令和7年度4月
 『出てこい、写楽!~蔦重編集日記~』
 
 楠木 誠一郎/著  静山社

  10か月で姿を消した謎の人気絵師、東洲斎写楽は蔦屋重三郎の息子だった、という設定のお話です。
新作を出せば間違いなく売れるのに、なぜか引きこもって絵を描かなくなった写楽。版元「耕書堂」の主、蔦屋重三郎は、息子である写楽を呼び戻そうと、売れっ子作家や絵師たちに声をかけ、写楽の2代目として力士や役者の絵を売り出します。大河ドラマ「べらぼう」でおなじみの蔦屋重三郎だけでなく、他にも十返舎一九、山東京伝、滝沢馬琴、葛飾北斎、喜多川歌麿など聞いたことのある有名作家たちが登場し、協力して作品を作るところは見どころです。


 



『トッケビ梅雨時商店街』

 
  ユ・ヨングファン/著 岩井 理子/訳  静山社

 トッケビとは人間に福をもたらす妖怪のようです。母と二人で貧しい暮らし少女キム・セリンはある日、雨が降ると開かれる「梅雨時商店街」への招待状を手に入れます。そこには「あなたの不幸を売れば、自分の望む幸福(クスル)と取り換えるチャンスをあげます」というあやしい内容が書いてありました。セリンは人生を変えられるかもしれないという望みをもち、商店街の建物へと向かいますが…。ファンタジー好きには読み応えのある内容で、展開も早く先が気になります。果たしてセリンは自分の望む人生を手にすることができるのでしょうか?





『「コーダ」のぼくが見る世界』

 
 五十嵐 大/著  紀伊国屋書店 


 コーダとは「Children of Deaf Adults(チルドレン・オブ・デフアダルト)」の略で、「耳が聴こえない、あるいは聴こえにくい親のもとで育った、聴こえる子どもたち」を意味します。家族との会話が手話であるため、それが母語だと考えることや、聴こえない親を否定したい気持ち、守りたい気持ちの相反する感情で揺れ動くことなど、自分自身の価値観と世間との違いを痛感することがあるようです。家の中では誰にも頼れず、誰からも助けてもらえないことから、問題は自分で解決するしかありません。複雑なアイデンティティを抱えるコーダの人の気持ちを考えてみませんか?







『恋愛ってなんだろう?』

 
 大森 美佐/著   平凡社

  恋をすることが「ふつう」なのか?好きな人ができないことは変なことなのでしょうか?恋愛のルーツを探ると、日本で「恋愛」という概念が成立し大森 美佐/著   平凡社たのは明治初期、文明開化といわれた時代の1870年代だそうです。そして恋愛のルールや秩序が広まってきたのは戦後です。今では顔も知らない人とSNS上で恋愛を楽しむなど多様なスタイルがあり、人の価値観は常に変化しているようです。様々な恋愛で起こりうるトラブルについて、現代のコミュニケーションのあり方など、自分の心と体を守るために学んでみましょう。


 



『震災アーカイブスを訪ねる』

 
   大内 悟史/著   筑摩書房

 2011年3月11日、あなたはこの世に生まれていましたか?当時のことを聞いたことはありませんか?近年では震災の様子を伝え、学ぶことのできる「震災アーカイブ施設」が続々とオープンしています。本書では福島・宮城・岩手の特徴的な12施設をめぐり、震災時の状況で地域によって抱える課題を考えます。実際現地へ足を運んでほしいと訴える著者の大内氏は、実家が被災し、おばあさんを震災関連死で亡くされています。東日本大震災から何を学び、何を語り継いでいくか考える一冊です。