平成30年8月号



アニタ・ローベル/作 安藤紀子/訳 ロクリン社

 むかし、旅(たび)まわりの5人組(にんぐみ)の音楽隊(おんがくたい)があり楽器(がっき)をかなでながら、あちこちまわっていました。だれもが、この5人の演奏(えんそう)は国(くに)じゅうでいちばんだとおもいました。
 ある夜(よる)、5人は森(もり)の大(おお)きな木(き)のしたでねむっていました。そこへトロルがとおりかかり、ねむっている男(おとこ)たちとぴかぴかの楽器にきづきました。「うたって、おどって、きっとたのしいぞ」とトロルはおもい、5人(にん)を棒(ぼう)でつついたり、けとばしたりしました。でも、みんなは、目(め)をさましません。怒(おこ)ったトロルはしっぽをふりまわし、おかしなことばをつぶやきいってしまいました。
 朝(あさ)になり5人が演奏をはじめると、楽器からへんな音(おと)が…。
  えほん



今井恭子/文 岡本順/絵 BL出版

 カエルのお医者(いしゃ)さん、キダマッチ先生(せんせい)の病院(びょういん)には、看板(かんばん)ひとつありません。なのに、朝(あさ)から夜(よる)まで、夜から朝まで患者(かんじゃ)がやってくるのです。先生はひょうばんの名医(めいい)だからです。
 さいごの患者(かんじゃ)が帰(かえ)った真夜中(まよなか)のこと、ドアをつきやぶるようにして、コウモリのおじさんが飛(と)びこんできました。森(もり)で木(き)にぶつかってつばさが血(ち)だらけです。先生はつばさをぬうことにしました。つばさのやぶれをミシンでぬうというのです…。それからやってきたのはキリギリスに、トカゲのおくさん。
 キダマッチ先生の病院は今日(きょう)も大(おお)いそがしです。
  低学年から



フィリパ・ピアス/作 アントニー・メイトランド/絵 前田三恵子/訳 徳間書店

 ロンドンの町(まち)の、高(たか)い家(いえ)のてっぺんのへやにコルクおばあさんが住(す)んでいました。家族(かぞく)がいないおばあさんは、ねこのピーターとなかよくくらしていました。町(まち)かどでふうせんを売(う)り、おばあさんとピーターでどうにかくらしていました。
 あるとき悪(わる)い天気(てんき)がつづき、さかなのねだんが高(たか)くなり、ピーターはさかなをもらえなくなりました。さかながほしいピーターは、家(いえ)をとびだしてしまったのです。ピーターは、帰(かえ)ってきませんでした。おばあさんはしんぱいしているうちに、どんどんやせていきました。
 ある強(つよ)い風(かぜ)がふく日(ひ)、ふうせんをたくさんもったおばあさんは、からだが上(うえ)へとまいあがり、ゆっくりのぼりつづけて…。
  中学年から



斉藤倫/著 まめふく/画 偕成社

 わたしの名前(なまえ)は、カモメ。港町(みなとまち)の診療所(しんりょうじょ)で助(たす)けてもらいフジ先生(せんせい)の飼(か)いねこになった。
 ある夜(よる)、沖(おき)でちいさなあかりがゆれた。それは一艘(いっそう)の船(ふね)で、噴(ふ)きあがる炎(ほのお)で燃(も)えながら港(みなと)に入(はい)ってきた。フジ先生は燃(も)えさかる船(ふね)にとびつき消(き)えた。人びとが集(あつ)まる中(なか)、先生が胸(むね)にかかえていたのは、毛布(もうふ)にくるまれた赤(あか)ん坊(ぼう)だった。かぼそい声(こえ)で泣(な)く赤ん坊は左手(ひだりて)をかたくにぎりしめたままだった。 
 この島(しま)のちかくだけでとれる、シアンという青色(あおいろ)の巻貝(まきがい)がある。助(たす)けだされた赤ん坊は、シアンと呼(よ)ばれることになる。左のにぎりこぶしがその貝(かい)にそっくりだった。けど、シアンのその左手は、にぎりしめられたまま、まるで巻貝のようにひらくことはなかったんだ。シアンにはふしぎな力(ちから)があった。それは…。
  高学年から