伊東 潤/著 徳間書店
故郷青森県を離れ、東京で派遣社員として働く主人公、紗栄子の元に「兄が倒れた」との知らせが入ります。紗栄子の兄は畳屋で働きながら、祭りの時期にはねぶたを制作する「ねぶた師」です。しかし、兄の脳には悪性の腫瘍ができていて、一刻も早く治療を行わなければなりません。治療を優先すれば、ねぶたを制作することができないという葛藤の中、ねぶたを作りたいという兄の強い思いを聴き、紗栄子は仕事を辞めて、故郷に戻り、兄をサポートしながら、大賞を獲ることを目指します。ねぶた師だった父から教えを受けた2人のきょうだいは、ねぶたを作り上げることができるのでしょうか。青森県民のねぶたにかける熱い思いが伝わってくる作品です。 (K.S)
| 國枝 すみれ/著 毎日新聞出版
ドラッグ、人種差別、性犯罪など、アメリカが抱える社会問題を取材する中で、著者は様々な背景・立場を持つ人々に出会います。スラム、白人至上主義組織 KKKの巣窟、温暖化で沈む島、各地に根を張り生きる人々の姿からアメリカの現状を読み解きます。 ボーン・上田記念国際記者賞を受賞した著者の、ジョージ・ウェラーの「幻の原爆ルポ」や、核実験に従事した被ばく退役軍人、核実験場や核施設の近くに住んでいた「風下住民」への取材は特に読み応えがあります。アメリカに対する固定観念が崩れるとともに、アメリカという異なる世界に浸ることで日本についても客観的な視点を提示してくれるルポルタージュです。 (S.M)
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