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おすすめの本
 

No.751  令和5年9月

『植物に死はあるのか』『竜ちゃんのばかやろう』
稲垣 栄洋/著  SB社

 大学で植物学を教える教授の朝の日課は、メールのチェックから始まります。ある月曜日、楠本という名の人物からメールが届いていました。その日から一週間にわたって毎日、植物に関する疑問が投げかけられます。それに答えようと教授は、多方面に知識をめぐらせ答えを導き出そうとしますが、考えれば考えるほど植物について分かっていないことに気づかされます。そして、改めて生物について向き合い、生きることについても思いを馳せるのでした。
 物語調で植物の世界を面白く解説しています。

(Y.O)
上島 光/著  KADOKAWA

 昨年の5月に天に旅立った、ダチョウ倶楽部・上島竜兵さん。体を張った熱々おでんリアクション芸や、おなじみの“くるりんぱ”は、今でもみんなに愛されています。
 上島さん夫婦の出会いと別れ、「竜兵会」での思い出や志村けんさんとの絆、そして周りに支えられながら歩んだ、失意の「あの日」から今日まで。竜兵さんを1番近くで支えてきた、妻である光さんが語るエピソードからは、彼がたくさんの人に愛されていたことが伝わってきます。
 「最期まで竜ちゃんの周りは笑いでいっぱいでした」と語る光さん。竜兵さんと過ごした28年間を、愛を込めて綴ります。   
(A.K)

『ヨルノヒカリ』『校閲至極』
畑野 智美/著  中央公論社

 28歳の光は、台風の日の夜に“従業員募集 住み込み可”の貼り紙を見て、木綿子が営む手芸用品店に住み込みで働くことになります。
 恋人ができたことがなく恋愛感情がわからない35歳の木綿子と、“普通の生活”をしたことが無い光。そんな雇用主と従業員の、一つ屋根の下の暮らしが始まります。
 自身の個性や感情を抱え込みながらも、光の事情を受け止めて働かせるなど、互いに理解しあう二人と、周囲の人々の様子が描かれています。著者による10年ぶりの書下ろし長編小説です。

(M.O)
毎日新聞校閲センター/著  毎日新聞社

 原稿の文章や地図、写真などを調べ、誤りや不備な点を正す「校閲」。本書は、『サンデー毎日』で連載している、新聞の校閲記者のコラムを書籍化したものです。
 漢字やひらがなの適切な使用方法、見逃してしまいがちな誤字や表記ミス、意味を取り違えやすい言葉など、普段何気なく読んでいる文章に潜む誤りを、校閲記者の鋭い感性で見抜き、校正しています。事件報道やジェンダーなどの繊細な事柄には、固定観念につながる表記を取り除き、適切な表現を模索していくことも校閲の仕事に含まれます。日本語の面白さや、言葉の持つ力についても考えさせられる一冊です。

(S.M)
『未完の天才 南方熊楠』『スポーツの価値』
志村 真幸/著  講談社

 子ども時代から晩年に至るまで、国内外の膨大な書物を書き写し、「人類史上もっとも字を書いた」ともいわれる南方熊楠。海外の学術誌に数多くの論文を投稿し、昭和天皇に生物学の御進講(講義)もおこなっています。また、伊万里とも縁深い「森永ミルクキャラメル」の空箱に粘菌の標本を入れて昭和天皇に献上し、周囲を驚かせたそうです。
 民俗学、生物学、比較文化学、語源学、そして神社合祀反対運動による自然保護…。枚挙にいとまがない程の学問を習得しながらも、その研究を代表する成果物を残さなかった熊楠の生涯を知る一冊です。
(S.S)
山口 香/著  集英社

 東京オリンピックやワールドカップで熱狂的な応援を繰り広げ、口々に「感動をもらった」という日本人たち。しかしスポーツがもたらす本当の感動は、そのような一過性のものではないはずです。では、真のスポーツの価値とはどんなものなのでしょうか。
 今までの、努力や根性で語られていたスポーツから、自由で柔軟性があって、楽しいものに。そんなイメージへと変換させていく必要があると著者は言います。
 今こそ、平和への架け橋として、そしてジェンダー平等へのきっかけとして、スポーツが持つパワーを考えてみませんか?

(Y.N)