平成25年2月号



藤沢優月/著 金の星社

 船は社会の縮図であり、人生にも似ています。限られた空間で、個性も立場も国籍も違う人々が、協力し役割を果たしている社会。長さ336メートル・高さ61メートル、日本・アジア・ヨーロッパを77日間かけて巡っている巨大コンテナ船の「オルフェウス」。日本人船長の下、ベトナム人・フィリッピン人の22人が乗組員です。
この船に乗船し、著者が共に航海した日常を通して、働くということ、人とともに生きるということ、真剣な仕事は、たくさんの大切なものを人生の時間の中に連れてきてくれること、そして世界は広いことを伝えています。



内田麟太郎/作 岩崎書店


 うさぎ  はねる
 うさぎは  ねる
 どちらも  いいね
これら40篇からなる内田麟太郎さんの詩集の中には、言葉あそびや自然の中に観るほんのちょっとした花や虫の声、それに、母親を求め、恋しがる小さな子供のころの自分を書いたものなど、楽しいものや心の奥からの叫び等々が集められています。
著者の手による挿絵も、シンプルで楽しい出来栄えになっています。



鈴木直進/著 岩波ジュニア新書

 夕張メロンで知られる北海道の夕張市。財政破たんした夕張市を元気にしようと、2011年4月24日に全国最小年30歳の市長が誕生した。
東京都庁の職員時代に2年間夕張市に出向したことから、全国一高い高齢者率、全国最低の行政サービス、厳しい財政事情の夕張市長候補に、担ぎ出されたのです。
当時の東京都知事石原氏からも「勘違い野郎」と逆説的な応援をもらい、今もがんばっています。
「守っているだけでは、死んでしまう。」と若きチャレンジャーの挑戦の記録です。



松島俊也/著 朝日学生新聞社


 大切なものがぬすまれないように、かくし場所を変える小鳥のカケス。
仲の良いコウモリや、母から子へとエサの血を分け合う吸血コウモリ。こうした行動を起こす動物たちの心のスイッチは、どんな仕組みなのでしょう。動物の行動を見つめることは、やはり動物の一種である人間の行動を、深く見つめることにつながります。
鳥やサル・昆虫やライオンなどのさまざまな動物たちの行動から、想像する力、共有する力を身につけ、人間関係が複雑な現代の世界を生きるには、複雑な言葉で、相手を理解し続ける苦労を担うことだと、著者は述べています。