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おすすめの本
『水曜日生まれの子』  
イーユン・リー/著 篠森 ゆりこ/著 河出書房新社

 中国系アメリカ人の著者は、小説を刊行するたびに数々の賞を受賞されるほど、華やかな実績に彩られていますが、本人の壮絶な私生活の出来事が、この作品の中で二重写しのように描かれています。さまざまな経験を重ねる中で、他人への想像力が一層研ぎ澄まされていくのかもしれません。収められた11編の短編小説は、いずれも孤独・喪失・不安など、かなり重たいテーマを扱っていますが、ところどころにユーモアが感じられ、読み応えのある作品集となっています。ぜひ、手に取ってみてください。
(T.K)
 
『文学館を旅する 全国の作家・作品ゆかりの地をめぐる』

今村 信隆/著 イカロス出版


 たくさんの名作を残した文豪たち。彼らの人生に思いを馳せ、その存在を身近に感じることができる「文学館」へ行ってみませんか?じっくりと言葉を味わうことができる特別な空間は旅行にもおすすめです。
 松本清張記念館や長崎市遠藤周作文学館など、九州が誇る文学館も多数紹介されています。遠藤周作文学館には、自身の考えを深められる思索空間「アンシャンテ」があります。隠れキリシタンの信仰を見守ってきた海が目の前に広がり、その歴史の重みが伝わってきますよ。

(A.K)
 
『移動する人はうまくいく』
長倉 顕太/著 すばる舎

  同じ毎日の繰り返しで、変えたいのに何も変わらない、考えてばかりで動けない、そんな思いを抱いていませんか。日本は安定志向が強い傾向があるため、環境を変えようと思うと不安に感じる方も多いはず。しかし、移動することで常識や世間体、同調圧力によって見えなくなっていたもの、感じられなくなっていたものがわかるようになると著者は考えます。また、自分に新しい刺激を与えるので、選択肢の幅や自分の世界が広くなります。
 感情から変えようとするのではなく環境から。環境を変えてチャレンジしていきたいと思う時に勇気をもらえる1冊です。

(A.S)
 
『影犬は時間の約束を破らない』
バク ソルメ/著 斎藤 真理子/訳 河出書房新社

 日常から離れるため「冬眠」というリフレッシュ方法を選択する人とそれに関わる人の物語。冬眠を安全に行うためには信頼できる見守る人が必要となる。
 冬眠の最中に見る夢を目覚めても記憶しているホ・ウンはその夢を日記のように書き残しています。今回の冬眠で見守りを依頼した友人に、見守りの間その日記を読むことを勧めます。その友人はウンが起きている時より、ウンへの理解を深めていくのです。眠っている人と見守っている人が同じ部屋で違う時間を過ごし、冬眠が明けた日常もどこか夢の中に居るような感覚になる、日常SFの短編小説をまとめた一冊です。

(Y.M)
 
『犬と生きる』
辻 仁成/著 マガジンハウス

 パリ在住の芥川賞作家である著者は、ミュージシャンやシングルファーザーなど、いくつもの肩書を持っています。本書は、そんな著者が息子の独り立ちを機に飼い始めた小犬との日々を綴ったものです。普段は小犬の可愛さにメロメロになりながら、自身の人生や孤独について、そしてそこに新たに寄り添うことになった小さな命について考えを巡らせます。
 穏やかな毎日を過ごしながら、時には犬用の国際パスポートを携えて海外へ。日常も非日常もともに楽しむ、一人の作家と一匹の小犬の記録です。
(S.S)
 
『異形のヒグマ』
山森 英輔、有元 優喜/著 講談社
 

 2019年の夏、北海道東部の町で放牧されていた牛が襲われ、その地域一帯で被害が続きました。牛を襲ったとされたのは1頭のヒグマ。しかし、その姿を目撃した者はまったくといっていいほど存在せず、さらに不可解な行動が人々を恐怖と混乱に陥れたのです。のちに、「OSO18 オソ・ジュウハチ」」と呼ばれ、世間にもその名が知られるようになりました。著者である、NHKスペシャル取材班の二人が、4年間に及ぶOS018の捕獲に取り組んだハンターや酪農家たちを追い続けた記録です。
 自然環境とそこに暮らす野生生物たちとの共生は、人間に課せられた永遠の宿題のように思われます。

(Y.O)