コラム

図書館の郷土資料

 秋祭りのシーズンを迎えますが、残念なことに今年も中止や縮小を余儀なくされている所が多いようです。非日常の演出で、連帯感や自己存在感を味わえる祭りは、地域にとっても個人にとっても欠かせない行事です。
 参加できない時には、祭りの由来を辿りながら、郷土の歴史に触れてみてはいかがですか。どの図書館にも郷土資料のコーナーがあり、地域のシンクタンクとして必要な情報が収集されています。
 伊万里市民図書館では、「歴史と風土」「文化をつくる」「自然と産業」「社会をつくる」といった4つのテーマで分類しています。貴重な資料もご利用できますので、図書館員にお尋ねください。図書館の郷土資料は、地域文化のバロメーターなのです。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和3年10月4日付「いすの木のもとで」より>

95歳のヘビーユーザー

 今日20日は敬老の日。伊万里市民図書館が誇る最強のヘビーユーザーをご紹介します。
 白い三輪スクーターでさっそうと来館されるKさん(男性)は大正生まれの95歳。累計の貸出冊数は、なんと3万3263冊!
 腰は曲がっても、本を選ぶときの目は真剣そのもの。メガネをかけ直して主に小説の書架を巡りながら、毎回20冊ほどを借りて行かれます。
 ベテランの図書館員とは、下の名前で呼び合うほどの仲の良さです。少し耳や足がご不自由ですが、優しい瞳の輝きと、穏やかでしっかりとした話しぶりは、「生涯読書」が心の健康と豊かさをもたらすことを証明しているかのようです。いつまでもお元気で!(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和3年9月20日付「いすの木のもとで」より>

読書するほど高い認知機能

 先日、興味深い調査結果が発表されました。国立青少年教育振興機構が全国の20代から60代の男女5000人を対象に行った「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」です。
 それによると、①子どもの頃の読書量が多い人ほど、認知能力(情報を一時的に記憶する力)が高く、②本(紙媒体)で読書している人ほど、自己肯定感や批判的思考力・主体的行動力が高い傾向にあるそうです。昔から「本を読むと頭が良くなる!」と言われてきましたが、その一部が実証されたことになります。
 ちなみに、1ヵ月に1冊も本を読まなかった人は、年代に関係なく増加した(5年前と比べて20ポイントも!)という結果も出ていました。子どもに「読みなさい」という前に、まずは大人ですね。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和3年8月23日付「いすの木のもとで」より>

調べるときは、本? ネット?

 ちょっと分からないことがあると、すぐにスマホで調べられる便利な時代です。夏休みの自由研究でも大活躍でしょう。
 ところで、調べる方法は「本か?」「ネットか?」が時々話題になります。図書館としては、もちろん本を「推し」ていますが、情報収集の手段としてネットには優れたところがありますので、ぜひ使い分けてほしいものです。
 そして、調べる際にはなるべく「人」に尋ねることをお勧めします。親・先生・司書・施設職員などからの意見を加えると、さらに考えが深まります。人や本から学んで、自分で考えたことをまた人に伝える。相手を意識することで、思考力や表現力が高まるのです。
 今年も、伊万里市では市内の小学生を対象に「図書館を使った調べる学習コンクール」を開催します。詳しくは、図書館にお尋ねください。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和3年7月26日付「いすの木のもとで」より>

開館26周年を迎えました!

 伊万里市民図書館が開館26周年を迎えました!
 全国各地に魅力的な図書館が続々と誕生する中、当館が長い年月を経ているにもかかわらず、依然として市内外からの注目や関心を集めていることについて、多くの人々から不思議がられます。
 しかし、この理由は明快です。1つめは、計画や建設の段階から市民と行政が二人三脚で取り組み、完成後も市民との協働を貫きながら図書館運営に取り組んできた稀有な歴史。2つめは、司書の高い専門性に裏打ちされた上質な図書館サービスと、それを楽しむ市民の民度の高さ。3つめは、建築物としての美しさと、細部までこだわりぬかれた機能的な設備の数々です。
 そして、26年を経過した現在でも色褪せることなく、これらの特色に絶妙なアレンジを加えながら維持・発展していることに、多くの感嘆の声が寄せられているのです。実にありがたいことです。
 これからも伊万里市民図書館が、ますます皆様から愛され、発展していきますよう、そして、図書館を利用してくださる皆様の生活がより豊かになりますよう、職員一丸となって一層の努力を続けて参ります。

