先日、ある大学の先生が民間企業の指定管理で運営されている図書館と、公設公営の当館の両方を視察された後、「どちらが善でどちらが悪という見方ではなく、別の軸で見るべきだと思っている」との感想をいただきました。
今の時代はあらゆる面で「多様性」が尊重されます。公共図書館についても、画一的な捉え方でなく、どんな目的で設置されているのかを知ることが大切です。
伊万里市民図書館は条例で「すべての市民の知的自由を確保し、文化的かつ民主的な地方自治の発展を促すため」とうたっており、現在いうところの多様性も担保されています。
この目的を達成するために、運営形態・蔵書構成・職員体制・事業内容などが適切かどうか検証することが大切だと考えています。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年7月11日付「いすの木のもとで」より>
「インクルーシブ教育」という言葉が学校でよく使われます。障がいのある人もない人も、自分の能力を最大限に伸ばし効果的に社会参加できるよう、ともに学ぶ仕組みのことです。
図書館でも通称、読書バリアフリー法の施行(2019年)を受けて、さまざまな障がいがあっても読書を楽しめるように環境を整え、資料を整備することが求められています。
目が見えない、文字や絵を認識することが難しい、本を持ったりページをめくったりすることが難しい、小さな文字が読みづらいなど、さまざまな理由で読書が困難な人々に向けて、最近ではその特性に応じた読みやすい形式の本や新しい道具が出版・開発され、手軽に利用できるようになりました。
詳しくは、お近くの図書館にお尋ねください。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年6月14日付「いすの木のもとで」より>
ある日、職員が「本を1冊探してお渡ししただけなのに、『忙しい中すみません』と言われました。当然のサービスなんですが…」と戸惑い気味に話しました。
図書館員は、利用者が困ったときに手伝えるよう、日頃からさまざまな研修を重ねています。お探しの本を見つけたり、参考になりそうな本を紹介したりすることは図書館の大切な仕事です。どうぞ恐縮なさらず、気軽に図書館員にお尋ねください。
最近は、パソコンやスマートフォンの普及によって、分からないことを人に尋ねたり、本で調べたりすることが少なくなりました。ネット検索は便利ですが、書名や人名がうろ覚えだと一苦労します。
そんな時でも、ベテランの図書館員は漠然としたキーワードから複数の資料候補を紹介できます。何より、人を介することの温かさと安心感が魅力です。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年5月16日付「いすの木のもとで」より>
昨年度、市民との協働で開催した伊万里ミントカレッジでは、毎回の講演の後に司書がテーマに関連した本を5冊程度紹介する「ブックトーク」をセットにしました。
参加者からは「講演も素晴らしかったけど、ブックトークも良かった!」との声を多くいただきました。現に、紹介された本は競うように借りられていきました。
司書は事前の準備として、聞き手の関心は何か?何をどこまで語るか?などについて入念に計画します。聞き手の読書意欲を起こすのに大切なことは、知識を与えるのではなく、読書の喜びを分かち合うという姿勢で臨むことです。
当館の司書は、この分野でも百戦錬磨です。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年4月18日付「いすの木のもとで」より>
3月11日、ウクライナ北部の都市チェルニヒウの図書館が、空爆により破壊されたとCNNが報道しました。さらにアメリカ国営放送は、フェイスブックで「壊れた窓から破損した本や本棚が見える」と動画を投稿しています。戦火は、生活に身近な図書館にも迫っていました。
日本図書館協会は、ウクライナに関する声明の中で「人びとの生命を尊重し、表現の自由と知る自由を守り、もって平和と民主主義に資し、豊かな文化遺産を保護することは、私たちの社会にとって極めて重要な図書館の役割です」と、果たすべき使命を述べています。
利用者の幸福と平和を愛し、民主主義の砦と言われる図書館で、いま、何ができるのでしょう。すべての人に自由で公平な資料と情報を提供するために、そして一日も早く、安心して幸せに暮らせる春が訪れることを願い、私たち図書館員は、本を並べています。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年3月21日付「いすの木のもとで」より>