令和7年12月号
 『アリゲーターガーは、月を見る』
 
 山本 悦子/著   理論社

    自分の顔のアザがきっかけで母親が新興宗教に入信した航。そしてそのことでいじめを受けています。弟の死の原因を作ったと感じて苦しむ朔哉。家族は悲しみに暮れ、朔哉が夜中に帰宅しても関心がありません。両親が事故で他界、祖母も亡くし天涯孤独になった葉月は進路に悩みます。3人の孤独な心にいつも寄り添ってくれたのは、名古屋城のお堀にいる外来種のアリゲーターガーでした。ガーは心に傷を持った人間の前にしか現れないようです。しかしある日、堀の水を抜いて外来種を駆除するテレビ番組がやってくることを聞いて、3人はどうにかしてガーを逃がそうと考えますが…。

 
 


『逃げ続けたら世界一周していました』

 
  白石 あづさ/著  岩波書店

 皆さんは苦しくて立ち直れなくなりそうな時、避難できる場所を持っていますか? 幼い頃から生きづらさを感じていた著者は、学生時代からずっと逃げ続け、逃げる範囲がどんどん広がり、気づいたら世界一周をしていたと言います。働かなくていい日は働かないカリブ海のぐうたらおじさん、親切が押し寄せるイランでの華やかな女子会…。日本の常識がひっくり返るような体験や、現地での人との出会い、それを繰り返すたびに心が軽くなっていったと著者は語ります。「心」の避難訓練として、必要な時に日常から小さく逃げる大切さをユーモアたっぷりに伝えてくれる一冊です。


 


『因果ばなし』

 
 小泉 八雲/原作 円城 塔/翻案 中川 学/絵  東 雅夫/編   岩崎書店
 
 ある大名の正室が死を目前にして、病床から側室の「雪子」を呼び寄せます。「さいごに にわの さくらを いっしょに みては もらえませんか」。雪子は正室のその願いを受け、彼女を背に負いますが…。仲の良い関係と思われていた二人でしたが、正室の嫉妬と呪いによって「雪子」は過酷で悲惨な運命に見舞われることになります。 朝の連続テレビ小説「ばけばけ」のモデルになった小泉八雲氏の作品が絵本になって登場。僧侶にしてイラストレーターの中川学さんのイラストは迫力があって見ごたえがあります。





『僕の仕事はごみ清掃員。』

 
 滝沢 秀一/著  河出書房新社

 「世の中にはごみとして生まれたものは一つもない。ごみかどうかを決めるのは捨てる人間自身です。」 芸人の傍らごみ収集会社で清掃員として働く、お笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんの著書です。「ごみ出しに人間性があらわれる。」分別を面倒に思って全部可燃ごみに突っ込む人は、どんな人なのでしょう。みなさんは自分のごみはどうしていますか?そこら辺に置いて大人任せ…ではいけませんよね?他にもごみから見るお金持ちの特徴や、ごみに潜む危険性など、あらためてごみについて考えさせられる一冊です。