「密」にならないイベント

 7月7日は、伊万里市民図書館26年目の開館記念日です。今年も、大勢の皆さんに集まっていただく「図書館☆(ほし)まつり」は開催できませんが、有志の皆さんと職員で話し合い、代替イベントとして「天の川としょかん」を開催することにしました。
 ホールを宇宙に見立てて、天の川の上に宇宙やロマンス関連の本をたくさん並べます。参加者はめいめい好きな本を借りたら、その場所にメッセージを書いた星型カードを置きます。11日までの期間中には願い事いっぱいの天の川が完成する予定です。
 「密」にならなくても、本でつながる人の温かさを感じられるイベントをめざしています。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和3年6月28日付「いすの木のもとで」より>

偶然の本との出会い 人生をより豊かに

 図書館の書架の間を歩いていると、思いがけない本や忘れられない本と巡り合うことがよくあります。
 インターネットを使えば、欲しい本がすぐに手に入る時代ですが、自分の経験とカンを頼りに面白そうな本を探す。特に目的もなく、ゆっくり時間をかけて、本の森を散策するのは、ぜいたくな休日の過ごし方とも言えるでしょう。
 今でこそ、読書の好みが確立している人も、最初は友達から紹介してもらったり、立ち読みした作家にハマったりしたところから始まったのではありませんか?
 偶然の本との出会いが、あなたの人生をより豊かなものにするかもしれません。本とのときめく出会いを、図書館でお楽しみください。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和3年5月31日付「いすの木のもとで」より>

図書館と“DX”

 最近よく目にする「DX」という言葉。これは、デジタルトランスフォーメーションを略したもので、簡単に言えばITの浸透が人々の暮らしをより良い方向に変化させることです。
 伊万里市民図書館には、「おすすメール」というサービスがあります。あらかじめ、好きな著者名や興味のあるキーワードを複数登録しておけば、その条件にピッタリの新着図書があった場合にメールでお知らせするというシステムです。仕事や趣味に関する図書、お気に入りの作家の新刊情報を手軽に入手できます。
 コロナ禍の中、図書館における「DX」はますます加速化する可能性があります。身近な図書館を、もっと便利に使いこなしたい方は、どうぞ図書館員にご相談ください。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和3年5月3日付「いすの木のもとで」より>

※この記事と一緒に掲載されていた写真のキャプションで「大坪保育園」とあるのは「伊万里保育園」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

ブックスタート事業

 NPO法人やベンチャー企業、自治体などが社会貢献性の高い事業を行う際に、クラウドファンディングで資金を調達することが増えています。
 現在、伊万里市では市内の赤ちゃんに絵本を贈って親子で読み語りを体験してもらう「ブックスタート事業」について、コロナ禍の中で再開するために寄付をお願いしています。
 税金控除のほか、市外に住んでいる人であれば、寄付額に応じた市の特産物を返礼品として受け取ることができますので、新しいボランティアの形として協力してもらえると幸いです。
 詳しくはQRコードからホームページを開くか、伊万里市民図書館、電話0955-23-4646まで問い合わせしてください。(館長 鴻上哲也)

QRコード

<佐賀新聞 令和3年4月5日付「いすの木のもとで」より>

経過報告とご支援のお礼

 伊万里に生まれてきてくれた赤ちゃんに、愛とぬくもりに満ちた時間を絵本とともに過ごしてもらうブックスタート事業への寄附を集める「ガバメントクラウドファンディング」を開始して1ヶ月が経ちました。この間、多くの皆様から寄付の申し出や問い合わせをいただき、誠にありがとうございます。お寄せいただいた寄付金額も、3月19日時点で目標額100万円のおよそ3分の1(32万5千円)となりました。
 来館してご寄附いただいた方にお話を伺うと、「図書館にはいつもお世話になっているから」とか、「昔、ブックスタートのボランティアをやっていたから」、「香典返しで社会へのお礼をしたいから」、「クラウドファンディングに興味があったから」など、様々な理由を聞かせていただきます。いずれの方からも未来を担う赤ちゃんへの愛が感じられ、呼びかけをお願いする者としてありがたさと同時に身の引き締まる思いがします。
 募集期間は残り2ヶ月となりました。引き続き、寄附という形でのボランティアへの協力をお願いして参ります。あなたの温かいお志をお待ちしています。また、市外にお住いの方は返礼品もお受け取りいただけますので、ご家族やお知り合いへご紹介いただくと幸いです。

