ある日、職員が「本を1冊探してお渡ししただけなのに、『忙しい中すみません』と言われました。当然のサービスなんですが…」と戸惑い気味に話しました。
図書館員は、利用者が困ったときに手伝えるよう、日頃からさまざまな研修を重ねています。お探しの本を見つけたり、参考になりそうな本を紹介したりすることは図書館の大切な仕事です。どうぞ恐縮なさらず、気軽に図書館員にお尋ねください。
最近は、パソコンやスマートフォンの普及によって、分からないことを人に尋ねたり、本で調べたりすることが少なくなりました。ネット検索は便利ですが、書名や人名がうろ覚えだと一苦労します。
そんな時でも、ベテランの図書館員は漠然としたキーワードから複数の資料候補を紹介できます。何より、人を介することの温かさと安心感が魅力です。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年5月16日付「いすの木のもとで」より>
昨年度、市民との協働で開催した伊万里ミントカレッジでは、毎回の講演の後に司書がテーマに関連した本を5冊程度紹介する「ブックトーク」をセットにしました。
参加者からは「講演も素晴らしかったけど、ブックトークも良かった!」との声を多くいただきました。現に、紹介された本は競うように借りられていきました。
司書は事前の準備として、聞き手の関心は何か?何をどこまで語るか?などについて入念に計画します。聞き手の読書意欲を起こすのに大切なことは、知識を与えるのではなく、読書の喜びを分かち合うという姿勢で臨むことです。
当館の司書は、この分野でも百戦錬磨です。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年4月18日付「いすの木のもとで」より>
3月11日、ウクライナ北部の都市チェルニヒウの図書館が、空爆により破壊されたとCNNが報道しました。さらにアメリカ国営放送は、フェイスブックで「壊れた窓から破損した本や本棚が見える」と動画を投稿しています。戦火は、生活に身近な図書館にも迫っていました。
日本図書館協会は、ウクライナに関する声明の中で「人びとの生命を尊重し、表現の自由と知る自由を守り、もって平和と民主主義に資し、豊かな文化遺産を保護することは、私たちの社会にとって極めて重要な図書館の役割です」と、果たすべき使命を述べています。
利用者の幸福と平和を愛し、民主主義の砦と言われる図書館で、いま、何ができるのでしょう。すべての人に自由で公平な資料と情報を提供するために、そして一日も早く、安心して幸せに暮らせる春が訪れることを願い、私たち図書館員は、本を並べています。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年3月21日付「いすの木のもとで」より>
2月26日は伊万里市民図書館の起工式を記念した「めばえの日」です。
当館は構想の段階から、市民と行政が何度も学習と議論を重ねてつくり上げた「協働」のお手本と言われます。このやり方は、全ての公共施設について参考になると思いますが、図書館建設以外で視察を受けたことはほぼありません。
公共施設は貴重な税金を使って身近な土地に建つのですから、利用者の考えを反映したいものです。特にまちづくりや教育・福祉・文化に係る施設でしたら、施設が完成した後に、市民がどのように使いたいのか、どのように運営に参画できるのかを軸に考えるべきです。だから、行政主催の説明会で要望を発言するだけでなく、市民自身による「学習」が大事なのです。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年2月21日付「いすの木のもとで」より>
図書館は来館者に本を貸すだけでなく、お近くに本を届けるサービスも行っています。その代表格が自動車図書館。県内では四つの市で実施されていますが、図書館から離れた所にお住まいの方や交通手段が不便な方、体が不自由な方に喜ばれています。
また、学校や保育園、福祉施設などにも定期的に巡回して団体貸出を行うなど、身近に読書が楽しめるまちづくりにも一役買っています。
さらに伊万里市では、スマホで予約すれば近くのコミュニティセンターで受け取れるサービスも始めました。手の届く所に本がある暮らしってすてきですね。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和4年1月24日付「いすの木のもとで」より>
