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おすすめの本
 

No.703 令和3年6月

『父ちゃんの料理教室』『レンタルフレンド』
辻 仁成/著 大和書房

 シングルファーザーとして、料理を作り続ける、本書の著者であり作家の辻仁成さんは現在パリで17歳の息子と二人暮らし中。
 ぬくもりのある美味しい料理を通して、小学生だった息子さんを育て上げてきた著者。各章、エッセイや息子さんとの会話から始まり、それに交わるように魅力的なレシピが紹介されていきます。
 父親が息子に人生などについて優しく語りかけながら、二人が料理や食事の時間を共にする雰囲気ある文体がとても素敵な一冊です。
             
                    (K.A)

青木 祐子/著 集英社

 

 お金を支払い友達として来てもらうのがレンタルフレンド、かりそめの友達です。派遣会社のフレンド要員としてスカウトされた七実は、結婚式で新婦の友人になり初めての仕事に参加します。仲間と仕事をするうちに、依頼者と一対一の仕事もできるようになり七実は会社から独立、女子大生の親友としてケーキを食べに同行してほしいという依頼が入ります。そこでの出来事とは。他に女優志願の若手になったり、飼い猫の面倒をみる話など四つの依頼の物語。フレンドをレンタルする人の求める理由は様々のようで…。友達をレンタルする側とされる側、そこに見えてくるものとは…。
                  (T.M)
『最後のダ・ヴィンチ』 『星落ちて、なお』
ベン・ルイス  集英社インターナショナル

 2017年11月、一枚の絵が4憶5000万ドル(日本円で約510億円)で落札されました。青いローブをまとった救世主イエス・キリストの姿が描かれているその絵画の名は、レオナルド・ダ・ヴィンチ作『サルバトール・ムンディ』
 本書ではこの絵画が辿ってきた歴史を紐解き、この絵は本当にダ・ヴィンチの作品なのかという検証を徹底的に行います。1枚の絵を追うノンフィクションですが、さながら上質なミステリーを読んでいるかのようです。“事実は小説よりも奇なり”ぜひ手に取って体感してください。
                    (Y.M)
澤田 瞳子/著  文藝春秋 

 師匠に「画鬼」と仇名をつけられるほどあらゆる絵を描き続け、稀代の絵師として名を残した河鍋暁斎。その娘とよは、五歳から父の下で絵の稽古を始めます。しかし、それは父娘の関係を師弟に変え、やがて父亡き後、河鍋の名を受け継ぐ者としての苦悩の日々の始まりでした。
 明治から大正を駆け抜けた女絵師・河鍋暁翠の半生を描いた小説です。偉大な父の影に囚われながら、女性として、一人の絵師としての生き方に葛藤するとよの心情が痛いほど伝わってきます。
                  (Y.O)
『星影さやかに』『母親を失うということ』
 古内一絵/著  文藝春秋

 軍国少年であった良彦は、近所の人々から「非国民」と呼ばれていた父を恥じていました。家のことは母にすべて委ねて、自宅の書斎に閉じこもっている父を露骨に敬遠していました。しかし、良彦が28歳の時、父の遺した日記によって、その過去を知ることとなります。
 誰も知らなかった父の真実を知った時、家族が感じたこととは。家族間には様々な物語があり、それぞれが知らない一面もあります。激動の時代を生き抜いた親子三世代の感動の物語です。
                   (M.O)

岡田尊司/著 光文社 

 幼少期から少年期の自身と母親との関わりを回想し、84歳で亡くなった母親の人生を偲んで書いた本です。
 家族関係で苦労の絶えなかった母親は常に深い悲しみを抱え、涙にくれることもよくありました。そんな中でも、落ち着きのない乱雑な生活ぶりだった著者に対しては、嘆いてはいても叱ることはありませんでした。今思えば、母親は自分にはできなかった自由な人生を子どもに歩ませようとしたのでしょう。やりたいことをやらせてくれ、いつも味方でいてくれました。その存在が自分の性格形成にどう影響したか、親子関係を研究している精神科医という立場から分析しています。      (N.K)