図書館フレンズいまりが主催した「俳句まつり」で、ある高齢の女性が入賞されました。
伊万里市民図書館の誕生日を祝う7月7日の「図書館☆まつり」で行われた表彰式に、その方が和服姿で出席しているのに感激した主催団体のスタッフの一人が、次のような歌を作ってその場でお渡ししたそうです。「着物きて表彰式におでましの九十二歳の俳句のまつり」
後日、女性の知り合いの方から、受賞したこともさることながら、「おでまし」と表現してもらえたことをとても喜んでいたと、うれしいご報告を頂きました。
イベントを開催すると、集客の結果にばかり目が向きがちですが、参加者数の多寡に一喜一憂するばかりでなく、このような心の触れ合いが生まれることにこそ、大きな魅力や意味があることを忘れてはならないと思います。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年7月26日付「いすの木のもとで」より>
最近、全国的に新しい図書館が増えていますが、「にぎわい創出」や「地域振興」への意識の高い所は、おしゃれなデザインやサービスで人気を博しています。去る3月31日、当館を視察された盛山正仁文部科学大臣が、利用者数の減少について質問されました。その際、深浦弘信市長は「図書館は利用者数だけが尺度ではありません」と答え、資料の魅力や市民の学習活動の様子を紹介しました。
伊万里市民図書館は、条例の中でその設置目的を「生涯学習の拠点」と定めています。つまり、図書館を通じて利用者の満足度を高める要素はさまざまにありますが、伊万里市では図書館を教育や学習のための施設と明確に位置付け、その充実を図っていることを説明したのです。
百花繚乱の図書館界の中で、当館はデジタル化や脱炭素化などといった新しい世の中の動きにも対応しながら、公設直営のブレない姿勢を貫いています。来月6、7日には開館29年目を市民とともに祝います。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年6月28日付「いすの木のもとで」より>
ある小学校の先生が、受け持ちの6年生の子どもから「図書館に行く時間がありません!」と「怒られた」そうです。教師の忙しさはよく話題になりますが、同じくらいに子どもたちも多忙な時間を学校で過ごしています。
休み時間はトイレや給水、次の準備をしているとあっという間に過ぎますし、楽しいはずの昼休みは、運動会や修学旅行などの学校行事の準備や練習が入ることが多く、特に高学年は自由な時間が取れません。教科の授業時間を確保するため、昔は週に1回あった図書の時間が多くの学校で消えました。
この子どもは図書館に行きたいのに、その時間が取れないことへの正当な抗議を行ったのです。これに対して担任の先生は、週に1回、朝のホームルームの時間に、クラス全員で学校図書館に行くことを決めてくれました。おかげで、そのクラスの子どもは、本を借りに行く時間が確保され、読書量も増えているそうです。
ステキな判断をされた先生と、本を読みたい子どものピュアな行動に拍手を送ります。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年5月31日付「いすの木のもとで」より>
「目が滑る」という言葉をご存じですか?集中力を欠いた状態で本を読んでいると、同じ行を何度も読んでみたり、逆に飛ばしたりすることがあります。そのように、内容が頭に入ってこない状態を表す新しい言葉で、時折ネットなどで目にしますが、まだ当館の国語辞典には採集されていませんでした。
ところで図書館の業界では、書架に置かれた本の並びを見て、読みたい本が目に入ってこないことを「目が滑る」ということがあります。つまり、読みたくなるような本が書架にない、または読みたいと思わせる並べ方をしていない時に使われます。
図書館は、通りすがりの方が思わず読みたくなるような本を選んで購入します。さらには、来館者が食指を伸ばすような本を効果的に並べる技術も駆使しています。ですから、「目が滑らない」ような書架の収集と展示ができているか、ぜひ近くの図書館に確かめに来てください。
万が一、読みたい本が見つからなかった場合は「目が滑って選べなかったよ」と一言残していかれると、司書のプロ根性に火が付くはずです。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年5月3日付「いすの木のもとで」より>
図書館には、多くの個人や企業・団体から寄付が寄せられます。毎年、新しい絵本をセットで寄贈してくださる団体もあれば、企業の社会貢献や故人の香典返しなど、その形態や規模はさまざまです。図書館には貴重な資料が豊富にあるので、そこに寄付することは文化の普及と地域の振興に直接貢献できると考えられるからでしょう。
また最近では、特定のプロジェクトに参画する意義を強調したクラウドファンディングも盛んに行われています。災害支援や人道支援の寄付が広がり、かつてのように寄付は意識の高い人が行うものという偏見はなくなりました。自分にできる範囲での寄付行為や社会貢献が、地域社会に広まりつつあります。
このような「寄付文化」は、地域全体で社会的課題の解決を支える重要な要素となります。ひるがえって図書館側としては、「寄付をしたい」「協力したい」と思ってもらえるよう成長することが大切なのは言うまでもありません。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和6年4月5日付「いすの木のもとで」より>