予約について

おすすめの本
 

No.730  令和4年9月

『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』『父から子に伝えたい戦争の歴史』
周東 美材/著  新潮社

 1920年代、童謡を「あどけなく」歌う子ども歌手が人々の心をとらえます。初期の宝塚歌劇は「少女歌劇」と呼ばれ、オペラという外来音楽を「子どものパフォーマンス」として昇華したものでした。1971年に始まった「スター誕生!」では、TVに出演することがデビューよりも先行し、スポットライトを浴びたのは学校に通う「一般」の少年少女たち。その他ジュニア時代から着目される「ジャニーズ」や制服を着る「アイドル」。いずれもその「未熟さ」にどこか魅力を感じます。本書では「未熟さ」を基調とし、独自の文化を生み出す日本型ポピュラー音楽の歴史を読み解きます。
                 (M.N)
半藤 一利/著  SBクリエイティブ

 自称「歴史探偵」の作家半藤一利は、幕末・明治期の「近代日本史」や、自分が生きた「昭和史」と向き合い続けました。歴史の生き証人たちへの徹底した取材、細部にわたる史料の検証を重ね、「昭和」とは、「あの戦争」とは何だったのか、という本質的な問いに取り組み続けた生涯でした。本書は膨大な著作のエッセンスを抜き出し再編集したものです。全5章の内容は、歴史から何を学ぶべきか、歴史とともにいかに生きたか、過ちを二度と繰り返さないために等、各文章からは著者の思いがあふれてきます。終戦から77年、今の世界の現実に、著者が生きていたら何を思うのでしょうか。
                 (T.M)
『頭の良い人がやっている「調べ方」究極のコツ』『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』
齋藤 孝/著  学研プラス

 
今の時代、必要とされるのは知識だけではなく、正しい情報を探して考える能力です!政治も世界情勢も経済も、現実に目を向け、調べ、判断することが高度な知性を獲得できると著者は言います。
 そのために必要なのは「調べる力」と「情報発信」。スマホで検索するだけではなく、図書館や新聞の活用、説得力のある統計やアンケートの収集など、多岐にわたります。
 正しい情報は正しい判断につながり、確実な成果となります。あなたも「調べ方」のプロになりませんか?
                 (Y.N)

岡崎 雅子/著  実業之日本社

 
「アザラシが好きだ。」本書の内容を一言で表すと、この一文に尽きる。冒頭に書かれていますが、まさにアザラシ愛が溢れた一冊です。著者は、北海道紋別市にある日本で唯一のアザラシの保護施設「オホーツクとっかりセンター」の飼育員です。幼い頃にアザラシのぬいぐるみを手にした時からアザラシに夢中になり、アザラシに係わる仕事を目指します。紆余曲折を経て現職に就き10年。アザラシの生態を紹介するとともに保護活動の様子、野生動物の生と死に向き合う日々の中での苦悩や葛藤などを綴っています。
                 (Y.O)  
『日本にレイシズムがあることを知っていますか?』『音楽が鳴りやんだら』
原 由利子/著  合同出版

 レイシズムは、Race(人種のほか、民族・出自など)は人の特性と能力を決定づける主な要因であり、その違いが特定のRaceの本質的な優位性を生じさせると信じる差別のことです。科学的に人種間の優劣が存在しないことは証明されていますが、レイシズムを放置すると、ターゲットにされた集団への偏見がエスカレートしていき、ジェノサイドにまで至ります。
 日本にもレイシズムの歴史があります。社会が何をしてきたのか、差別を受けてきた人々がどう声を上げ、行動してきたかを知ることで、日本社会がこれまで直視してこなかったレイシズムを克服し、今できることは何か考えてみませんか。
                 (S.M)

高橋 弘希/著  文藝春秋

 作曲の才能に恵まれた葵は幼馴染と結成したバンドでメジャーデビューできることに。が、条件として提示されたのは演奏技術が足りないメンバーを切り捨てることでした。幼馴染との友情と、理想の音楽を鳴らしたいという自身の願望の狭間で悩みながらも、ロックスターの道を駆け上っていく葵。それは同時に、得るものと同じだけ何かを失う茨の道でもありました。葵にとっては音楽でしたが、人は自分が追い求めるもののために、果たしてどこまで人を、地位を、尊厳を捨て去ることができるのだろうか。音楽の完成形を追い求めつづける葵の姿は、憧れる反面恐ろしくもあります。「音楽が鳴りやんだら」葵の心に平穏が訪れるのを願わずにはいられません.
                 (Y.M)