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おすすめの本
 

No.739  令和5年2月

『雑草ラジオ』『ナマケモノ教授のムダのてつがく』
 瀬戸 義章/著  英治出版

 東日本大震災のボランティア活動などをきっかけとして著者が思いついた「持ち運べる災害ラジオ局」。このアイデアは「バックパックラジオ」として実用化され、インドネシアの火山地帯に配備されるようになりました。
 災害時に特定の地域へ支援情報を伝えることに適しているのは、テレビやインターネットではなく、コミュニティラジオでした。災害大国であるインドネシアと日本。火山災害、阪神・淡路大震災や熊本地震などの体験から、小さなラジオがもたらす防災や地域活性化の力を伝えます。
                 (S.M)


 辻 信一/著  さくら舎

 コロナ禍の中、世間に鳴り響いた“不要不急”という言葉。誰しも心にストレスを感じ、不要不急の意味を再確認しました。では、無駄とは?不必要とは?いったい何でしょうか。
 この本は、ムダについて真面目に“てつがく”的に考えています。教育も時間も愛も、ムダなものは何もありません。むしろムダと捨てたものに、価値が見えてくる不思議さ。
 必要か不必要か、ムダか有効か。自分の足元にある答えを探してみませんか?
                 (Y.N)


『死ぬまでに知っておきたい日本美術』『若冲が待っていた』
  山口 桂/著  集英社

 日本美術は、日本人が長い間その美意識を身近な「道具」に込め、大事に育んできたものであり、その品質は世界のいかなる一級の美術品にも引けを取らない…。世界的オークション会社の社長として海外で日本美術品を扱ってきた著者は『せっかく日本に住んでいるのにこれだけ世界でトップクオリティと称されるアート「日本美術」をよく知らない、みないということは人生経験において実にもったいないことだ』と熱く語ります。
 本書では日本人こそ知るべき、日本人の生活に
寄り添ってきた数々の美術品をカジュアルに解説。日本美術への興味を開け広げる「窓」的入門書です。
                 (M.N)

 辻 惟雄/著  小学館

 江戸中期の京都の絵師で、「奇想の画家」の代表的な人物として知られる伊藤若冲。その名と作品の魅力を世に知らしめ若冲ブームの火付け役となったのが美術史家の著者です。産婦人科医の次男として生を受け、自身も医師の道へすすむため東大へ。しかし、2年連続の留年で医学部を断念し、美術史学科へ転部します。挫折を味わいながらも、父の言葉や先生、多くの仲間との交流と励ましによって日本美術史をリードする存在になりました。90歳を迎えた著者が、その生涯を振り返った自伝的エッセイ。「奇才」といわれる所以が本文のそこかしこに見え、さらに共に収録されている著名人から著者宛ての手紙はその人柄を物語っています。
                 (Y.O)

『がらんどう』『振り返れば未来 農民作家山下惣一聞き書き』
 大谷 朝子/著  集英社
           
 コロナ禍をきっかけにルームシェアを始めた38歳の菅沼と42歳の平井。女性の気ままな二人暮らしに見えるのですが、結婚や出産願望があるにもかかわらず、恋愛感情を持つことができない平井の焦燥や、自宅にある3Dプリンターで死んだ犬のフィギュアをひたすら制作している菅沼の空虚が生活をひたひたと浸食していきます。心のなかでは望みつつも「普通の」生活ができないしんどさ。そもそも普通ってなんだろうという疑問。「がらんどう」というタイトルの通り、二人のなかに埋めることができない空洞があることに気づくとき、読み手の私にも同じ空洞があることに気づかされます。社会の真ん中ではなく周辺にいる人を丁寧に掬う物語です。
                 (Y.M)
 
 山下 惣一/著 佐藤 弘/聞き手  不知火書房

 2022年7月唐津市の山下惣一さんが亡くなられました。農業に従事しながら小説、エッセイ、ルポルタージュなどの文筆活動を続け、国内外の農の現場を精力的に歩き、食・農をめぐる問題などへ問題提起を続けました。
 本書では「生い立ち」から「農の明日」まで、全14章に渡り、時に大笑いしながら、これまでの人生を語っています。人間らしく生きていけるのが「百姓」の世界。「百姓」という言い方にこだわる理由とは。明日を切り開くヒントはミライにではなく人々が歩いてきた跡、人類の歴史の中にある……。農民作家・山下惣一の足跡と農業への危機感などを伝える『西日本新聞』連載を大幅に加筆したものです。
                 (T.M)