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は、伊万里市民図書館をご利用いただき、誠にありがとうございました。
私たちは、今まさに「Withコロナ」の時代を生きています。見えない敵との闘いも2年目ともなれば、正しく恐れて適切に行動していくことが少しずつ身についてきているように思います。実際、図書館でも昨年は、感染対策を配慮して新たに開発した事業や、やり方を工夫して実施した事業が多くありました。また、館内の集会室等を利用される団体の皆様も、細やかな配慮のもとにイベントを開催されるなど、それぞれ知恵と努力を重ねておられます。
さらに、昨年はたくさんの企業や団体・個人から、寄付や奉仕活動等のボランティアを行っていただき、誠にありがとうございました。伊万里市民図書館が、市民との協働のもとに成長を続けていることに、改めて感謝申し上げます。どんな状況下にあっても、図書館は利用される皆さんの知的自由を確保する生涯学習の拠点であり続けたいと願っています。現代のように人が集う事すら困難な時代だからこそ、市民と行政との協働によって、その使命を果たしてまいりたいと存じます。
どうぞ本年も、伊万里市民図書館をよろしくお願い申し上げます。職員一同、皆様のご利用を心からお待ち申し上げております。
(館長 鴻上哲也)
インターネットの百科事典ウィキペディアを利用している方は多いと思います。世界中のボランティアによって5500万項目以上の記事が作られています。
伊万里では、市内の文化財や人物・観光などについての記事を作成するボランティアを「イマリペディアン」と名付け、その養成セミナーを開催しました。高校生から高齢者までのメンバーがともに学び、その成果として「山ン寺遺跡」の記事を作成・投稿していますのでぜひご覧ください。
「調べてわかったことを、整理して発信する」。とてもシンプルですが、人が学ぶことの大切さが凝縮されていると思います。図書館を使った新しい学びの形といえるでしょう。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年12月27日付「いすの木のもとで」より>
図書館を使ってもっとワクワクしたい市民が集まって「伊万里ミントの会」が、今年発足しました。市民の「ミン」と図書館の「ト」で「ミント」です。
コロナに対抗して暮らしの中に学びと出会いを取り戻すため、リレー講演会「森羅万象物語」と、ウィキペディアに投稿する技術を学ぶ「イマリペディアンセミナー」を企画して参加者を募集されています。講演後のブックトークや文献調査を組み込んでいる点が図書館を活用した特色です。
図書館は、市民との協働で絶えず進化を続ける有機体であると言われますが、まさにそれを実体化した取り組みでしょう。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年11月29日付「いすの木のもとで」より>
「うちどく」ってご存知ですか?家庭での読書により親子のコミュニケーションを深める実践で、県内各地でさまざまな広がりを見せています。
伊万里市では黒川町が先進地ですが、先月「まちかど絵本館 えほんのたね」が始まりました。使われなくなった公衆電話ボックスに本棚を作り付け、町民から提供された絵本を配置し、いつでもだれでも自由に借りて読めるようにしたものです。町内8か所に設置されました。
子どもも大人も絵本に触れ合う機会を増やそうとボランティアの皆さんが企画され、行政との協働で実現しました。市民の皆さんの善意に支えられた「えほんのたね」が大きく育ちますように。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和3年11月2日付「いすの木のもとで」より>
多くの図書館で、年に1回程度、館内すべての本や雑誌等の所在や不備を確認する「蔵書点検」が行われています。今年度、当館では10月4日から11日まで休館して、全職員総出で40万冊を超える本との「格闘」の日々が始まりました。
現在1階の公開書架にとりかかっています。一人一台「メットセン」とか「ハンディ」とか呼ばれるバーコードの読み取り機械を使って、一冊ずつ本をなぞっていきます。早い人だと1時間で1,000冊という猛者もいますが、書架の高い所や低い所、絵本や図鑑などの大きい本などが集まっている所では、ベテランでも難儀します。
期間中、ご利用いただけないのはとても心苦しいのですが、この作業を通して、「あるべき所にお探しの本がある」使いやすい図書館が維持できるのです。しばらくの間、ご辛抱ください。