日活株式会社/編 文芸春秋 清楚・可憐の代名詞ともなった、吉永小百合の映画俳優デビュー65周年の記念企画です。巻頭に所収された本人直筆のメッセージには、「日活撮影所に初めて行ったのは、高校の入学式の日でした。制服から真赤なブラウスに着替えて撮影所行きのバスに乗ったのです。それからの日々は、日活が私のもう一つの学校になりました。(略)」と記されていました。60年代は「清純なお嬢さん」像を演じ続けていた彼女ですが、決して社命に動かされていただけではなく、映画という「学校」の中で先輩や仲間たちと充実した時間を過ごしていたことが、その表情から伝わります。また、共演女優との特別座談会で語られる世界は、まさに青春のものです。 (T.K) | 柴田 賢佑/著 白夜書房
自宅をごみ屋敷にしてしまった経験のあるお笑い芸人が、ごみ屋敷清掃のアルバイトを続ける中で出会ったごみ屋敷とその住人について語ります。 湧いた虫が表面を覆って冷蔵庫の色が分からない部屋の住人は一人暮らしの認知症の高齢者。バイトが忙しくて部屋がごみで埋まり、大好きなゲームができなくなったストレスで更にごみを溜めてしまったのは元気いっぱいの明るい若者。どこにでもいる人たちが、様々な事情で住まいをごみ屋敷に変えてしまった状況がうかがえます。 いつ誰でも自分の身に降りかかる可能性があるごみ屋敷問題。実際の事例からその現場を探ってみましょう。 (S.S) |
冨田 尚子/著 日本実業出版社
茶道は日本の伝統文化ですが、敷居が高くなかなか身近に感じにくいと思っている方もいるかもしれませんね。そこで気軽に始められるのがテーブル茶道。茶の湯の精神や作法を尊重しつつも、リラックスしてお茶の世界を愉しめます。お抹茶と茶筅さえあれば、ほかの道具はおうちにあるもので代用ができ、お茶菓子は和菓子だけでなく洋菓子ともペアリングできるところも魅力です。また、お抹茶は美容や健康にも効果的。心と身体を調和させる役割を果たします。 現代の生活に合わせたテーブル茶道で暮らしを彩ってみませんか。 (A.S)
| 松田 青子/著 PHP研究所
コロナ禍前後で変わったこと、変わらないこと。日常を彩るものは、少しずつ変化しますが、自分の芯は変わらないことを教えてくれる、心温まるエッセイ集です。 読書によって心に栄養を得た経験を綴った「読書は心にいい」や、左利きの著者にとってお気に入りの文房具が見つかったことを綴った「運命のペンとノート」など、忙しなく過ぎてゆく日々の中、些細な幸せや充実感を得ながら生活を送る著者の丁寧な暮らしが垣間見える1冊です。周囲を愛し、自分自身を労わりながら生きることの大切さを教えてくれますよ。 (A.K)
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佐々木 良/訳 万葉社 シリーズ大ヒット!現代の奈良弁で訳した万葉集の第三弾です。 今回は式部(現代の官僚)目線の歌が集められています。本誌で著者が「言葉そのものの訳ではなく、意味を重視している」と言っておられるように、#(ハッシュタグ)やマッチングアプリ、歩きスマホなど今の生活にあるものに置き換えて訳されています。1300年もの時間の距離があるとは思えない程の親近感がある訳で、歌った人の感情が溢れ出ています。 訳と歌が見開きで一度に読めるので、読み比べるおもしろさもあります。著者による補足が歌の情景をさらに鮮明にしてくれます。 (Y.M) | 稲垣 栄洋/著 辰巳出版 限られた音(文字)で心情や風景を表現する短歌や俳句は古くから人々を引きつけ、今でも身近なものとして、幅広い年齢層に親しまれています。 本書は、松尾芭蕉や小林一茶など、名の知れた歌人が詠んだ名歌、名句といわれる作品の鑑賞にとどまらず、その中に登場する生き物たちに注目し、生物学者の著者が、それらの秘密や生態の解説を試みたものです。 歌に詠まれた生き物の種類の特定、花の色と昆虫の関係、植物や昆虫の習性を知ることで、生き物たちに親しみがわき、句や歌と改めて出会いなおすことができます。 (Y.O) |