ブックトークをご存じですか?読み聞かせとは違って、本の一部を見せたり読み上げたりして、その魅力を紹介するものです。
学校などでも行われますが、伊万里市民図書館では大人対象の講演会などの後に、司書がテーマに関連した4~5冊の本を選び、自分の体験も交えながら10分程度でテンポよく紹介します。
「今まで読まなかったジャンルの本に出合える」と好評で、受講者の中にはこれが楽しみで参加しているという方もいらっしゃるほどです。司書にとっては、うまくいけば紹介した本全てを借りてもらえる達成感を味わえますが、その逆もありうる「勝負」の場でもあります。
聞き手の読書意欲を喚起することができるブックトークは、本に精通している司書の腕の見せどころです。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年9月15日付「いすの木のもとで」より>
図書館は本を貸し借りする以外にも、たくさんの機能があるのですが、あまり知られていません。そこで、伊万里市民図書館の「使わないともったいないサービスベスト5」をご紹介します。
第5位バリアフリー…さまざまな障がいに応じて読みやすく工夫された資料があります。第4位読書相談…読みたい本を探したり、ご希望に沿った本を紹介したりします。第3位おすすメール…好きな作家やキーワードを登録しておくと、ぴったりの新着図書をいち早くメールでお知らせします。第2位部屋貸し…生涯学習のために和洋大小さまざまな集会室を無料で利用できます。
そして堂々の第1位は、レファレンスサービス。専門の職員が、いろんな質問に本を使って答えたり、調査研究の参考になる資料を提供したりします。
サービス内容は各館によって異なりますので、ぜひ最寄りの図書館を使いこなしてください。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年8月18日付「いすの木のもとで」より>
一般に「読書」といえば、子育てや文化絡みで捉えがちですが、最近は「まちづくり」に読書を生かそうとする自治体が増えてきました。私たちが健康で幸福な生活を送るには、読書活動が有効であると考えられたからです。
以前から、読書のまちづくりに係る推進計画や宣言文を採択する所は多かったのですが、さらに一歩踏み込んで条例を制定した自治体では、学校や家庭だけでなく事業所を含めた地域ぐるみの取り組みを展開しています。
さまざまな施設や病院・飲食店などに図書館の本を置いたり、住民が寄贈した絵本を自由に利用できるボックスを設置したりして、本が身近にあるまちづくりが進められています。このような生活スタイルが定着して、自分の住む「まちの誇り」になっていくのでしょう。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年7月21日付「いすの木のもとで」より>
伊万里市民図書館は、今年で開館28周年を迎えます。その「誕生日」を祝い、本を通じて人と人を結ぶ「図書館☆(ほし)まつり」が、市民有志による実行委員会方式で毎年開催されています。
久しぶりの通常開催となる今年は、23の参加・協力団体が、広い館内のあちこちで音楽演奏、人形劇、読み語り、古本市、手作り品の展示・販売などを行います。今年のテーマは「心つないで☆まつり」です。
参加団体は趣向を凝らした出し物を提供するだけでなく、広報や進行・会計などの運営業務も分担して行います。まさに市民と行政との協働を象徴するような図書館イベントです。7月8、9日に開催予定です。どなたも、お気軽にお出かけください。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年6月23日付「いすの木のもとで」より>
2歳以下の赤ちゃんを対象にしたおはなし会「おはなし012」を3年ぶりに再開しました。前半は、天井に星空が投影されるのぼりがまの部屋で、司書とボランティアによる、手遊びと仕掛け絵本に「桃太郎」の素話。後半は、図書館専属の合唱団による童謡のミニコンサートでした。
赤ちゃんたちは、語り手の声や表情、合唱団の歌や動作を、じっと見つめたり、手足をばたつかせたりして反応していました。抱っこのぬくもりの中で安心して、言葉の響きやリズムを感じていたのでしょう。
実際、乳幼児と読書には、子どもの将来の読書やコミュニケーションの面と、保護者の育児ストレスの面でもよい影響があるという研究結果があります。乳幼児期ならではの本との出合いを大切に過ごしてください。今後も毎月第3木曜日の11時から行う予定です。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年5月26日付「いすの木のもとで」より>
先月、文部科学省が出した「第5次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の中で、本を月に1冊も読まない子どもの割合「不読率」を減らすことが基本方針の一番に挙げられていました。