「ブックスタート事業のGCFにご協力ください」ページへ

ちょっといい話

 ちょっといい話を耳にしました。当館の職員が所属している社会人の読書グループに、新しく高校生が入会した時のことです。
 「先輩」たちの読書量に圧倒されたその生徒が「まだ全然、本を読んでいないので恥ずかしいです」と言ったところ、メンバーのお一人が「うらやましいなあ。それはまだこれからたくさん楽しみがあるってことだよ」と返されたそうです。
 若者の読書離れがよく問題になりますが、本を読んでいないという子どもに「頑張って読みなさい」ではなく、こんなかっこいい言葉掛けができる大人って素晴らしいですね。身近な大人は、子どもにとって最も影響力の強い読書環境です。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和3年3月8日付「いすの木のもとで」より>

「友の会」フレンズいまり

 図書館にはボランティアの方が、さまざまな分野で関わってくださっています。伊万里市では、建設計画の段階から市民と行政の「協働」で取り組まれてきたので、現在でもイベントや環境整備、清掃美化、広報PRなど、図書館の運営はボランティア抜きに語れません。
 さらに、各種ボランティア団体の緩やかなネットワークのもとに、図書館の活動への「協力と提言」を行う「図書館フレンズいまり」という、いわば「友の会」も組織されています。一定の緊張関係を保ちながら、図書館活動を共に楽しむパートナーが存在することによって、市民はより豊かな図書館ライフを満喫できるのです。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和3年2月8日付「いすの木のもとで」より>

令和3(2021)年 新年のごあいさつ

 新年あけましておめでとうございます

 旧年中は、伊万里市民図書館をご利用いただき、誠にありがとうございました。
 見えない敵との1年間は、できる限りの感染防止対策をとりながら、公共図書館としてのサービスに努めてまいりました。現在も一部の利用制限などにより、ご不便をおかけしていますが、皆様のご理解とご協力をいただいておりますことに、館員一同重ねて感謝申し上げます。

 このコロナ禍によって、はからずも私たちは急激な変革の時代に生きていることを再認識しました。 これまで経験したことのなかった新たな習慣や文化にも、適切に対応していくことの大切さも痛感し、 行動を起こしてもいます。しかし、それと同時に変えてはならないもの、失ってはならないことへの思いも深くしています。
 どんな状況にあっても、図書館は利用者の皆様の知的自由を確保し、民主主義の砦となる存在であり続けるために、今年もより一層努力して参ります。
 しばらくはWithコロナでの図書館サービスを継続することとなりますが、さらなるご協力をお願い申し上げます。

 どうぞ本年も、皆様の伊万里市民図書館をよろしくお願い申し上げます。
 職員一同、皆様のご利用を心からお待ち申し上げております。

(館長 鴻上哲也)

今年も「本の福袋」

 この時期、多くの図書館で「本の福袋」が人気です。当館でも、15日から大人用と子ども用に分けてそれぞれ70セットずつを提供しています。
 今年は、感染症対策で①テーマの書かれたカードを提示②気に入ったカードを取ってデスクに提出③個別包装の福袋と引き換え―といった流れでお渡しします。袋の中には、図書館員お薦めの本が3~5冊。ご愛顧に感謝してささやかなプレゼントも入れています。
 好きなジャンル以外の本って、なかなか手が伸びませんよね。あなたと新しい本との出合いを願う、遊び心の企画の一つです。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和2年12月15日付「いすの木のもとで」より>

アクセス自由のネット図書館

 「青空文庫」ってご存知ですか?著作権が消滅した作品や、作家が「自由に読んでもらってかまわない」とされたものなど、約1万5000点以上の作品が収録されているインターネットの図書館です。
 パソコンやスマホなどで、誰でも自由にアクセスでき、作家別・作品別・分野別で簡単に検索して、無料(通信料のみ)で読むことができます。この活動は、原稿の入力や校正など、すべてボランティアの力で成り立っています。
 ホームページには「多くの人に、快適に作品を味わい、自由にファイルを使ってもらうことは、この場を整えている私たちの願いです」と記してありました。外出がはばかられる時は、「青空文庫」(https://www.aozora.gr.jp/)を活用されてみてはいかがですか。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和2年11月16日付「いすの木のもとで」より>

