カテゴリ:いすの木

本と人、地域をつなぐ 図書館ボランティア

 個別化が進む現代社会では、人と人との緩やかなつながりが見えにくくなっています。そんな時代に、静かに図書館や地域を支えているのが、ボランティアの存在です。
 たとえば伊万里市民図書館では、環境整備はもちろん、イベントの企画実施や広報活動、視察対応、資料作成など多方面に市民が積極的に関わり、本を介して多様な人々に出会いの場と機会を提供しています。図書館ボランティアにとっては、得意分野や関心を社会に役立てる喜びがあり、生涯学習の実践や居場所づくりにもつながります。
 一方、図書館にとっては、市民の視点が加わることで、より地域に根差した開かれた公共空間が生まれます。まさに互恵的な関係で、図書館は市民とともに育つ教育施設なのです。本と人を結ぶ図書館ボランティアは、分断の時代に「共に生きる感覚」を取り戻す大切な営みと言えるでしょう。
 特別な資格も技能もいりません。まずは、最寄りの図書館を訪ねて、できることから関わってみませんか? あなたの一歩が、地域の温かなつながりを広げていきます。

(統括管理者 鴻上哲也)

<佐賀新聞 2026年03月20日 付「いすの木のもとで」より>

 

★佐賀新聞「いすの木のもとで 伊万里市民図書館だより」はこれで終了しました。

ご愛読、ありがとうございました。

レファレンスサービス 幅広い情報源で「知」提供

 図書館には、調べもののお手伝いをするレファレンスサービスがあります。ある日、利用者から「消費税増税に対する賛成・反対の意見を知りたい」との相談がありました。
 司書は、紙資料の書籍や雑誌記事に加えて、商用データベース「日経テレコン」を使い、キーワード検索で関連記事を提示しました。これにより、新聞や経済誌記事の多角的な意見と最新情報を効率的に提供することができました。
 このように当館では、ビジネス・社会課題の背景を掘り下げる際に、単なる紙情報の紹介だけにとどまらず、商用データベース(ジャパンナレッジ、日経テレコン、D1-Law、佐賀新聞電子版、ルーラル電子図書館、DATASALAD)を情報源に組み込むことで、より多面的で最新の情報ニーズに応えるようにしています。
 図書館のレファレンスサービスは、紙資料・ウェブ情報・有料データベースを組み合わせて、使える「知」を無料で提供する最強の情報提供手段です。

(統括管理者 鴻上哲也)

<佐賀新聞 2026年02月20日付「いすの木のもとで」より>

楽しく学び合い、住民と交流 外国人向け絵本教室

 先日、伊万里市内で暮らす外国の青年たちを対象に、日本語や文化についての理解を深めるワークショップ「えほんでまなぶ日本」が開催されました。日頃から在住外国人の支援と交流をボランティアで行っている「日本語教室いまり」の皆さんの協力を受けて教育委員会が行いました。
 昨年、市内で起きた外国人による痛ましい事件の際には、すぐさま市長が冷静な対応を市民に呼びかけ、差別や偏見が広がることはありませんでした。図書館は、人と人とを分ける場所ではなく、そっとつなぐ場所です。多文化を知る本や展示は、誤解や孤立を防ぐ小さなきっかけになります。大切なのは、特別扱いではなく、同じ地域で暮らす一人として迎える姿勢です。
 今回のように、絵本を通して楽しく学び合い、互いを知る時間を得ることは、外国人が日本の言葉や習慣・文化について学ぶだけでなく、地域住民との交流を深めることにもつながります。これこそが、多文化共生社会を支える基盤としての図書館の役割といえるでしょう。

(統括管理者 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和8年1月23日付「いすの木のもとで」より>

読書のまちづくり 共同体育む未来への投資

 伊万里市黒川町では、「家読(うちどく)」の実践が根付いています。学校での読み聞かせをきっかけに始まった取り組みは、やがて大人も子どもも読書を楽しみ、感想を語り交流できる心豊かな風土づくりへと広がりました。
 本は、知識や感性を育むだけの道具ではありません。同じ物語を共有することで、家族の会話が生まれ、地域の中に共通の話題と価値観が育ちます。読書は個人の営みでありながら、人と人をゆるやかにつなぐ力を持っています。図書館は、その循環を支える拠点でもあります。
 来年1月から伊万里市では、文部科学省の委託を受けて「読書のまちづくり推進事業」に取り組みます。これは、さまざまな世代や立場を超えた人たちが、同じ読書空間やイベントを通じて、出会い、対話し、居心地の良い人間関係を築く、そんなコミュニティー形成を目指すものです。読書を通じて、生涯にわたって学びと文化のある知的インフラを整備していく。読書によるまちづくりは、未来への静かな投資と言えるでしょう。

(統括管理者 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和7年12月19日付「いすの木のもとで」より>

図書館と音 音楽や会話 本と人つなぐ

 図書館といえば、静かな場所というイメージがあります。確かに、静けさは本と向き合い、自分の考えを深めるために欠かせない環境の一つです。しかし、伊万里市民図書館では30年も前から、静寂だけにとらわれない図書館づくりを続けています。

 館内にはやわらかなBGMが流れ、ピアノが置かれた子ども開架室では小さなコンサートが開かれることもあります。こうした試みは開館当初から続くもので、音楽や会話を通して本と人がつながる温かな空間づくりを目指してきました。

