2020年7月の記事一覧

図書館員の力

 私が利用者だった頃の話です。ある本を探すため、膨大な量の本の前で右往左往していました。とうとう探し疲れて司書に尋ねると、ほんの数分で見つけ出してくれました。
 また、ある問題について調べ物をしていた時も、司書に相談すると関連資料を4、5冊即座に見繕ってくれました。その上、所蔵していない本は、他の図書館から取り寄せてくれました。
 図書館は、たくさんの本があるだけで十分魅力的な施設です。しかし、図書館員の力を借りると、さらにその価値が高まります。ネット検索と自宅配送が主流になってきた現代でも、わざわざ図書館まで足を運んでくださる皆さんとすてきな本との出会いのために、私たち図書館員は働いています。
 どうぞ気軽に声を掛けてください。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和2年7月27日付「いすの木のもとで」より>

最小投資で最大効果

 昨年度末から現在に至るまで、新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、皆さまには何かとご不自由・ご不便をおかけして申し訳ありません。マスク着用や座席間隔などさまざまな制限をお願いしていますが、快くご協力いただきありがとうございます。また、中には「大変ですね」「ご苦労様です」とあたたかい言葉をかけてくださる方もおられて、大いに励まされています。あらためてお礼申し上げます。まだしばらくは、警戒を緩めるわけにはいきませんが、皆さまの安全・安心を確保して図書館サービスができるよう努めてまいりますので、引き続きご協力いただきますようお願いします。

 さて、伊万里市民図書館は今年で開館25周年を迎えました。当時の資料を読み返していると、開館の1年前、職員と市民の代表5人がアメリカまで図書館の先進地視察へ出かけておられました。かなり気前の良い時代であったとはいえ、図書館づくりにかける市民の熱い思いがバックにあったことは疑いのないところです。その報告書の中の一文に目が留まりました。そこには「アメリカでは、本は図書館から借りて読むもの」というのが常識だということが記されていました。

 今や、インターネットを使えば1日で新刊が自宅に届く時代。わざわざ、図書館にまで足を運んで本を借りるという人は、もう珍しいのかもしれません。ある常連さんに月に何冊くらい読まれるのか尋ねると、「10冊くらいですかね。」との返事がありました。読書家にとっては必要な自己投資であり、生きがいでもあるだけに、このペースはくずせないでしょう。とはいえ、読みたい本を全部購入するとしたら、たいそうな出費です。1冊平均2,000円ぐらいとしても、月に20,000円、年間では240,000円もかかります。しかし、市民が払った税金で図書館は運営されていますので、伊万里市民は読書に関しては最小の投資で最大の効果を得ていることになります。むしろ、使わないでいるのはあまりにもったいない話です。

 当館所蔵の約39万冊はすべて市民のものです。人間でいえば今年で25歳となって、青年から大人へと成長を続ける伊万里市民図書館を、これからも皆さまのくらしのお役に立たせてください。

(館長 鴻上哲也)