付箋の「ピカリン」完成

 本来なら7月7日の開館記念日に、25周年の記念イベントを行う予定でしたが、中止を余儀なくされましたので、「おめでとうdeアート」への協力を、7月初めから利用者の皆さんにお願いしていました。
 お祝いのメッセージを付箋(ふせん)に書いて台紙に貼り付けるものです。付箋は毎日少しずつ増えていき、8月16日、一組の親子が最後の3枚を書いて見事完成しました。離れて見たら、市民図書館のイベントマスコット「ピカリン」の楽しげな姿ですが、一枚一枚の付箋には、感謝や思い出、希望、決意などの言葉がそれぞれ書かれています。
 今年は、人が集まることこそできませんでしたが、図書館を愛する皆さんの心が一枚の大きなアートになりました。また一つ、図書館の宝物が生まれたように思います。皆さんのまちでも、図書館の「誕生日」をお祝いしておられますか?(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和2年8月24日付「いすの木のもとで」より>

図書館員の力

 私が利用者だった頃の話です。ある本を探すため、膨大な量の本の前で右往左往していました。とうとう探し疲れて司書に尋ねると、ほんの数分で見つけ出してくれました。
 また、ある問題について調べ物をしていた時も、司書に相談すると関連資料を4、5冊即座に見繕ってくれました。その上、所蔵していない本は、他の図書館から取り寄せてくれました。
 図書館は、たくさんの本があるだけで十分魅力的な施設です。しかし、図書館員の力を借りると、さらにその価値が高まります。ネット検索と自宅配送が主流になってきた現代でも、わざわざ図書館まで足を運んでくださる皆さんとすてきな本との出会いのために、私たち図書館員は働いています。
 どうぞ気軽に声を掛けてください。(館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和2年7月27日付「いすの木のもとで」より>

最小投資で最大効果

 昨年度末から現在に至るまで、新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、皆さまには何かとご不自由・ご不便をおかけして申し訳ありません。マスク着用や座席間隔などさまざまな制限をお願いしていますが、快くご協力いただきありがとうございます。また、中には「大変ですね」「ご苦労様です」とあたたかい言葉をかけてくださる方もおられて、大いに励まされています。あらためてお礼申し上げます。まだしばらくは、警戒を緩めるわけにはいきませんが、皆さまの安全・安心を確保して図書館サービスができるよう努めてまいりますので、引き続きご協力いただきますようお願いします。

 さて、伊万里市民図書館は今年で開館25周年を迎えました。当時の資料を読み返していると、開館の1年前、職員と市民の代表5人がアメリカまで図書館の先進地視察へ出かけておられました。かなり気前の良い時代であったとはいえ、図書館づくりにかける市民の熱い思いがバックにあったことは疑いのないところです。その報告書の中の一文に目が留まりました。そこには「アメリカでは、本は図書館から借りて読むもの」というのが常識だということが記されていました。

 今や、インターネットを使えば1日で新刊が自宅に届く時代。わざわざ、図書館にまで足を運んで本を借りるという人は、もう珍しいのかもしれません。ある常連さんに月に何冊くらい読まれるのか尋ねると、「10冊くらいですかね。」との返事がありました。読書家にとっては必要な自己投資であり、生きがいでもあるだけに、このペースはくずせないでしょう。とはいえ、読みたい本を全部購入するとしたら、たいそうな出費です。1冊平均2,000円ぐらいとしても、月に20,000円、年間では240,000円もかかります。しかし、市民が払った税金で図書館は運営されていますので、伊万里市民は読書に関しては最小の投資で最大の効果を得ていることになります。むしろ、使わないでいるのはあまりにもったいない話です。

 当館所蔵の約39万冊はすべて市民のものです。人間でいえば今年で25歳となって、青年から大人へと成長を続ける伊万里市民図書館を、これからも皆さまのくらしのお役に立たせてください。

(館長 鴻上哲也)