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おすすめの本
 

No.709  令和3年9月

『月に3冊、読んでみる?』『言葉の人生』
酒井 順子/著   東京新聞
 
 「月に何冊くらい、本を読むのですか?」と聞かれ、答えに詰まる著者。多くの本を購入し、図書館にも行き、身の回りに大量の本があるのに読み始めて途中までの本、読んだ気はするけれど内容を思い出せない本、存在すら忘れた本等が累々としており、確実に「読んだ」と言える本は果たしてどれほどなのか、と思うのです。本書は著者が東京新聞・中日新聞で、ひとつのテーマに沿った本を3冊選んで文章を書く「3冊の本棚」の連載をまとめたものです。10章からなるテーマの中には、「掃除の裏側」「人生も下山してこそ」「読書欲をそそる注釈」など、著者ならではのユニークな視点からなる3冊が並びます。著者のありのままの読書嗜好から本の世界が広がります。
                 (T.M)
片岡 義男/著  左右社

 バイリンガルで育ち、英語と日本語を駆使してマルチに活躍してきた著者が、気になる言葉について語るエッセイです。
 「だいじょうぶです」という言葉をよく耳にします。間に合っている、そんな必要はない等の代わりにやんわりと断るにはとても便利な言葉ですが、未だに違和感を持つ人は多いのではないでしょうか。ほかに「よろしかったでしょうか」「…となります」など最近使われるようになった言い回しに戸惑いつつも冷静な分析をしています。さらには、いつの間にか聞かなくなった言葉や、カタカナ語なども取り上げられており、日本語の奥深さを再認識することができます。
                 (N.K)


『海をわたった母子手帳』『ガラスの海を渡る舟』
中村 安秀/著  旬報社

 第二次世界大戦直後、食糧不足や感染症の流行など混乱した日本の社会で、妊産婦と産まれてきた子どもの命を守ろうと世界で最初の母子手帳が作られました。日本発の母子手帳は今では50以上の国や地域で受け入れられ、各々の環境にあった独自の母子手帳として展開されています。小児科医の著者は1986年からJICA(国際協力機構)母子保健専門家としてインドネシアに赴任した際、日本の母子手帳の素晴らしを実感したことをきっかけに、海外での母子手帳の普及に取り組みました。著者のこれまでの経験と母子手帳の魅力や大切さを切々と綴っています。
                  (Y.O)

寺地 はるな/著  PHP研究所

 大阪、心斎橋近くのレトロな味わいを持つ空堀商店街。その街の魅力の一つとして描かれる「ソノガラス工房」。「特別」に憧れる妹と「特別」扱いされている兄。苦手意識すら互いに持つ正反対の二人が営む店に、ある日「ガラスの骨壺」を作ってほしいという依頼が舞い込みます。理解という枠組みの中で右往左往し、時としてぶつかり合う兄妹ですが、不格好な絆であっても同じところを目指し歩みを進める。そんな二人の姿に、いつしか「頑張れ」と応援して読み進めているかもしれません。親近感からくる魅力が読み手さえも物語の一部になっているハートフルな一冊です。
                 (W.H)

 
『アフター・サイレンス』『ヴァイタル・サイン』
本多 孝好/著  集英社
 
 高階唯子は県警の委託を受けて事件の被害者やその家族の心のケアをする仕事をしています。それぞれ事情を抱え、突然起きた事件の衝撃にとまどうクライアントに向きあって、一人ひとりが抱えた想いを聞き出し、心のケアを行えるよう奮闘する唯子の姿が描かれています。本書の中で唯子がカウンセラーとして、クライアントの心情を読み取り話しやすい雰囲気を作るためリラックスさせたり、時には聞きづらい質問をして相手に状況を把握させたりする場面も多く、そのような描写も魅力の一冊です。    (M.O)


南 杏子/著  小学館  

 毎日忙しい日々を看護師として働くキャリア10年の堤素野子。患者から感謝されることもありますが、罵られることの方が多く患者家族からのクレームも多い病院に勤めています。ある時看護師と思われる「天使ダカラ」さんのツイッターアカウントを見て、決して口にしてはならない看護師たちの本音にプロとしての気持ちが揺らぎます。心身ともに追い詰められていく現状を素野子はどう打開していくのでしょうか。著者は現役の医師で医療の現場を詳細に書かれています。
                 (Y.K)