 一方で、静けさを求める方のために、完全静粛エリアも設けています。静けさとにぎわい、そのどちらもが図書館を豊かにしてくれます。言葉と音、孤独と出会いが調和する場所。そこにこそ、これからの「知の広場」の姿があるように思います。

(統括管理者 鴻上哲也)

 

<佐賀新聞 令和7年10月23日付「いすの木のもとで」より>

蔵書数と健康寿命 要介護リスクとの関係注目

 興味深い研究論文が発表されました。図書館の蔵書数が多い自治体ほど、要介護高齢者が少ないというのです。慶応大と京都大の研究者が共同で7年間追跡調査したもので、関係者の注目を集めています。

 分析の結果、図書館の蔵書が人口当たり1冊(1万人の町なら1万冊)増えると、その地域の高齢者の要介護リスクが4%減少するという相関関係が確認されました。あくまでも相関ですので、因果関係を立証するものではありませんが、図書館やその蔵書の充実が健康長寿のまちづくりに有効である可能性を示しています。

 図書館は、市民が文化的な活動に参加するための大切な社会資本で、市民に対して知的な刺激を提供する役割を果たしています。しかも無料で利用できますので、高齢者が毎日出かけることで身体活動を促すこともできます。さらなる研究が待たれますが、図書館の有用性が、また一つ明らかになろうとしています。

(統括管理者 鴻上哲也)

 

<佐賀新聞 令和7年9月25日付「いすの木のもとで」より>

図書館の「利益」 数字に表せない豊かさ提供

 先日、ある会社員の方から「図書館は利益って出るんですか?」と尋ねられました。ちょっと考えて、こう答えました。例えば、図書館が本を100冊購入したとします。それを10人の市民が借りて読んだとしたら、100冊分の予算で千冊分の読書を提供したことになります。ですから、図書館は、本を借りれば借りるほど読書のパフォーマンスが上がるのです。
 企業のように金銭的な利益は生みません。しかし、限られた予算で市民の学びや楽しみを何倍にも広げることができます。子どもが初めて読む物語、大人が再び手にする古典、人生を変える一冊との出合い…そうした価値は、数字には表せません。
 図書館は「利益」ではなく、「豊かさ」を生み出す場所です。本を開くたびに広がる知識や感動こそ、私たち図書館員が市民に還元し続けたい、本当の意味での「利益」なのだと思います。


(統括管理者 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和7年8月29日付「いすの木のもとで」より>

一筆啓上 利用者からエール、激励

 「自分が生まれる前からあったのに、古さを感じることがない図書館が大好きです」「いくつも図書館にはお邪魔しましたが、『住みたい』と思ったのはここだけでした」
 いま、館内のいたるところに、このようなメッセージが掲示されています。これは、開館30周年記念事業実行委員会の取り組みの一つ「一筆啓上 市民図書館へ想(おも)いを込めて」に市の内外から寄せられた声です。図書館員にとって極めてありがたいエールですが、同時に身の引き締まる叱咤(しった)激励でもあります。
 市民図書館は、長年にわたって市民一人ひとりにかけがえのない思い出や、出会い、学び、そして人とつながる機会と場を提供してきました。図書館は、ただ単に本を借りたり読んだりするだけの場所ではなく、これらの活動が幾重にも交わることによって、「地域の知の拠点」と呼ばれるようになるのでしょう。

(統括管理者 鴻上哲也)


<佐賀新聞 令和7年8月1日付「いすの木のもとで」より>

学校図書館支援 画期的な「連携室」設置

 子どもにとって最も身近な読書環境。それは、学校図書館ではないでしょうか。学校数が多い当市では、以前から市民図書館が自動車図書館による巡回配本や、司書の派遣を通じて、資料の充実や環境整備の支援などに積極的に取り組んできました。
 でも、市民図書館は社会教育施設ですので、学校からの要請がないと出動できません。そこで、本年度から教育委員会の学校教育課内に「学校図書館連携室」が設置されました。
 主な連携先はもちろん市民図書館。これにより、教育委員会を挙げて子どもの読書推進に取り組み、豊かな情操を育むことはもちろん、読解力や表現力の向上に学校が市民図書館と連携して主体的に取り組むことが期待されます。
 教育行政組織の改編としても画期的なことで、今後の動向に大きな関心が寄せられています。

(統括管理者 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和7年7月4日付「いすの木のもとで」より>

 

開館30周年 市民の“風”が原動力

 伊万里市民図書館は、7月7日に開館30周年を迎えます。この節目の年を記念する事業について、市民有志で実行委員会を組織して、昨年から計画と準備を進めてきました。
 その第1弾として先日、政治学者の姜尚中(カンサンジュン)さんの特別講演会を盛会裏に開催したところです。この後も年間を通じて「図書館伊万里塾」など、市民の読書意欲を満たすとともに、図書館や本が身近にある豊かな暮らしを実感していただこうと考えています。
 一般に、図書館の3要素は「一に資料、二に職員、三に施設」と言われます。伊万里市民図書館は、もう一つ「市民」を加えた4要素で成り立っているところが特色です。図書館を船に例えれば、資料と職員と施設は帆。市民は風です。これからの時代、伊万里市民はどのような風を吹かせて「図書館号」を進めようとするのでしょうか? 新たな航海が始まります! 

(統括管理者 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和7年6月6日付「いすの木のもとで」より>