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おすすめの本
 

No.753  令和5年11月

『ウクライナ・ダイアリー 不屈の民の記録』『ようこそ!富士山測候所へ』
古川 英治/著  KADOKAWA

 新聞社を退社した著者は、ウクライナ人の妻とキーウに移り住み、ロシアによる侵攻に直面します。本書は、戦禍の中で暮らし戦う人々の中で、記者として、当事者として、憤り、戸惑い、考える日々を綴ります。あの「2月24日」を人々はどう迎えたのでしょうか。国営の責務と走り続ける鉄道の車掌、美味いパン、ハッカー、拷問された女性、志願兵。多くの人と接する中で、「自由と主権のために戦う市民」の気持ちが痛いくらい伝わります。日本で、ウクライナの人々の思いが置き去りにされている印象を感じたという著者。戦禍の人々と共にいたいと語る、ウクライナの今を伝えます。
(T.M)
長谷川 敦/著  旬報社

 明治時代の半ば、ある青年が富士山頂での気象観測に挑みました。その後、過酷な自然環境の中で彼の信念は受け継がれ、多くの人々の支えによって40年余りを経て、通年観測ができる富士山測候所が設置されます。2004年、測候所は無人化が決定し、その存続も危ぶまれましたが、測候所で行われていた気象以外の研究者たちが存続を訴え、今では多大なる科学の研究成果があげられています。日本の天気予報に大きな役割を果たし、科学の最前線を行く富士山測候所の歴史と魅力が綴られています。
(Y.O)

『眠れないあなたに』『文化財と標本の劣化図鑑』
松浦 弥太郎/著  小学館

 
一日が終わり、枕に頭を預けて瞼を閉じる。毎日の繰り返しでも、時折感じる不安感。「どこに晴らせばいいのか」というやりきれなさや自分自身でも把握の難しい感情を、著者は独自の視点によりそれを言語化し、そうしたストレスに対する処方箋を綴っております。
 不安を晴らすための術を、読者に寄り添うように語る本著は、著者からの暖かなエールを感じる一冊となっています。
(W.H)
岩崎 奈緒子ほか/編集  朝倉書店

 昆虫や落ち葉の標本、古文書や石膏模型など、様々な種類の文化財や標本がどのように劣化するかを、実際に劣化した文化財の写真で示す図鑑です。虫やカビなど保存環境が原因のものから、当時は最善と思われた容器が、経年変化のために劣化していたもの。補強のために選んだ裏打ち紙が本紙の破損を引き起こす原因となってしまっているものなど、よかれとおもってやった選択が劣化を進めてしまった事例も取り上げ、文化財の保存をめぐる方法について考えます。

(Y.M)
『六代目三遊亭円楽正調まくら集』『ソース焼きそばの謎』
六代目三遊亭円楽/著  竹書房

 テレビ番組“笑点”で人気を博しながら、会派にとらわれない落語会のプロデュースなどを活発に行い、多くのファンに愛されてきた、六代目円楽。
 この本は、晩年の“まくら”から厳選し、活字化したものです。時事や時節ネタはもちろん、歌丸師匠との思い出や自身の闘病のことなど、まさに命を懸けて落語に向き合った印のような“まくら”の数々。
 生前の円楽師匠の小噺が、映像のように蘇ってきます。
(Y.N)
塩崎 省吾/著  早川書房

 お祭りの出店やカップ麺でもお馴染みのソース焼きそば。しかしながら、いつ頃どうやってこの料理が生まれたのかははっきりとしていないそうです。
 この本は、ソース焼きそばを愛する著者が、これまで戦後の大阪発祥とされてきた通説に疑問を持ち、そのルーツを探る本です。老舗店を巡り、証言を集め、膨大な資料に目を通すことで、戦前戦後の食糧事情に触れながらも、ソース焼きそば発祥の新説に迫っていきます。
 著者が実際に訪れた全国の老舗焼きそば・お好み焼き店の情報も掲載されており、佐賀県内のお店も紹介されています。読んでいるうちにソース焼きそばが食べたくてたまらなくなる一冊です。
(S.S)