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おすすめの本
 

No.727  令和4年7月

『よくも言ってくれたよな』『空想科学読本 1』
中川 淳一郎/著  新潮社

 
空気を読んだり、同調するのが得意な日本人たち。煽り煽られ、流されていくその先には、どんな未来が待っているのでしょうか?
 コロナに振り回され、委縮してきた生活。世界情勢も経済も、大きく変化しているのに、その流れに逆行していないかと、著者は指摘します。
 さらに、賛否両論の東京五輪、マスク会食の“お作法”など、コロナ禍で生まれた数々のトレンドと、それらに踊らされる日本人の「お気持ち」を痛快に批判しています。
 Web編集者として第一線で活躍したのち、唐津市に移住した著者の「コロナ狂騒観察記」です。
(Y.N)
柳田 理科雄/著  KADOKAWA

 漫画やアニメ、昔話などはまさに人間の想像力が生み出した空想の世界。その中で起きていることを著者が科学の眼で検証してきました。その事例をまとめた『空想科学読本』が'95年に出版され、著者の予想を上回る反響を呼び、以来検証事例は千を超えています。本書は、これまでの事例から厳選し、改めて手を加え、全面的な見直しをしたものが収録されています。「ドラゴンボール」や「ポケモン」など作中のキャラクターたちの稀に見る力を数値化したり、動物たちが人間の言葉をしゃべる異常事態を検証したりと好奇心をくすぐられる新たな空想の世界が広がっています。    
(Y.O)
『ギリヤーク尼ケ崎という生き方 91歳の大道芸人』『10,000tを動かす技術』
後藤 豪/著  草思社

 1968年、東京・銀座の数寄屋橋公園で創作舞踊を披露し、大道芸人として街頭デビューしたギリヤーク尼ケ崎さん。38歳の時でした。以来、パリやニューヨーク、北京など国内外を問わず、世界の地面の上で踊り続けます。昭和・平成・令和と社会が激しく移り行く中、観衆の「投げ銭」を糧に生き抜いてきました。そして今なお、難病を患いながらも踊りのさらなる高みを目指し、路上に立ち続けます。著者は、そんなギリヤークさんに魅せられて、長年取材を続けてきた新聞記者です。インタビューを重ねて引き出した飾らない言葉をもとに、伝説の大道芸人の軌跡をたどります。
(M.N)
岡田 晴彦/著  ダイヤモンド・ビジネス企画
ダイヤモンド社(発売)
 

 自社で設計・製作し、各種特許を所得しているさまざまなジャッキを用いて、全国各地の現場で活躍するプロフェッショナル集団である「オックスジャッキ」。知る人ぞ知る会社の2010年以降の活躍を本書では取り上げています。
 小さな力を大きな力に変換して数千トンの重量物を移動させるジャッキは、橋梁工事や屋根架設工事、災害現場など、人々の生活を支えるさまざまなインフラを構築しています。わずかなミスも許されない緊張感、限られた場所・限られた時間の中で働く社員たちの、仕事に対する熱意や誇りが伝わる一冊です。
 (S.M)
『無垢になる花たちのためのユートビア』『紛争地のポートレート 「国境なき医師団」看護婦が出会った人々』
川野 芽生/著  東京創元社

 戦争によって荒れ果てた地上を離れ、天上の楽園を探す目的で集められた七十七人の少年たち、純真無垢な魂を持つ少年たちは花の名前を与えられ、年をとることなく箱船での旅を続けます。ところがある日、白菫(しろすみれ)という少年が船から墜落。友人の矢車菊(やぐるまぎく)は、白菫の死の謎を追っていくうちに、この楽園行きの船に隠された秘密を知ることとなります。それはとても悲しく、痛ましく、やるせないものでした。幻想小説を読んでいるはずなのに、少年の身に降る痛みを自分のもののように受け止めてしまえるのは、この痛みが実感として現実に存在しうるものだからなのでしょう。少年の決断を見届けてください。
(Y.M)
白川 優子/著 集英社

 「国境なき医師団(MSF)」は、人種・宗教・国籍等にかかわらず、分け隔てのない平等な医療の提供が目的です。MSFに憧れた著者は36歳で念願叶い看護師として参加。主な職務は傷ついた人への外科治療や救命活動です。その中で市民、兵士、多くの仲間たちに出会います。本書は日々の生活を紹介し、出会った彼らの声を届けることで、どんな紛争地でも人々が暮らしを営み、一生懸命に生きる強さや人間愛があることを伝えています。平和を願い、戦争を憎み、家族を愛する人たち。彼らは私たちと変わらない人々ということ。紛争地医療の現実を知る著者だからこそ強い思いがあるのです。
(T.M)