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おすすめの本
 

No.681 令和2年7月

『死という最後の未来』『スマホを捨てたい子どもたち』
石原 慎太郎/著 曽野 綾子/著 幻冬舎

 90歳が近くなってきた2人の作家が、そろそろ見えてきたという「死」について語り合います。
 精力的で、政治活動もしてきた石原氏は、「死」について「無性に知りたい」と言います。対して、持病とともに過ごしてきた曽野氏は、「分からないことは、そのままでも良い」という考えを表わします。
 2人の対談は、程よく緊張感を漂わせながら、いずれ来る「最後の未来」に向かって展開します。片や法華経、片やキリスト教というよりどころを持ちながらも、同時代を過ごし、様々な死に触れてきた二人の関係は、まさに戦友とも言えるものでしょう。
 死を通して、生きる意味を見出すスリリングな対談です。

                 (A.K)

山極 寿一/著  ポプラ社

 講演会で、大学生や中高生に「スマホを持っている人は?」と尋ねるとほぼ全員の手が挙がる。続けて「スマホを捨てたいと思う人は?」と尋ねると、こちらも結構多くの子どもが手を挙げる…。そのような体験談からこの本は始まります。生まれた時からスマホが存在している子ども達の環境をゴリラの生態と比べつつ、現代のスマホ社会における人間のあり方を探っていきます。
 また、スマホが登場してから、ヒト同士のコミュニケーションの取り方や子育てに変化が見られ、このまま情報化が進めば、人間は考えることをやめるかもしれないと、警鐘を鳴らしています。
 ゴリラ研究の第一人者で、京都大学の総長となり、日本学術会議の会長も務める著者からの驚くべきメッセージです。       

                 (K.S)

『君たちにサンタは来ない』『桃のお菓子づくり』
朝田 寅介/著 ヨシモトブックス

 「もう家には帰りません、子供たちの面倒も見られません」、そう言って妻が出て行った日から著者と5歳と8歳の息子たちとの父子家庭生活が始まりました。その直後に両親が相次いで亡くなり、頼る人もなく、仕事を探すことすら困難を極めました。自分は水を飲んで飢えをしのぎながら子供達には手作りの食事を欠かさず頑張ってきましたが、2人とも反抗期に入り警察沙汰が続くようになります。
 「死にたい」「死んだら子供たちはどうなる」を繰り返しながら、必死に一人で子育てをした父親の12年間の記録です。
                  (N.K)
今井 ようこ/著 藤沢 かえで/著 誠文堂新光社

 甘い香りとみずみずしさのある桃は夏の旬の果物。この桃を使ったお菓子作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
 桃が大好きな2人の著者は、何度も研究を重ね、初心者の方でも作れるものから、少し頑張って作るものまで桃の魅力がいっぱいつまった64レシピを考案されています。
 桃のモンブランや桃のタルト、桃のムースなど桃づくし!桃好きの方はもちろん、桃は繊細だからお菓子作りには難しいと思っている方にもおすすめです。

                 (A.S)
『薬物依存症』『街場の親子論』
清原 和博/著 文藝春秋

 著者は2016年、覚醒剤取締法違反で逮捕されました。自らの半生を振り返ったこの本は、野球人生の絶頂期やケガで苦しんできたこと、覚醒剤に手を染め、大切な家族とも離れてしまった現在までが語られています。
 一人では、何もできない弱さを思い知り、ただ一つだけ残された『人』の大切さに気づきました。人とのつながりで、依存症という病から抜け出そうと治療に向き合う日々。二度と会えないと思っていた息子とも会えるようになり、大切なことに気付かされていきます。
 4年間の執行猶予が満了となった6月15日『執行猶予が開けるのが怖い…』今も、不安で不安でたまらない。薬物で、どん底を見た著者は、野球と薬物依存症のために捧げたいと希望が綴られています。
                 (Y.K)
内田 樹 内田 るん/著   中央公論新社 

 「お父さんへ」「るんちゃんへ」の書き出しで始まる父と娘の往復書簡が一年間にわたり交わされました。父は思想家、武道家などと称され、様々なジャンルの著作も手がける名文家です。娘は詩人、フェミニスト、イベントオーガナイザーなどの肩書を持っています。
 娘が6歳の時に両親は離婚し、父は男手ひとつで一人娘を育てることになりました。娘は幼いながら、父の大変な状況を気遣う日々を過ごしました。当時の思いを手紙に綴り、お互いの正直な気持ちを分かち合ったり、今の社会や教育についても議論しています。
 親子のような同志のような二人の関係が、とても微笑ましく、うらやましくも感じます。

                 (Y.O)