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おすすめの本
 

No.717  令和4年1月

『自分がおじいさんになるということ』『海坂藩に吹く風』藤沢周平を読む
勢古 浩爾/著 草思社
 
 74歳の著者は自由気ままな日常生活を満喫しています。無理に趣味を作ったり、いろいろなことに興味を持ったりすることはしません。努力したり目標を立てたりもしません。生きがいや生きる意味など考えません。なぜなら、ただ生きているだけで楽しいと思えるからです。起きるのが面倒な時は一日布団の中でゴロゴロし、体調が良ければ自転車に乗ったり、散歩をします。若いころから読書好きでしたが、読み方も自由になり本当に読みたいものだけ読むようになりました。年を取ることはネガティブに捉えられがちですが、老後の暮らしを楽しみに思える一冊です。
                 (N.K)

 

湯川 豊/著 文藝春秋
 
 海坂藩は、作家藤沢周平が創り出した東北にある架空の小藩です。昭和48年直木賞受賞の初期の短編『暗殺の年輪』の中で、海坂藩が構想されています。そこは作家の出身地である山形県荘内地方の風土が反映されており、日本人にとって懐かしいと感じられる場所です。本書は、著者が『蝉しぐれ』や『橋ものがたり』『義民が駆ける』等、時代小説、市井小説、歴史小説等を読みふけった体験を作品にそって書いたものです。「海坂藩に吹く風」「剣が閃めくとき」「市井に生きる」等、全6章にわたり作品の内容や魅力を紹介。藤沢周平が亡くなって25年。残してくれた文章の数々は、日々の暮らしを送る私たちに向けて何かを喚起する力を持っています。藤沢周平年譜・作品リストも掲載。          (T.M)
 
『一期一会の人びと』『火星の歩き方』
五木 寛之/著 中央公論新社

 出会った瞬間から生まれる別れの時。いつ?どこで?どんな人物と?出会いの数だけ、記憶は姿を変えます。本書は、著者と19人のレジェンド達の出会いを綴った回想録になっています。短くも深い思い出の中で交わされるのは、一人ひとりのこだわりであり、価値観。多くの積み重ねを経て、書き上げられたレジェンド達の歴史。対面しているからこそ理解できる相手の心情や、エピソードの解釈。一瞬の出会いだからこそ、色褪せることのない一期一会の数々。めぐり逢いへの感謝がこの一冊にあふれています。
                 (W.H)



臼井 寛裕、野口 里奈、庄司 大悟/著 光文社

 19世紀後半、火星に地球外生命の存在が推測され、興味がもたれるようになりました。1960年代から火星の探査が計画・実施され、1970年代には探査機の火星着陸に成功。今日まで続く火星研究に多くの功績を残しています。さらに有人での探査計画も進められています。いつしか人類は火星を旅行先として見るようになるかもしれない。そんな思いから火星の旅のガイドブックとして本書ができました。火星の基本情報から、アマゾニス平原・オリンポス山といった火星の見どころスポットを紹介しています。同時に宇宙という聖域に入り込むことで起こる環境破壊についても問うています。           (Y.O)

『ミーツ・ザ・ワールド』『あずかりやさん[5]』
金原 ひとみ/著  集英社

 合コン帰りの道端、酒に酔い潰れた由嘉里はキャバ嬢のライに助けられ、ライのマンションに転がり込むことになります。ライは「私死ぬの。私はこの世界から消えると決まっている」と訳の分からないことを言い、死にたがっているようです。そんなライに対して由嘉里は生きて欲しいと望みます。そこで「ライさんの死にたみ半減プロジェクト」を立ち上げ、生きるための力になろうと考えた由嘉里でしたが、果たしてライの気持ちを動かすことができるのでしょうか。価値観が違う二人のやり取りは楽しんで読むこともでき、このような考えもあるんだと新しい発見がある小説です。            (M.O)


 

大山 淳子/著 ポプラ社

 手の甲に金魚の刺青を彫った男が盗みに入った店の名前は『あずかりや』。その店主は子供の頃に事故で視力を失った青年で、一日百円でなんでも預かります。男は持っているナイフで店主を脅しますが、店主のまっすぐな気持ちと問いかけに、少しずつ気持ちに変化が表れます。男は何を預けていくのでしょうか。次に来たお客はパンを預けていきます。なぜパンを預けることになったのでしょう。また次に来た客はペットを…。4話それぞれの中で、店主が客との会話でみせる展開が、なんとも素敵で温かい気持ちにしてくれます。             (Y.K)