コラム

寄付の広がり

 図書館には、多くの個人や企業・団体から寄付が寄せられます。毎年、新しい絵本をセットで寄贈してくださる団体もあれば、企業の社会貢献や故人の香典返しなど、その形態や規模はさまざまです。図書館には貴重な資料が豊富にあるので、そこに寄付することは文化の普及と地域の振興に直接貢献できると考えられるからでしょう。
 また最近では、特定のプロジェクトに参画する意義を強調したクラウドファンディングも盛んに行われています。災害支援や人道支援の寄付が広がり、かつてのように寄付は意識の高い人が行うものという偏見はなくなりました。自分にできる範囲での寄付行為や社会貢献が、地域社会に広まりつつあります。
 このような「寄付文化」は、地域全体で社会的課題の解決を支える重要な要素となります。ひるがえって図書館側としては、「寄付をしたい」「協力したい」と思ってもらえるよう成長することが大切なのは言うまでもありません。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年4月5日付「いすの木のもとで」より>

音読教室

 読書をしていると、美しい言葉や感動的なセリフ、言葉のリズムなどに引かれて、思わず声に出して読みたくなることはありませんか?だれにも邪魔されず一人、本の世界に入り込める至福のひとときです。
 伊万里市民図書館で行われている人気の事業に「いきいき音読教室」があります。毎月20人ほどの参加者が、文学作品の名文や有名な詩歌などを、朗々と読み上げておられます。また、職員が講師となって市内の団体や施設を訪問して行う出張音読教室も好評です。マスク生活が長引き、大きな声を出す機会が少なくなったことへの反動かもしれません。
 音読には(1)脳の活性化と認知機能の改善(2)ストレスや不安の軽減(3)コミュニケーション能力の向上-などの効果が期待されると言われます。個人の成長だけでなく、社会参加にもつながる学びのスタイルです。音読を日常生活に取り入れることで、健康で充実した人生を送りませんか。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年3月8日付「いすの木のもとで」より>

図書館に歴史あり

 どの図書館にも歴史があります。伊万里では、昭和天皇の即位御大典の記念事業として、昭和3(1928)年に「町立伊万里図書館」が開館しました。
 蔵書数はわずか159冊で、借りるには1冊5銭の料金がかかりました。館内には次のような標語が掲示されて読書意欲を鼓舞していたそうです。「真の文化は図書館を背景とす」「一日読まざれば一日遅る」「無知は読まざる報いなり」など、高圧的ですが説得力のある言葉ですね。
 また「登館者の心得」には、入退出時は脱帽・敬礼。室内では静粛に。不規律・喧噪(けんそう)は互いに戒め合う。などのルールが10項目挙げられていました。図書館で本を読むということが、余暇の善用だけでなく徳育の面を重視していた時代性が伺えて興味深いです。資料については、年々充実に努め10年後には3000冊に達し、現在は42万点を超えています。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年2月9日付「いすの木のもとで」より>

読書のマナー

 本が返却されると図書館員は、まずページをパラパラとめくってチェックします。個人のしおりやカードが挟まっていたり、時にはピーナツの皮がペチャンコになっていたりするからです。下線や落書きもあるので、消しゴムは必需品です。
 そんな図書館員からお願いです。誤ってページが破れたり、外れたりした場合は、決してセロハンテープで補修はせずに、そのままカウンターまでお持ちください。傷んだ本を直したいという温かい気持ちは図書館員が受け継いで、専用の道具を使ってしっかり直します。
 ただし、コーヒーなどをこぼして修復不可能の場合は、弁償していただくこともあります。つまり、図書館の本は公共物ですので、丁寧に扱っていただきたいのです。机の上で読む。唾をつけた手でめくらない。飲食しながら読まない。ページの角を折らない。クリップを使わない。マナーを守って今年も読書を楽しみましょう。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年1月12日付「いすの木のもとで」より>

令和6(2024)年 新年のごあいさつ

 新年が明け、元日に発生しました令和6年能登半島地震により、亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。また、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げ、一日も早く平穏な日々に戻る事をご祈念申し上げます。

 旧年中は、伊万里市民図書館をご利用いただき、誠にありがとうございました。
 おかげさまで昨年は、図書館☆(ほし)まつりが、通常どおりの規模と方法で開催されたり、さまざまな市民活動に図書館をご利用いただいたりして、コロナ禍で停滞していたコミュニティづくりを大きく進めることができました。また、長年の懸案だった空調機器の更新工事も完了までの目処が付き、快適な読書環境を提供できるようになりました。
 たとえ、世の中がどんな状況下にあっても、図書館は皆さんの知的自由を確保する生涯学習の拠点であり続けたいと願っています。本を読むことや、学んで行動を起こすことによって、一つひとつの問題を、夢や希望に転換することができると信じて、今年も職員一同、図書館サービスの充実に努めてまいります。

 なお、昨年もたくさんの企業や団体・個人の皆様から、寄附やボランティア活動を行っていただき、心から感謝申し上げます。まさに、市民との協働のもとに成長を続ける図書館であることを、実感する機会が多い一年でもありました。

 どうぞ本年も、伊万里市民図書館をよろしくお願い申し上げます。皆様のご利用を心からお待ち申し上げております。

(館長 鴻上哲也)