「自分が生まれる前からあったのに、古さを感じることがない図書館が大好きです」「いくつも図書館にはお邪魔しましたが、『住みたい』と思ったのはここだけでした」
いま、館内のいたるところに、このようなメッセージが掲示されています。これは、開館30周年記念事業実行委員会の取り組みの一つ「一筆啓上 市民図書館へ想(おも)いを込めて」に市の内外から寄せられた声です。図書館員にとって極めてありがたいエールですが、同時に身の引き締まる叱咤(しった)激励でもあります。
市民図書館は、長年にわたって市民一人ひとりにかけがえのない思い出や、出会い、学び、そして人とつながる機会と場を提供してきました。図書館は、ただ単に本を借りたり読んだりするだけの場所ではなく、これらの活動が幾重にも交わることによって、「地域の知の拠点」と呼ばれるようになるのでしょう。
(統括管理者 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和7年8月1日付「いすの木のもとで」より>
子どもにとって最も身近な読書環境。それは、学校図書館ではないでしょうか。学校数が多い当市では、以前から市民図書館が自動車図書館による巡回配本や、司書の派遣を通じて、資料の充実や環境整備の支援などに積極的に取り組んできました。
でも、市民図書館は社会教育施設ですので、学校からの要請がないと出動できません。そこで、本年度から教育委員会の学校教育課内に「学校図書館連携室」が設置されました。
主な連携先はもちろん市民図書館。これにより、教育委員会を挙げて子どもの読書推進に取り組み、豊かな情操を育むことはもちろん、読解力や表現力の向上に学校が市民図書館と連携して主体的に取り組むことが期待されます。
教育行政組織の改編としても画期的なことで、今後の動向に大きな関心が寄せられています。
(統括管理者 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和7年7月4日付「いすの木のもとで」より>
伊万里市民図書館は、7月7日に開館30周年を迎えます。この節目の年を記念する事業について、市民有志で実行委員会を組織して、昨年から計画と準備を進めてきました。
その第1弾として先日、政治学者の姜尚中(カンサンジュン)さんの特別講演会を盛会裏に開催したところです。この後も年間を通じて「図書館伊万里塾」など、市民の読書意欲を満たすとともに、図書館や本が身近にある豊かな暮らしを実感していただこうと考えています。
一般に、図書館の3要素は「一に資料、二に職員、三に施設」と言われます。伊万里市民図書館は、もう一つ「市民」を加えた4要素で成り立っているところが特色です。図書館を船に例えれば、資料と職員と施設は帆。市民は風です。これからの時代、伊万里市民はどのような風を吹かせて「図書館号」を進めようとするのでしょうか? 新たな航海が始まります!
(統括管理者 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和7年6月6日付「いすの木のもとで」より>
自分が大切にしたい言葉「座右の銘」には、偉人の名言や故事成語、本の中の教訓めいた箴言(しんげん)が使われることが多いですが、先頃、ある箴言集が当館に寄贈されました。
『冬麗(とうれい)の微塵(みじん)』と題されたこの小冊子は、大手新聞社を退職後、当時の市長に請われて当館建設構想の陣頭指揮にあたられた森田一雄氏が昨年100歳で亡くなられた後、氏を慕う有志の方々によって作られ、先月行われた「偲ぶ会」の出席者に配布されたものです。
内容は、稀代の読書家だった氏が晩年に書き留めておられたもので、多くの哲学者や文人らの生き方・死に方の教えに満ちた珠玉の言葉にあふれており、それは同時に氏の生きざまとも重なります。
「静かな眼 平和な心 その外に 何の宝が世にあろう」冊子の冒頭に掲げられた三好達治の言葉です。本を読みながら物事を深く考えることの大切さを現代人に呼び覚まさせてくれるこの箴言集は、当館でどなたも読むことができます。
(統括管理者:鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和7年5月9日付「いすの木のもとで」より>
伊万里市出身の詩人・作家で歯科医師の片岡繁男(1915~2010年)は、自分に文学の指導をしてくれた師は伊万里の山河である、と常々語っていたそうです。
確かに彼の作品には、故郷、伊万里の歴史や風土が脈々と息づいており、年配の方には郷愁を誘い、若い人には自分と他者とのかかわりを教えてくれます。また、市内の多くの学校の校歌を作詩しており、まさに生涯を通じて「伊万里を生きた」文学者です。
このほど、小説・詩・エッセーなど、彼の多彩な作品を集めた著作集の第1巻が完成し、ご家族から当館に寄贈されました。最近は、郷土出身の作家や偉人を観光やにぎわい創出に利用する自治体が多いですが、単に顕彰するだけでなく、郷土の文学者の作品を読み味わうことが地域の文化基盤を育み、これを未来の世代へと継承していく営みになるのではないでしょうか。
(統括管理者 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和7年4月11日付「いすの木のもとで」より>