ぼく、さとるは去年(きょねん)、岡山県(おかやまけん)に引(ひ)っこしてきた。いえは、奉還町(ほうかんちょう)商店街(しょうてんがい)をぬけたすぐ先(さき)。商店街にあるまんじゅう屋(や)の息子(むすこ)、あつしと仲良(なかよ)くなったけど、あつしんちのとなりのおっちゃんが、ちょっと苦手(にがて)だ。あいさつしても反応(はんのう)はないし、にこりともせず朝(あさ)から晩(ばん)まで、腕組(うでぐ)みをして店(みせ)に立(た)っている。
だけどある時(とき)、おっちゃんの立っていない日(ひ)がおとずれた。入院(にゅういん)しているという。お見舞(みま)いをよろしくと、「たねやのノダ」のおばあちゃんからたのまれたのに、あつしは店番(みせばん)を理由(りゆう)についてこなかった。ぼく一人(ひとり)で、おっちゃんのいる病院(びょういん)に向(む)かうはめになってしまった。