カテゴリ:いすの木

愛郷の詩人、片岡繁男

 伊万里市出身の詩人・作家で歯科医師の片岡繁男(1915~2010年)は、自分に文学の指導をしてくれた師は伊万里の山河である、と常々語っていたそうです。
 確かに彼の作品には、故郷、伊万里の歴史や風土が脈々と息づいており、年配の方には郷愁を誘い、若い人には自分と他者とのかかわりを教えてくれます。また、市内の多くの学校の校歌を作詩しており、まさに生涯を通じて「伊万里を生きた」文学者です。
 このほど、小説・詩・エッセーなど、彼の多彩な作品を集めた著作集の第1巻が完成し、ご家族から当館に寄贈されました。最近は、郷土出身の作家や偉人を観光やにぎわい創出に利用する自治体が多いですが、単に顕彰するだけでなく、郷土の文学者の作品を読み味わうことが地域の文化基盤を育み、これを未来の世代へと継承していく営みになるのではないでしょうか。

(統括管理者 鴻上哲也)

 

<佐賀新聞 令和7年4月11日付「いすの木のもとで」より>