蔡 皋/作・絵 石田 稔/訳 徳間書店
むかし、山の中にミャオ族のアツォワンというまじめではたらき者の若者(わかもの)が一人でくらしていました。ある日、近所(きんじょ) の人がびんぼうなアツォワンに「きれいなむすめを絵(え)にかいて、よめさんにしたらいい」とからかいました。アツォワンは絵師(えし)にお金をはらって、うつくしいむすめをかいてもらいます。昼は畑(はたけ)ではたらき、家(いえ)では絵のむすめにアツォワンは話しかけました。ある日、アツォワンが家をのぞくと、かべにかけた絵はまっ白になり、むすめが一人、すわっていました。
今井 恭子/文 岡本 順/絵 BL出版
カエルのキダマッチ先生は、どんな病気(びょうき)やけがでも、あっというまになおしてくれる名医(めいい)です。ある朝、めずらしく患者(かんじゃ)がいなかったので、先生はほうきを取(と)りだし、ひさしぶりにそうじをはじめました。いつもは患者たちのちりょうで息(いき)つくひまもないのです。部屋(へや)のすみ、すきまなどどこにもたっぷりほこりがたまっていました。ほうきではき集(あつ)めると、ほこりがまい上がり、先生はゴホンと、せきをしました。そうじ機(き)なら、こうはなりません。先生には、ぜったいそうじ機を使わない理由(りゆう)があったのです。
「あくびなかまとはらっぱで」
小島 敬太/作 鬼頭 祈/絵 偕成社
子ヒツジが、ふしぎなにおいをかいだのは、ひるさがりのことでした。はじめてかぐあまいにおいです。「おいしそうな草かな」子ヒツジは立ちあがり、風(かぜ)がふいてくるほうにあるきだしました。 子ヒツジは草のことが気になり、一人きりであるくのがこわくありません。草をかきわけあるくと、においがこくなりました。すると、子ヒツジはとつぜん、大きなものにぶつかりころんでしまいます。それはもじゃもじゃの毛(け)におおわれたバイソンだったのです。
~本屋さんのルビねこ8~「ルビと空飛ぶねこ」
野中 柊/作 松本 圭以子/絵 理論社
ある日、〈本屋 本(ほん)の木(き)〉のねこのルビに封筒(ふうとう)が届(とど)きます。他(ほか)のねこやお客(きゃく)さんも、ルビにきた手紙をおもしろがって集(あつ)まってきました。それは旅(たび)ねこのバトーからの手紙と、バトーが旅人(たびびと)ミドリさんと海で釣(つ)ったりっぱな魚(さかな)の魚拓(ぎょたく)でした。大好(だいす)きなミドリさんたちの大きな魚をみんながほめたことに、ルビはなんだかもやもやします。そこでルビはこっそり家を出て、ねこたちだけで夜釣(よづ)りに出かけました。船(ふね)に乗(の)りこみ海に出ると釣り糸(つりいと)を垂(た)れます。波(なみ)に揺(ゆ)られ時が過(す)ぎると、やがて分厚(ぶあつ)い雲が広がってきたのです。