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おすすめの本
 

No.735  令和4年12月

『失踪願望。~コロナフラフラ格闘編~』『読書道楽』
椎名 誠/著  集英社

 失踪願望―。着地点を見失い、思考の地すべりのようなものに飲み込まれていく脆弱性。ともすれば、思考のブラックホールに吸い込まれてしまう…そんなよるべないテーマのエッセイ集です。
 コロナで一変した世界を嘆き、迫りくる老いに抗い、やがて感染し生死の境をかいくぐります。小説でもフィクションでもなく、いつの間に吸い込まれていくような“思いもよらぬモノガタリ”を発見した気持ちになった、と綴ります。
 シーナさんの「サイアクときどきサイコウ」の、ある1年の記録です。
(Y.N)
鈴木敏夫/著  筑摩書房

 スタジオジブリのプロデューサーとして有名な鈴木敏夫さんの読書遍歴を対話形式で追っていく本書。その蔵書数はなんと8800冊、幼少期に読んだ少年漫画や児童文学、思春期の大衆小説、大学時代の詩と文学、社会人になって目覚めたノンフィクションなど、今に続く厖大な読書量と知識量には驚かされるばかりです。
 心に残る本や読んだ当時の世相、文化論から人生論に余談まで話は多岐に渡ります。著名人との幅広い交友関係や宮崎駿さんとのエピソードも魅力的な一冊です。
                 (K.A)
『「ついで掃除」できれいが続く』『五島列島』
井上めぐみ/著   婦人之友社

 著者は、家事代行を始めて10年のキャリアで、NHKの情報番組あさイチでも活躍されています。
 「掃除が苦手。」とお悩みの多くの方に、基本的な掃除の知識や日常での実践方法を伝えたいという思いのこもった一冊です。普段の掃除は頑張らなくても60点ぐらいにして、少しの努力で100点の状態をキープできる方法や掃除道具の使い方、汚れの特徴に合わせた洗剤の使用方法も教えてくれます。
 あっという間に読めるページ数と写真付きで、これからのシーズンにピッタリ、早速ためしたくなります。
                 (Y.K)
山本 一/写真  求龍堂

 日本風景写真協会の発起人であり、現在は名誉会長を務めている88歳で現役の風景写真家による写真集です。映画『悪人』のロケで使われた大瀬埼灯台を筆頭に、島のあらゆる場所で撮影しています。海、山、植物、そして教会などの建物といった被写体に太陽の光が絡まって、美しい風景を作り出しています。
 152の島で構成される五島列島はNHK朝の連続テレビ小説の舞台にもなり、注目を集めています。何度も訪れて、撮りためた写真の中から絶対に残しておきたいものを厳選したという一冊です。これを見ればきっと五島列島へ出かけたくなるに違いありません。
                  (K.S)

『世界の家の窓から 77カ国201人の人生ストーリー』『僕らは「きょうだい」で起業する』
主婦の友社/編  主婦の友社
           
 コロナ禍初期、各国で隔離政策やロックダウンが始まり、人々は家の中に閉じ込められ、孤立することになりました。そのような状況の中、グラフィックデザイナーのバーバラさんは、自宅の窓からの風景を写した写真1枚にコメントを添えて投稿し、世界の人々と共有するという趣旨をかかげ、Facebook内に「VIEW FROM MY WINDOW」というグループを立ち上げました。趣旨に共感する人々にシェアされ、今でも世界中から写真が投稿されています。本書は英語版書籍をベースに、新しい投稿を加え、日本で独自に編集したものです。遠い国々の風景を新鮮に感じるとともに、誰かにとっての大切な場所や思い出を教えてもらっているような、ほっこりとした気持ちになる一冊です。
                 (S.M)

 
太田 信介/著  梓書院

 著者の弟は、知的障がいを伴う重度の自閉症。そんな弟を嫌いになることはなかったけれど、著者は思春期になるにつれ弟と距離を置くようになり、と同時に、結婚や就職など将来の不安を抱きました。親元を離れ就職し、6年ほどして実家に帰った時に、弟が絵に興味を持ち、描くことを楽しんでいることを知りました。弟の成長は家族に変化をもたらし、著者の転機となりました。
 大企業から脱サラして弟の絵を売り出す会社を起した著者が、これまで抱いてきた障がい者の家族という思いを振りかえると共に起業の苦労や経験を綴っています。さらに、障がい者を兄弟姉妹に持つ「きょうだい」と呼ばれる人たちへの熱いエールを送っています。
                 (Y.O)