令和7年度5月号
 『森と、母と、わたしの一週間』
 
 八束 澄子/著  ポプラ社

  野々歩の母は祖母が亡くなってから、そのまま実家に残って帰ってこなくなりました。人間関係に疲れ、体も心もボロボロになった野々歩は、帰ってこない母を求めます。ある日「こっちへおいで」という風の導きを聞き、おもいきって電車に飛び乗り、山の奥地にある母の故郷へ向かいました。林業を営んでいた祖母の土地は「もりのようちえん」のフィールドとして使われ、なんと母はそこでボランティアとしてお手伝いをしていたのです。無邪気で勇者な子どもたちに、野々歩は戸惑いますが、少しずつ自分の弱さと向き合っていけるようになり…。


 



『いのちのつぼみ』

 
  志津谷 元子/著   偕成社

 中学生のはるかは、目標もなく帰宅部でのんびり過ごしていました。そんなはるかには、心をゆるせる従姉妹の芽久実さんがいました。彼女は心理士の資格が取れる大学に通うために山口から上京し、はるかの住む団地の近くのアパートに住んでいます。時には恋愛の話をしたり、実家のある山口県へ一緒に行ったりと、はるかは少しずつ芽久実さんといることで、自分の中にある変化を見いだせそうでした。しかし、不幸は突然やって来ます。踏切で人を助けようとした芽久実さんは事故に巻き込まれてしまい命を落とします。はるかは身近な人の死をどう乗り越えていくのでしょうか。






『イグアナドンのツノは なぜきえた?』

 
 ショーン・ルービン/文・絵 岩崎書店

   イグアノドンは四足歩行だった?化石から恐竜の姿を再現しようとした研究者と復元画家のおはなしです。想像で描かれた恐竜たちは、骨が発見されるたびに、姿を変えて行きます。イグアノドンには当初角があったとされていましたが、実はそれは別の場所のものだということがわかりました。人間が思い描いたものは科学の進歩とともに変わっていきました。最近のアニメで大人気の「天動説」も「地動説」科学者たちの証明によって覆されました。見たことのないものに仮説をたてて創造していく。途方もないけれど夢があります。科学の始まりは想像力から!








『中高生から考える死刑制度』

 
 佐藤 大介/著   かもがわ出版

  法務省が毎年作成する「行刑統計年報」によれば、戦後から2023年までの間に日本では718人が死刑を執行されています。重い罪を犯した人間への報い、愛する人を奪われた被害者の感情、凶悪犯罪を防ぐ抑止効果、こうした考えなども踏まえて、日本は死刑を維持しているそうです。世界ではこの制度を廃止しようという流れが強くなっているようです。刑の執行を見届けた記者の話。死刑判決から、長い年月をかけて無罪を勝ち取った冤罪の話。それに代わる刑罰とは?「死刑のある国」の国民として、人の命を奪う制度のことを色々な側面から学んでみませんか?




 



『おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか』

 
  ウェルズ 恵子/著  岩波ジュニア新書
 
 主人公は貧しかったり、不幸だったり、抑圧された立場でこそ最後のハッピーエンドが盛り上がる。言われてみればハッとする、「おとぎばなしあるある」が盛りだくさんです。何百年にもわたって語りつがれ、書き換えられつつ生き延びている物語には、実は現実を教える真実がひそんでいるそうです。その時代の貴族と平民の姿や、世相も見えてくる「おとぎばなし」。ちなみに私が一番怖いと思った「青ひげ」も載っていました。「あけてはいけない」にあけてしまう好奇心は罪なのか!?