平成29年1月号



あさの あつこ/著 朝日新聞出版

 6歳年上のいとこがフルートを吹く姿にあこがれて、美由は中学に入るとすぐに吹奏楽部に入った。そして念願のフルートのパートについたが、思ったほど夢中になれずそれほど上達もせず、二年生の秋に辞めてしまった。高校生になり、吹奏楽はもうやらないと決めていたのに、「フルートとの相性が悪かっただけで、吹奏楽部を嫌いになるのはおかしい。」そう言われて、もう一度吹奏楽部に入部する決心をした。新たな楽器としてピッコロを選び、中学時代の挫折感をバネに吹奏楽に再挑戦する美由の物語。



ペーテル・エクベリ/作 晶文社

 おもしろい質問をします。「森で木が倒れて、そこにだれもいなかったら、音はする?」するにきまってるって思いますか?
哲学的に検証してみると答えはこうです。「そこにだれもいなければ音はしない。生まれた音波が音と認識されるには、耳と脳が必要だ。」



元永 知宏/著 岩波書店

 ドラフト1位に指名されたプロ野球選手がみな活躍するとは限りません。どの選手も将来を期待され、夢を追って頑張ったにもかかわらず、ひっそりと姿を消す人がでてきます。そんな元プロ野球選手6人のその後の人生を紹介する本です。38歳から修行を始めてイタリア料理のシェフになった元選手は、「同じ失敗を二度はしない。」ということを心に決め、料理を作り続けています。



まはら三桃/著 小学館

 希美は幼いころから親のいいつけを守り、人の話は目を見て聞き、忘れ物はしない、決まり事は守る、そんな模範的な子どもでした。
15歳の時、祖母に連れられて神社に行った時から、神主の仕事に興味を持ち始め、神道科のある大学に進みました。そして猛勉強をし、一般家庭出身のしかも女性神職ときわめてめずらしい就職をしました。一見順調に人生を歩んでいるように見える希美には、心にずっと閉じこめていた深い傷がありました。どうしてあんなことをしてしまったのか、魔が差したとしか言えない中学二年生のあの時のこと。



工藤 純子/著 講談社

 翔は母親を知らない。酒癖が悪くいつもぶっきらぼうな父親に何度も母親のことをたずねたが、何も教えてくれなかった。そんな父親とケンカが絶えず、翔は中一の時から実家の隣りのアパートで独り暮らしをしていた。 翔の夢は甲子園。そしてさらに目指す先は世界で活躍する一流プロ選手。そのために少し離れた野球部の強い中学校を選んだ。1年生の頃はボールにも触らせてもらえず、先輩の小間使いのようなことまでさせられた。このくだらない年功序列に不満をためながらようやく2年生になり、実力で勝負できる部活に改革しようとはりきったが、孤立してしまった。
家も部活も思う通りにならない翔が、くじけながらも前に進んでいく姿を描いた小説。