この計画には、読書への関心を高める具体的な取り組みが多く紹介されていますが、最も効果が期待されるのは、「全校一斉の読書活動」ではないでしょうか。始業前に各自が好きな本を読む。たとえ10分でも1週間なら約1時間。ちょっとした本が読める時間です。
各教室には、市民図書館からセットで貸し出された本が、ほぼ月替わりで配本されています。大切な一冊との出合いがあるかもしれません。ところが最近、学習時間を確保するために朝の読書をやめる学校もあると聞きます。読書離れが進む中、学校での貴重な時間をどう使うかは、きわめて重要な問題です。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年4月28日付「いすの木のもとで」より>
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本が優勝した時のニュースの中で、多くのファンや選手、評論家が「漫画みたいで感動した」と話していました。ひと昔前まで「漫画みたい」という比喩表現は、「くだらない」「低俗な」という否定的なイメージで使われていました。しかし今回は、「想定をはるかにしのぐドラマチックな展開」のようなニュアンスでした。
近年、漫画は世界に誇る日本文化としての評価が高まっていますが、公共図書館における漫画自体の取り扱いはさまざまです。図書館の全国組織である日本図書館協会は、利用者の関心や心情に合うとともに一定の評価を得た作品を適正に選んで、自館の蔵書構成や予算を考慮して購入するよう求めています。当館では約2000冊のコミックを収蔵して貸し出しを行っています。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年3月31日付「いすの木のもとで」より>
2月26日は図書館建設の起工式を記念した「図書館めばえの日」です。毎年この日には図書館フレンズいまりの主催で「ぜんざい」を食べて、図書館の意義を考えてきましたが、今年は「夢語りの集い」が行われました。
子育て・福祉・まちづくりなどさまざまなジャンルの市民が、「こんな図書館だったらイイなあ」というイメージをオノマトペ(擬音・擬態語)で発表した後、具体的なアイデアまで示してもらいました。発言内容が一過性のもとに消えてしまわないよう、プロのファシリテーターが分かりやすくその場で視覚化しました。会場からもたくさんの意見が交わされ、市民運動から始まった伊万里の図書館づくりの熱気がよみがえったような時間でした。
「図書館は成長する有機体である」と言われますが、そのためには市民の声と行動が不可欠であることを再認識できた「めばえの日」でした。 (館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年3月3日付「いすの木のもとで」より>
専修大学の野口武悟教授を招いて、「読書から誰一人取り残さないために」のテーマで講演会を行いました。
「今、図書館は本当に人々に必要な読書環境を提供できているのか?貧困、外国籍、障がいなどによって『本の飢餓』を生んでいないか?」という問題提起は関係者の胸に深く刺さりました。この問題を解決するには、誰もが自分事としてできることに取り組まねばなりません。
図書館では、大活字本や点字付きさわる絵本、朗読CD、LLブック、布の絵本など、さまざまなバリアフリー資料を充実させつつあります。また、自動車図書館の運行を始め、拡大読書器などの読書補助具、対面朗読、音声ガイド付き映画の上映会などのサービスも行っていますが、これらは必要とする方に充分届いているのでしょうか?
善意の押し付けでなく当事者の方と一緒に考え、読書のバリアフリーの実現をめざしたいと思います。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年2月3日付「いすの木のもとで」より>
新年1月号の「広報伊万里」の特集を伊万里市民図書館が飾っています。関係職員で打ち合わせて、テーマは格調高く「人生に寄り添う図書館」に決定。人の成長ごとに図書館が関わりを持っていることを知っていただこうという企画です。
そこで、新春にふさわしく、見開き一面に「人生すごろく」を掲載することにしました。当館では、赤ちゃんに絵本と読み聞かせをプレゼントするブックスタート事業に始まり、学校図書館の支援や、福祉施設などへの巡回、さまざまな調査相談、生涯学習の支援など、人生の各時期に寄り添うサービスを提供しています。
市民の皆さんへのお知らせのために作った「すごろく」ですが、あらためて図書館の使命の大切さを図書館員自身が再認識する機会ともなりました。今年もよろしくお願いします。(館長 鴻上哲也)
<佐賀新聞 令和5年1月6日付「いすの木のもとで」より>