ネット時代の図書館

 「人間は考える葦(あし)である」とは、パスカルの有名な言葉ですが、インターネットの普及以来私たちは、ちょっとわからないことがあってもすぐに答えを見つけられるようになりました。
 しかし、検索で得た正解は、自分で考えて出したものではありません。考えるために欠かせない条件は、だれかが書いたものを読んだり、だれかと議論したり、まとめて書いたりすることです。
 実際、図書館では、読書会やワークショップ・懇談会・グループ学習会など、さまざまな人々が話し合いながら、思索を深める活動が多く行われています。先日も、環境問題と図書館の関係について市民と行政が議論する機会がありました。
 図書館の存在意義は本を読むだけでなく、このような場を通じて、自由と民主主義が担保されることにあるのではないでしょうか。「考える市民になるためにこそ、公共図書館は存在する」(前川恒夫著『図書館の発見』より) (館長 鴻上哲也)

<佐賀新聞 令和6年9月20日付「いすの木のもとで」より>