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図書館に行きたい!

 ある小学校の先生が、受け持ちの6年生の子どもから「図書館に行く時間がありません!」と「怒られた」そうです。教師の忙しさはよく話題になりますが、同じくらいに子どもたちも多忙な時間を学校で過ごしています。
 休み時間はトイレや給水、次の準備をしているとあっという間に過ぎますし、楽しいはずの昼休みは、運動会や修学旅行などの学校行事の準備や練習が入ることが多く、特に高学年は自由な時間が取れません。教科の授業時間を確保するため、昔は週に1回あった図書の時間が多くの学校で消えました。
 この子どもは図書館に行きたいのに、その時間が取れないことへの正当な抗議を行ったのです。これに対して担任の先生は、週に1回、朝のホームルームの時間に、クラス全員で学校図書館に行くことを決めてくれました。おかげで、そのクラスの子どもは、本を借りに行く時間が確保され、読書量も増えているそうです。
 ステキな判断をされた先生と、本を読みたい子どものピュアな行動に拍手を送ります。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年5月31日付「いすの木のもとで」より>

目が滑る

 「目が滑る」という言葉をご存じですか?集中力を欠いた状態で本を読んでいると、同じ行を何度も読んでみたり、逆に飛ばしたりすることがあります。そのように、内容が頭に入ってこない状態を表す新しい言葉で、時折ネットなどで目にしますが、まだ当館の国語辞典には採集されていませんでした。
 ところで図書館の業界では、書架に置かれた本の並びを見て、読みたい本が目に入ってこないことを「目が滑る」ということがあります。つまり、読みたくなるような本が書架にない、または読みたいと思わせる並べ方をしていない時に使われます。
 図書館は、通りすがりの方が思わず読みたくなるような本を選んで購入します。さらには、来館者が食指を伸ばすような本を効果的に並べる技術も駆使しています。ですから、「目が滑らない」ような書架の収集と展示ができているか、ぜひ近くの図書館に確かめに来てください。
 万が一、読みたい本が見つからなかった場合は「目が滑って選べなかったよ」と一言残していかれると、司書のプロ根性に火が付くはずです。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年5月3日付「いすの木のもとで」より>

寄付の広がり

 図書館には、多くの個人や企業・団体から寄付が寄せられます。毎年、新しい絵本をセットで寄贈してくださる団体もあれば、企業の社会貢献や故人の香典返しなど、その形態や規模はさまざまです。図書館には貴重な資料が豊富にあるので、そこに寄付することは文化の普及と地域の振興に直接貢献できると考えられるからでしょう。
 また最近では、特定のプロジェクトに参画する意義を強調したクラウドファンディングも盛んに行われています。災害支援や人道支援の寄付が広がり、かつてのように寄付は意識の高い人が行うものという偏見はなくなりました。自分にできる範囲での寄付行為や社会貢献が、地域社会に広まりつつあります。
 このような「寄付文化」は、地域全体で社会的課題の解決を支える重要な要素となります。ひるがえって図書館側としては、「寄付をしたい」「協力したい」と思ってもらえるよう成長することが大切なのは言うまでもありません。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年4月5日付「いすの木のもとで」より>

音読教室

 読書をしていると、美しい言葉や感動的なセリフ、言葉のリズムなどに引かれて、思わず声に出して読みたくなることはありませんか?だれにも邪魔されず一人、本の世界に入り込める至福のひとときです。
 伊万里市民図書館で行われている人気の事業に「いきいき音読教室」があります。毎月20人ほどの参加者が、文学作品の名文や有名な詩歌などを、朗々と読み上げておられます。また、職員が講師となって市内の団体や施設を訪問して行う出張音読教室も好評です。マスク生活が長引き、大きな声を出す機会が少なくなったことへの反動かもしれません。
 音読には(1)脳の活性化と認知機能の改善(2)ストレスや不安の軽減(3)コミュニケーション能力の向上-などの効果が期待されると言われます。個人の成長だけでなく、社会参加にもつながる学びのスタイルです。音読を日常生活に取り入れることで、健康で充実した人生を送りませんか。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年3月8日付「いすの木のもとで」より>

図書館に歴史あり

 どの図書館にも歴史があります。伊万里では、昭和天皇の即位御大典の記念事業として、昭和3(1928)年に「町立伊万里図書館」が開館しました。
 蔵書数はわずか159冊で、借りるには1冊5銭の料金がかかりました。館内には次のような標語が掲示されて読書意欲を鼓舞していたそうです。「真の文化は図書館を背景とす」「一日読まざれば一日遅る」「無知は読まざる報いなり」など、高圧的ですが説得力のある言葉ですね。
 また「登館者の心得」には、入退出時は脱帽・敬礼。室内では静粛に。不規律・喧噪(けんそう)は互いに戒め合う。などのルールが10項目挙げられていました。図書館で本を読むということが、余暇の善用だけでなく徳育の面を重視していた時代性が伺えて興味深いです。資料については、年々充実に努め10年後には3000冊に達し、現在は42万点を超えています。 (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年2月9日付「いすの木のもとで」より>