『嵐の中で踊れ』
一木 けい/著 NHK出版
台風の接近により避難所となった体育館へ、過去に傷や後悔を抱えた中高生や大人たちが集まります。素直になれない高校生の厳、夫婦関係に悩む詩伊、忘れられない恋人を引きずっている山内。人前でマスクを外せない中学生の小梅、などなど。様々な登場人物が一番合いたくなかった黒歴史と思える相手に、夜の嵐の避難所という閉じ込められた空間で再会してしまいます。それが止まっていた時間が動き出すきっかけとなり、それぞれが過去と向き合うことになります。読んでいると「こっちがこっちで」と、棒線と矢印を引いてみたくなります。
『川がつくった川、人がつくった川 わたしたちにとって川とは何か』
大熊 孝/著 農山漁村文化協会
みなさんの家の近くにある川は何川でしょうか?伊万里川?有田川?佐代川?波多津川?その川はどこが源流でしょうか。どんな生物がいるのでしょうか。川の淵と瀬では流れの速度が違い、生物の住み分けにも関わっているようです。本書は水の性質や川の役割、洪水と水害の違い、川を守るための取り組みなどを、専門知識がなくても理解できる言葉で解説しています。さらに、河川法の改正や流域治水法といった近年の動きにも触れながら、人と川とのより良い関係を考えます。ただ流れているだけの存在ではなく、私たちの暮らしや自然と深く結びついていることがわかります。
『雲がおしえてくれること』
レイチェル・カーソン/文 ニッキ・マクルーア/絵 千葉 茂樹/訳 あすなろ書房
―雲は、空に書かれた風のことば―
空、海、水蒸気が回りながら世界が作られています。雲は、地球に生きるすべてのものにとって、なくてはならない現象を目に見えるかたちで教えてくれます。「沈黙の春」「センス・オブ・ワンダー」でおなじみのレイチェル・カーソン氏の強くあたたかい言葉と、切り絵作家のニッキ・マルクーア氏の繊細な切り絵とやわらかい色使いが絶妙です。人間は自然の中で生かされていると改めて思える一冊です。
『英国の怖い家』
織守 きょうや/文 山田 佳世子/イラスト エクスナレッジ
幽霊の出るお城などはよく聞きますが、本書は英国(イギリス)各地にある、いわくつきの建物。民間の幽霊屋敷となると、宿屋や劇場、個人宅とバラエティに富んでいます。少なくとも15人の幽霊が目撃された屋敷。灰色の男の幽霊が現れた公演は大ヒットするという劇場。19世紀に亡くなったイギリスの文豪が今も住み続けている博物館。などなど、一見怖そうに見えますが、歴史的背景や建物にまつわるエピソードまで読んでみると、ちょっとおもしろいと感じてしまいます。その街に住んでいる人たちの生活や文化が見えてきて、お話を読んでいるようです。