令和4年度3月号



  久保田香里/著  アリス館
 
   「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の
      かけたることも なしと思へば」
藤原道長がこのように歌ったころのお話。京の都に右大臣藤原実資の娘、千古は「かぐや姫」と呼ばれ、大事に育てられていました。成人の儀式「裳着」を控え、父に外出禁止令を出されますが、千古は好奇心のかたまりでした。染物に興味を持ち、実際に工房を訪ねたり、源氏物語に出てくる衣装を再現してみたり、中々のチャレンジャーなお嬢様です。「かさね」という色の重なりを楽しむシーンは、今の10代の人たちには共感が持てるかもしれません。








『グリマー・クリークの奇跡』

  ステイシー・ハックニー/作 評論社

 グリマー・クリークの町では、毎年誰かに「奇跡」が起きます。それは100年も前から。奇跡の起こり方は様々で、きっとどこかに秘密があるはず。映画監督になりたいという夢を持つ主人公のロージーは、その謎をドキュメンタリー映画として撮影したいと思っています。小さい頃に生き別れた俳優の父にも連絡が取れ、上映に来てくれるといいますが、思ったように撮影はうまくいかず…。この町で起こる奇跡の正体は何なのか?ロージーはある一つの答えにたどり着きます。物語に登場するお菓子もとてもおいしそうに描かれ、こちらも注目です。(巻末にレシピあり)




『女王様のワードローブ』

  ケイト・ヒンドレー/絵 
ジュリア・ゴールディング/文  BL出版 

 昨年9月に96歳でこの世を去られたエリザベス女王がイギリスの女王として即位したのは25歳の時でした。皆さんが知っている姿はおばあちゃんの姿ですよね?この絵本は70年にも及び国を治めてきた日々を、服を通して時代とともにたどります。第二次世界大戦中は王室の代表として軍に入隊し、運転手や整備士の訓練をうけ、つなぎを着てタイヤ交換も経験しています。誕生パレードの最中に、暴漢に襲われ、乗っていた馬を見事にさばいた逸話も紹介されています。






『プロの履歴書からわかる 生きものの仕事』

  松橋利光/著   山と渓谷社  
 
 動物が好きな人、虫が好きな人、自分の家で飼っているペットを溺愛している人、その中には生きものにかかわる仕事がしたいと思っている人がいるかもしれません。
「生きものの仕事」と一言で言っても、本当にたくさんあります。獣医師、トリマー、調教師…等々。この本では生きもののプロといわれる人達が、どのような学校を出て、どのような経緯でその仕事に就くことができたかや、将来その仕事をしたいと思う人へのアドバイスなどを多数紹介しています。




『はじめての動物地理学』

   増田隆一/著    岩波書店  

 「動物地理学」とは、ざっくり言えば、どこにどんな動物が分布しているのかを解き明かすことです。
「なぜパンダは中国にしかいないの?」「日本にコアラはいないの?」など考えたことはありませんか?その動物がその地域にいること、いないことにはそれぞれの事情があるようです。動物たちの祖先は生きていくために様々な経験と移動を繰り返しながらその地にたどり着き、子孫を残してきたのです。人間と同様、動物も進化を続けていけば、今では無理だと思っても、身近な場所で仲良く暮らせる日が来るかもしれません。