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おすすめの本
 

No.743  令和5年5月

『音楽と生命』『ビジュアル天文学史』
坂本 龍一、福岡 伸一/著  集英社

 二十年来の交流があった、音楽家の「教授」こと故・坂本龍一さんと生物学者の福岡伸一さんの対談をまとめた本書。
 テーマとなるのは、ロゴス(人間の考えや言葉や論理)とピュシス(我々の存在も含めた自然そのもの)の対立。福岡さんはロゴスで構築されない、ありのままの生命観を動的平衡と語り、教授は2017年のアルバム「async(エイシンク)」を通しピュシスの中にある音楽を語り、その思索は遺作となった2023年のアルバム「12」へと続きます。
 二人の深遠な対談は、私たちはいずれ死を迎え自然に還る、円環する生命であることを教えてくれます。 
(K.A)
縣 秀彦/著 岡村 定矩/監修 緑書房

 1万年以上前にラスコー洞窟に描かれたのは動物だけでなく、星や月と思われるものもあるそうです。その頃も、人類は空を見上げて宇宙に思いを馳せていたのでしょうか。
 この本に紹介されているのは、天文学の始まりとなる暦の策定や、天動説の発見といった歴史的に有名なものもあれば、日本の小惑星探査機「はやぶさ」と「はやぶさ2」など、最近話題となったものも含まれています。また、一つの項目を見開き2ページに収め、写真や図を多用して、読みやすくしています。
 古代から現代まで天文学に大きな影響を与えた事項を分かりやすく解説する本を作りたい、と考えた著者の想いが込められた一冊です。
(K.S)

『ポテトチップスと日本人』『スマホ依存が脳を傷つける』
稲田 豊史/著  朝日新聞出版

 日本のジャガイモ加工食品の7割以上がポテトチップスだって知ってましたか?スナック菓子の代名詞、ポテトチップスと日本人の関わりについて書かれているのがこの本です。
 戦後日本国内で売り出されるも、戦中の食糧難で芋類ばかり食べていた国民からは「ジャガイモなんてもう食べたくない」と敬遠されたり、時代とともに変化する日本人の味覚に翻弄されたり、奥深い歴史があります。巻末にはなんと「国内ポテトチップス年表」まで!
 友人達と投票と審査を行い、毎年の「ポテチ・オブ・ザ・イヤー」を決めるほどポテトチップスが大好きな著者が、国民的お菓子の歴史を辿ります。
(S.S)
川島 隆太/著  宝島社

 スマホは薬物やアルコールのような依存症をもたらし、容易にやめることができない中毒になる「デジタルドラッグ」の危険性に気づいてほしいと、脳科学者である著者は警鐘を鳴らしています。脳が小学6年生のまま発達が止まっている中学生も出ているという実例を挙げ、子どもたちの脳に悪影響を及ぼすとの研究結果を発表しています。しかし、もうダメだとあきらめる必要はなく脳を再生する方法も教えてくれます。
 スマホの危険性は日本だけでなく、世界でも問題視されています、スマホがもたらした便利すぎる生活に疑問を持つことも必要だと思わされる一冊です。
(Y.K)

『生きるために読む死の名言』『「おかえり」と言える、その日まで
伊藤 氏貴/著  ダイヤモンド社

 あの人が遺した魂の言葉を、改めて読んでみませんか?そこには壮絶な覚悟と、生きる喜びの発見があるかもしれません。これは各界で活躍した99人が、この世に遺した「死についてのことば」を集めた一冊です。
 誰もが「死」について考えるとき、裏を返せば「生きる」ことについて考えています。だからこそ、今を生きる私たちに必要なものなのかもしれません。そんな言葉は、したたかだったり、いさぎよかったり、はかなげだったり。
 どう死ぬのかは、どう生きるのかでもある…。ふしぎと力がわいてくる一冊です。
(Y.N) 
中村 富士美/著  新潮社
 
 最近では、ひとりキャンプやグランピングなどの新たなスタイルのアウトドアが注目され、四季を問わず海や山のレジャーは人気です。しかし、その一方で事故や命を落とす危険性も伴います。著者は看護師として救急医療に従事していた時、山岳救助に携わる男性との出会いをきっかけに、看護師の傍ら、山岳行方不明遭難者捜索活動とその家族のサポートを行う民間の捜索団体を立ち上げました。これまでに依頼を受けた中から、6つの捜索活動の実際の様子を綴っています。
 どんな形であれ、山岳遭難者が家族から「おかえり」と迎えられるようにと活動する、著者たちの存在の大きさを実感することができます。
(Y.O)