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おすすめの本
『だから夜は明るい』  
君嶋 彼方/著  新潮社

 同性同士で付き合っている、西澤祥太と柏木文也。文也は同性愛者ですが、祥太は少し前まで、異性愛者でした。文也は自分と付き合ったことで、結婚して子供を儲けるという幸せな家庭を築く将来を奪ったのではないかと思う毎日。祥太は気にしていない様子ですが、本心が今一つわからず…。
 祥太の元彼女や後輩、父親などそれぞれの立場からの心情が描かれている連作短編集です。当事者はもちろん、当事者以外からみた意見や想いは苦しく切ない気持ちになります。
(A.S)
 
『水の戦争』

橋本 淳司/編  文藝春秋


 半導体を作るにも、SNSやAIを利用するにも必要とされる大量の水。それまでは社会の共有資源とされてきた水が、情報化社会の発展により、奪い合いの対象となっています。
 複数の国をまたがって流れる大河の上流国がダムを建造したことにより下流の国々と一触即発の危機に陥ったり、データセンターの建設をめぐって地域住民からの猛反発にあったり…。水が豊かな島国日本では想像しづらいような深刻な事態が、今まさに世界の各地で起きています。水をめぐる世界の混乱に、水ジャーナリストの著者が警鐘を鳴らす一冊です。

(S.S)
 
『変わり者たちの秘密基地国立民族学博物館』
ミンパクチャン/著  CEメディアハウス

 大阪の万博記念公園の敷地にある国立民族学博物館。通称「民博」と呼ばれ、世界中から集められた生活や儀式に使う道具、民具、民族衣装など約35万点を所蔵し、実際に触れる資料もたくさんある、世界最大級の博物館です。同時に、研究所でもあり、大学院の機能を併せ持つ存在です。
  民博ファンである著者が、博物館としての魅力はもちろん、そこで働く研究者たちに注目し、その実像を浮き彫りにしています。個性にあふれた民博の人々の人柄や、興味深い研究に引き込まれ、民博へ出かけたくなります。

(Y.O)
 
『目立った傷や汚れなし』
児玉 雨子/著  河出書房新社

 フリマアプリ「メチャカイ」で不要なものを出品する翠。夫からは「貧乏くさいからやめてほしい」と言われますが、その夫は訳あって休職中のため収入はゼロ…にもかかわらず治らない浪費癖に鬱憤は溜まっていく一方でした。
 とある日、安く仕入れた商品に付加価値をつけてフリマアプリで販売をする、いわゆる「せどり」サークルのリーダーに声を掛けられた翠。転売と紙一重の行為に初めは戸惑いますが、徐々に「せどり」にのめり込んでいきます。しかし、今後の運営を巡ってサークルに亀裂が入り…。
 価値の無い「物」と「者」は切り捨てられる運命なのでしょうか。

(A.K)
 
『印象派に恋して』
佐藤 晃子/著  ナツメ舎

 美しくて穏やかなイメージに人気が高い印象派の作品たち。その魅力を優しく解説する入門書です。「そもそも印象派って?」という素朴な疑問から出発し、水辺・暮らし・装い・子ども・食・四季の6つのテーマで代表的な作品を紹介しています。モネ、ルノワール、ゴッホらの人柄や創作背景も描かれ、美術の世界をもっと知りたくなります。美術鑑賞前の予習にピッタリの一冊です。
(T・K)
 
『星がすべて』
最果 タヒ/著  文藝春秋
 

 星座の物語といえば神話が思い起こされますが、本書は星座や月の詩を、愛する人へ送る恋文のように描き出しました。12星座など有名な星々だけでなく、著者が新たに生み出した架空の星座の詩や、詩と解説が交じったプラネタリウムのような場面があり、星が見えずとも宇宙を漂うような不思議な感覚に満たされます。
 また本書は詩だけでなく、エッセイや物語も含まれており、詩集の枠に収まらない一冊になっています。
 彼方の星々に思いをはせ、愛する人を想いながら読んでみてください。

(S.T)