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おすすめの本
 

No.632 平成30年7月

『鏡じかけの夢』『祈りの記憶~長崎と天草地方の潜伏キリシタンの世界』
秋吉 理香子/著 新潮社

 ヴェネチアで作られたという1枚の鏡。願い事を強く念じながら、一生懸命心を込めて磨き続けると願いが現実になると言い伝えられていました。 
 脳病院に入院する患者の夫を愛してしまう看護婦。ひとまわり以上年下の青年に、心惹かれてしまった鏡磨き師の男。第二次世界大戦後、ヴェネチアに逃げ移り、サーカス団の一員となった双子の姉妹。
 自分の欲を満たす為に、また人に対する妬みや怒りから、鏡の力を信じ、魅入られた者達が、何かに憑りつかれたように鏡を磨き続ける姿の描写には狂気さえ感じます。
 戦前から戦後を舞台にした、悲しくも恐ろしい愛憎に満ちた連作短編集です。
(Y.U)


松尾 潤/著  批評社

 ザビエルがキリスト教を日本に伝えたのは1549年。当初は織田信長によって布教を推奨されますが、数十年後には追放令・禁教令が出される事態となります。これは、キリシタン大名が各地で力を持ち始めたことを豊臣秀吉が恐れたためでした。次第に激しさを増す迫害。そんな中、キリストへの思いを貫き、信仰を続けた人々、それが「潜伏キリシタン」です。この本では彼らが大切に守った信仰の場や思いが、たくさんの写真とともに紹介されています。
 世界遺産に登録されることが決定した「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。激動の時代を生きた彼らの人生を思いながら、世界遺産の地へ出掛けてみてはいかがでしょうか。
(A.K)



『噛みあわない会話と、ある過去について』
『決断を支えた一冊 リーダーの本棚』
辻村 深月/著 講談社

 物心ついた時から、大なり小なり悩まされる人間関係。でも、中には「自分は悩まされたことはない。人を傷づけたこともない。」という方もいるかもしれません。そんな人も一度胸に手をあて、過去の事を思い出してみてください。あの時のあの言動が、実は誰かを苦しめたりしていないかと。
 この本の登場人物が、過去の事をふり返る姿をみると、思わず過去の自分はどうだったのか?と自分を問い詰めたくなります。人と人との関係について考え直すきっかけとなる4作の短編が収録されています。
(A.U)



日本経済新聞社/編 日本経済新聞出版社

 2016年に刊行された、『リーダーの本棚』に続く第二弾で50人の愛読書を収録してあります。政界や経済界などの様々な業界におけるリーダー達の人間性を作り、また、孤独や葛藤を支え人生の力となった座右の書との出会いをエピソードと共に紹介しています。学生時代の講義でくり返し読み込んできた本、書店で惹きつけられた本、さらに、ユーモア溢れる奇想天外な主人公に影響を受けたというマンガ本まで!
 今まで手に取ることのなかった分野の本をこの機会にぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
(M.T)


『「徹子の部屋」の花しごと』『トトロの生まれたところ』
石橋 恵三子/著 産業編集センター

 放送開始から42年になる長寿番組「徹子の部屋」。著者はその番組で花を生け続けています。
 今ではすっかり定着している“その日のゲストに合わせて日替わりのフラワーアレンジメントを飾る”ということ。花のイメージを作るために、ゲストの最近の出演作や話題などを調べ、同じゲスト の時にも決して同じ生け方をしないそうです。そして、週に一度、花の買い付けに市場へ出向き、長年の経験をいかし、収録時に花がベストの状態になるよう調整をしているとのこと。
 彼女の花を愛する気持ちや番組に対する想いが伝わってくる一冊です。
(R.K)



宮崎 駿/監修 スタジオジブリ/編 岩波書店

 映画『となりのトトロ』の舞台となった所沢。西武池袋線の線路沿いに位置するかみの山、狭山丘陵の東端にある八国山などの四季が、宮崎駿監督の妻、宮崎朱美さんのスケッチで彩り豊かに紹介され、また、宮崎監督が描いた『となりのトトロ』初期のイメージボードも多数掲載されています。各地で都市化が進む一方で、自治体が豊かな自然を残そうと緑の保全に取り組み、都市周辺にもかかわらず貴重な自然環境が残っている狭山丘陵。
 「トトロ」を生んだ自然を守ることは「トトロ」のような存在を存続させていくことなのかもしれません。初めて見るはずなのにどこか懐かしい風景に出会えます。
(Y.M)