月20日付「いすの木のもとで」より>
先日、興味深い調査結果が発表されました。国立青少年教育振興機構が全国の20代から60代の男女5000人を対象に行った「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」です。
それによると、①子どもの頃の読書量が多い人ほど、認知能力(情報を一時的に記憶する力)が高く、②本(紙媒体)で読書している人ほど、自己肯定感や批判的思考力・主体的行動力が高い傾向にあるそうです。昔から「本を読むと頭が良くなる!」と言われてきましたが、その一部が実証されたことになります。
ちなみに、1ヵ月に1冊も本を読まなかった人は、年代に関係なく増加した(5年前と比べて20ポイントも!)という結果も出ていました。子どもに「読みなさい」という前に、まずは大人ですね。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年8月23日付「いすの木のもとで」より>
ちょっと分からないことがあると、すぐにスマホで調べられる便利な時代です。夏休みの自由研究でも大活躍でしょう。
ところで、調べる方法は「本か?」「ネットか?」が時々話題になります。図書館としては、もちろん本を「推し」ていますが、情報収集の手段としてネットには優れたところがありますので、ぜひ使い分けてほしいものです。
そして、調べる際にはなるべく「人」に尋ねることをお勧めします。親・先生・司書・施設職員などからの意見を加えると、さらに考えが深まります。人や本から学んで、自分で考えたことをまた人に伝える。相手を意識することで、思考力や表現力が高まるのです。
今年も、伊万里市では市内の小学生を対象に「図書館を使った調べる学習コンクール」を開催します。詳しくは、図書館にお尋ねください。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年7月26日付「いすの木のもとで」より>