令和4年度12月号



  小手鞠るい/著  さ・え・ら書房
 
   ―母は、黒い子であるわたしを産んで、捨てた―
日本人の母とドミニク人の父を持つエミリ。彼女は養母「かすみちゃん」に育てられます。肌の色が黒いというだけで、母の国日本では小さいころからいじめられ、いわれのない差別、恋人の裏切りに苦しみます。たくさんの涙を流し、心が傷つき絶望しても闘ってきた彼女の旅立ちまでの姿を描いた物語です。心情とともに寄り添う詩も注目です。







『数奇な航海 私は第五福竜丸』

  川井 龍介/著   旬報社

 それは1954年3月1日。午前6時45分頃のことでした。暗かった空が急に明るくなり「西からお天道様が上がったよ」と話しつつ、乗組員たちはただならぬ異変を感じます。「ピカドンだ」と誰かが言いました。
ビキニ環礁で行ったアメリカの水爆実験により被爆した第五福竜丸とその乗組員たち。死の灰を浴びた船長の久保山さんはおよそ半年後にこの世を去ります。これは第五福竜丸の数奇な生い立ちから、被爆後に忌み嫌われ、捨てられ、その後の復活までを描いたノンフィクションです。核の脅威を感じる今こそ読んでほしい一冊です。



『タガヤセ!日本〈農水省の白石さん〉が農業の魅力教えます』

  白石 優生/著     河出書房新社

 読んだあなたは、現代日本の農業技術や農家さんが持つ新しい感覚に、「え?何か楽しそう。」と思えるかもしれません。「推し農家」から収穫ロボットまで、ワクワクできる情報がたくさん詰まっています。池井戸潤さんの「下町ロケット」シリーズに出てきた農家の救世主、無人トラクターも登場しています。YouTubeチャンネル登録15万人の「BUZZ MAFF」でおなじみの白石さんが徹底解説!





『笑いの力、言葉の力
   ~井上ひさしのバトンを受け継ぐ~』

  渡邉文幸/著   理論社
 
~だけど僕らはくじけない 泣くのは嫌だ 笑っちゃおう 進め! 
                    ひょっこりひょうたん島~
という歌のフレーズを聴いたことはありますか?山形県出身の劇作家である井上ひさしさんは東日本大震災があった前年2010年に亡くなられました。「言葉の魔術師」とも言われ、多くの人に「笑い」と希望を与えた彼の原点とは?脚本家になるという夢を志半ばで断たれた父のバトンを受け継いだ、井上ひさしさんの作品に込められた笑いや言葉の中にあるメッセージを一緒に読み解いてみませんか?






『“正しい”を疑え!』

 真山 仁/著  岩波ジュニア新書 

 タイトルが独特な岩波ジュニア新書をぜひ見に来てください!敬遠されがちですが結構面白いんです。
 今あなたが正しいと思う情報は本当に正しいのでしょうか?安全神話と言われた原発は、震災によってそうではなかったことが証明されました。様々な情報であふれている現代では、日々のニュースでさえも巧みに操作されている可能性だってあるはずです。著者である真山仁さんは情報をうのみにせず、流す相手の意図を知っていく必要があると訴えています。まずは疑うこと。そのノウハウを身に着けるためには!?