平成24年2月号



中川 なをみ/著 くもん出版

 江戸時代後期、大阪にいた学者で蘭学医“中天游(なかてんゆう)”の物語。
ひたすらに「知りたいこと」を追求し続けた天游は、名医と呼ばれた愛妻さだの助けを受けながら、医学にとどまらず、物理学、天文学、数学など自然科学の分野を切り開いていった。
天游が開いた「思々斎塾」には、16才から4年間勉学に励んだ後の緒方洪庵が育ち、幕末から明治期の歴史の流れの中で日本を支えた多くの人物を生み出し、後世に欠かせない役割を果たしている。
人との関わりを大切にして、無邪気に、思い通りに生きた、天下一幸せな男の人生。



佐和 みずえ/著 汐文社

 武雄市に日本にただ一人の女子高校生鷹匠が住んでいます。タカなどの猛禽類を飼いならし狩りなどに使う人が「鷹匠」です。
石橋美里さん17才は、ひなの時から育てたタカの「モモタロー」と一緒に、果樹園のカラス退治や、重要文化財の建物をフンで汚してしまうハトを追い払うなどの仕事をしています。
生きたヒヨコを餌にする「モモタロー」の世話も、美里さんは一人でやっているのです。
また、唐津の諏訪神社で行われる「鷹放ち神事」を毎年任されて、美里さんは日本の伝統文化の継承と、絶滅危惧種の環境問題にまで思いを馳せています。



坂本 光司/著 PHP

 「悩みやストレスを抱える人が最も少ない県は?」沖縄県。「一日のくつろぎ時間が一番長いのは?」大阪府。「一世帯当たりの貯蓄額が高いのは?」三重県。これは、生活・家族、医療・健康など4つの部門から40の指標で各県の幸福度を調べたランキングです。 さて、佐賀県は、全国5位。正社員率が高く、障害者にやさしい、明るい展望が開ける、住みやすい県との評価がされています。
しかし、著者はこれらのデータから日本全体を考えるとき、経済を優先するよりも、ブータン国王が提唱した「国民総幸福度(GNH)」を伸ばす国づくりを進め、生活の満足度を高めようと呼びかけています。



山内 明美/著 イースト・プレス

 昨年の3月11日。あの日、震度7の大地震と大津波によって廃墟となってしまった場所。
愛する人を失ってしまったこどもたちへ、宮城県を故郷に持つ若き著者が語りだしました。
東北は歴史の中で、くり返しくり返し大津波や地震、豪雪、火山の噴火や飢饉に見舞われてきた土地でした。東北の地層深くには、癒しがたい、いくつもの「傷つき」が眠っているのです。現在も大学で歴史社会学を学んでいる著者は、自身の祖父・祖母から聞いた話も交えながら、東北の地を、これからどのように復興していけば良いのかを、特に、将来を託す若い人々に力強く訴えています。